天井がとても高い劇場やホールの客席を見上げても、スプリンクラーヘッドが見当たらないことがあります。
見落としや故障ではなく、実は消防法施行規則が正式に認めている取り扱いです。
どんな部分がこの取り扱いの対象になり、何が対象に含まれないのかを、条文から順に確認していきます。
固定式いす席とスプリンクラー免除の関係を、条文に沿って正しく理解しましょう
うちの劇場、客席の天井がすごく高くて、スプリンクラーヘッドが見当たらない場所があるんです。
これって設置し忘れているんでしょうか。
天井が高い客席の一部には、消防法施行規則が設置を要しない場所として認めているケースがあります。
まずは対象になる部分の条件を確認しましょう。
どんな条件を満たせば、その扱いになるんでしょうか。
対象になる建物の用途と部分、それに天井の高さの両方が条件になります。
順番に見ていきましょう。
- 令別表第一(1)項の劇場等、及び(16)項イ・(16の3)項のうち(1)項の用途に供される部分が対象です
- 対象になるのは固定式のいす席を設ける部分に限られます
- スプリンクラーヘッドの取付け面の高さが8メートル以上であることが要件です
- 根拠は消防法施行規則第13条第3項第9号です
- 舞台部の設置基準(床面積による判定)とは別の規定なので混同しないよう注意が必要です
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目次
劇場の客席にスプリンクラーが要らない場所があるとはどういうことか

その一方で、客席側の一部にはあえて設置を要しないと定められた場所があります。
根拠になるのは消防法施行規則第13条第3項第9号です。
この号は、令別表第一(1)項の劇場等、及び(16)項イ・(16の3)項の防火対象物のうち(1)項の用途に供される部分を対象にしています。
対象になるのは客席のうち固定式のいす席を設ける部分で、天井(スプリンクラーヘッドの取付け面)の高さが8メートル以上である場所に限られます。
つまり、天井が高い客席であれば自動的に免除されるわけではなく、固定席であることも同時に満たす必要があります。
うちのホール、客席の天井がすごく高いんですが、これだけで免除の対象になるんでしょうか。
天井の高さだけでは決まりません。
その部分に固定式のいす席があるかどうかも合わせて確認します。
固定式のいす席とはどんな席を指すのか

どのような席がこれに当たるのかを確認します。
劇場や映画館、公会堂などでよく見る、床にボルトなどで留められた背もたれ付きの座席がこれに当たります。
一方、会議室や多目的ホールに一時的に並べる可動式の椅子は、固定されていないため対象に含まれません。
同じ建物の中でも、固定席の並ぶ客席部分と、椅子を自由に配置できる部分とでは扱いが分かれることになります。
どちらに当たるかは、椅子の設置方法を現地で確認して判断します。
うちのホールには固定席の客席と、椅子を並べ替えられる多目的室の両方があります。
両方とも同じ扱いになるんでしょうか。
いいえ、扱いが分かれます。
固定式のいす席がある部分だけがこの号の対象になります。
取付け面の高さ8メートル以上とは具体的に何を指すのか

規則の中でどう定義されているかを確認します。
規則の定義では、天井がある場合はその室内に面する部分、天井がない吹き抜けのような造りの場合は上階の床または屋根の下面が取付け面になります。
この取付け面までの高さが8メートル以上であることが、免除の要件になります。
劇場の客席は舞台側から後方に向けて天井が高くなる造りが多く、この高さの条件を満たしやすい構造です。
図面に記載された天井高だけでなく、実際の取付け面の位置を確認することが大切です。
図面には天井高としか書かれていないんですが、これで判断してよいでしょうか。
図面の天井高が取付け面の高さと一致しているかを確認しましょう。
吹き抜けなどでは屋根の下面までの高さで判断します。
実務で見落としやすいのはどこか

混同しやすい点を整理します。
- 舞台部の基準は床面積で判断し、客席側の取付け面高さとは別の話です
- 複合用途建物((16)項イ・(16の3)項)では(1)項の用途に供される部分だけが対象です
舞台部にスプリンクラー設備を設けるかどうかは消防法施行令第12条第1項第2号が定める床面積の基準で判断され、客席側の取付け面高さとは関係ありません。
また、この免除はそもそも客席部分に設置義務が生じている建物であることが前提です。
延べ面積が小さく、11階建て以上や複合用途の面積基準にも該当しない単独の小規模な劇場では、客席側に設置義務自体が生じないこともあります。
免除の話をする前に、まず自分の建物にスプリンクラー設置義務があるかどうかを確認しておく必要があります。
うちの劇場は小さくて、延べ面積もそこまで大きくありません。
それでもこの免除の話は関係あるんでしょうか。
まずは客席部分にスプリンクラー設置義務があるかどうかを確認しましょう。
義務が無ければ、免除を持ち出す場面自体がありません。
点検や設計の際になにを確認すればよいのか

図面と現地の両方を見ることが大切です。
まず建物の図面で、客席のうち固定式のいす席を設ける範囲と、可動席や通路との境界を確認します。
次に天井伏図や断面図で、その範囲の取付け面の高さが8メートル以上かどうかを確かめます。
判断に迷う部分があれば、所轄消防署に図面を持参して確認してください。
免除の範囲を正しく把握しておくことが、劇場全体の安全確保にもつながります。
まずは図面で固定席の範囲と天井の高さをはっきりさせてみます。
それが確実な進め方です。
分からない点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
これで客席の免除の条件がすっきりしました!
固定席の範囲や天井高さの確認でお悩みでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令別表第一(1)項
- 消防法施行令第12条第1項第2号
- 消防法施行令第12条第2項第1号
- 消防法施行規則第13条第3項第9号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





