蓄電池を保管するためだけの一般取扱所には、危険物の規制に関する規則が専用の消火設備の特例を用意しています。
位置や構造の基準だけでなく、スプリンクラー設備の設置基準そのものにも独自の数値が定められている点は見落とされがちです。
キュービクル化と鋼製の棚等への収納という二つの収納方式で、求められる基準が変わります。
この記事では蓄電池専用の一般取扱所に適用される消火設備の特例を条文から整理します。
うちは蓄電池だけを保管する施設なんですが、消火設備は普通の施設と同じでいいんでしょうか。
実は危険物の規制に関する規則が定める蓄電池設備専用の一般取扱所には、消火設備にも独自の特例が用意されています。
条文から順番に見ていきましょう。
特例が使えるなら、普通の消火設備をまるごと揃えなくてもいいということですか。
条件を満たせばそのとおりです。
まず、この施設がどんな要件を満たすと定義されているのかから確認します。
- 蓄電池設備以外では危険物を取り扱わない一般取扱所(危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第九号)には、通常と異なる消火設備の特例が用意されています
- 特例を使うには、蓄電池設備をキュービクル式にするか鋼製の棚等に収納し、かつ専用施設である旨を表示する必要があります
- スプリンクラーヘッドの高さ・放射能力範囲・水源の量・放水密度は、規則第三十五条の四が定める数値基準で決まります
- 周囲の壁・柱が準耐火構造であれば、放射能力範囲を狭められる読み替えがあります
- 第四種・第五種の消火設備は免除されず、規則第三十二条の十・第三十二条の十一の基準どおりに設ける必要があります
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目次
蓄電池だけを扱う一般取扱所とはどんな施設なのか

条文上の位置づけは、蓄電池の中身以外の危険物を一切扱わない施設です。
危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第九号は、この一般取扱所を「リチウムイオン蓄電池により貯蔵される第二類又は第四類の危険物を用いた蓄電池設備以外では危険物を取り扱わない一般取扱所」と定義しています。
つまり扱う危険物は蓄電池そのものではなく、蓄電池の中の電解液など危険物に該当する中身を指します。
この施設は蓄電池を製造・充電・放電する作業は行わず、蓄電池設備を置いておくだけの施設という点で、それらの作業を行う一般取扱所(規則第三十五条の三)とは条文上の区分が異なります。
区分が違うぶん、位置・構造・設備の基準だけでなく、消火設備の基準にも専用の特例が用意されています。
うちの蓄電池ヤードも、この定義に当てはまるかもしれません。
設備が蓄電池専用かどうかがポイントです。
該当するなら、次は特例を使うための要件を確認しましょう。
消火設備の特例を使うにはまず何を満たす必要があるのか

まず収納方式と表示という二つの入口の条件があります。
蓄電池設備をキュービクル式にするか鋼製の棚等に収納するかのどちらかを選び、しかもその蓄電池設備自体が告示の基準に適合していなければなりません。
さらに規則第三十五条の四第三項第一号は、施設が単独の建築物であればその施設の見やすい場所に、建築物の一部にあるならその建築物の見やすい場所に、専用施設である旨の表示を義務付けています。
収納と表示のどちらか一方が欠けても、この特例は使えません。
次に、その先で求められる消火設備そのものの基準を見ていきます。
収納方式を選ぶだけでなく、表示も必要なんですね。
収納と表示はセットで必要な要件です。
次はスプリンクラー設備そのものの基準を見ていきます。
スプリンクラー設備は何を満たさなければならないのか

高さ・範囲・水量・密度の四つの数値で構成されています。
スプリンクラーヘッドは天井の高さ九メートル以下に設け、蓄電池設備そのものだけでなく周囲六メートルまでを放射能力範囲に含めます。
水源の量は、その範囲の床面積(上限二百三十平方メートル)に放水密度十二ミリメートル毎分以上で六十分間放水できる量以上を確保します。
さらにスプリンクラー設備自体を六十分間以上動かし続けられる予備動力源も必要です。
これらはすべて規則第三十五条の四第三項第二号イに列挙された数値で、どれか一つでも欠けると特例の要件を満たしません。
高さや範囲まで数値で決まっているとは知りませんでした。
四つの数値がそれぞれ独立した要件です。
次は見落としやすい注意点を確認しましょう。
見落としやすいのはどこにあるのか

順番に確認します。
周囲の壁や柱が開口部のない準耐火構造(出入口は自動閉鎖の特定防火設備に限り可)であれば、放射能力範囲はその壁・柱までで足り、必ずしも六メートル四方を確保しなくてよいという読み替えです。
一方で、この特例が独自の数値を定めているのはスプリンクラー設備の部分だけです。
第四種・第五種の消火設備には、規則第三十二条の十・第三十二条の十一という一般則の基準がそのまま適用され、免除されるわけではありません。
設計段階でこの線引きを取り違えると、必要な消火設備を一つ設置し忘れることになります。
準耐火構造の壁があれば、そこまで厳しくないんですね。
範囲は狭められても、第四種・第五種の消火設備は免除されません。
最後に、明日から確認する手順を整理します。
明日から何を確認すればよいのか

一つずつ図面と現地で突き合わせてください。
まず、施設が規則第二十八条の五十四第九号の蓄電池専用の一般取扱所に該当するかを確認します。
次に、蓄電池設備がキュービクル式か鋼製の棚等のどちらかに収納され、施設または建築物の見やすい場所に表示があるかを確認します。
続けて、スプリンクラーヘッドの高さ・放射能力範囲・水源の量・放水密度が数値基準を満たしているかを確認します。
最後に、第四種・第五種の消火設備が規則第三十二条の十・第三十二条の十一の基準どおりに設けられているかを確認してください。
何から手を付ければいいか、整理できました。
収納方式・表示・スプリンクラーの数値・他の消火設備の四点を順に確認してください。
よくある質問
まとめ
これで蓄電池設備専用施設の消火設備、しっかり確認できます!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第十九条第二項第九号
- 危険物の規制に関する政令第二十条第三項第三号
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第九号
- 危険物の規制に関する規則第三十五条の四
- 危険物の規制に関する規則第三十二条の十・第三十二条の十一
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





