消防法や高圧ガス保安法の許可を受けて圧縮ガスを取り扱っていても、それだけで建築基準法の審査を通過したことにはなりません。
建築基準法は、準工業地域で圧縮ガスを製造する工場そのものの建築を、原則として禁止しています。
例外として認められるのは、自動車の燃料として使う圧縮天然ガスや圧縮水素の製造設備など、施行令が個別に列挙したものだけです。
この例外に当たらない圧縮ガスの製造工場は、準工業地域であっても建てることができません
うちは準工業地域なので、ガスの設備を置くくらいなら問題ないですよね。
実は圧縮ガスの製造そのものは、準工業地域でも原則禁止なんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
自動車用のガスを詰める設備でも、製造にあたるんですか。
はい、建築基準法と消防法は目的が別の法律です。
順番に見ていきましょう。
- 圧縮ガス又は液化ガスの製造を行う工場は、建築基準法別表第二(る)項第一号(十二)により準工業地域でも原則建てることができません。
- 例外として認められるのは、建築基準法施行令第百三十条の九の七が定める自動車用の圧縮天然ガスや圧縮水素の製造設備に限られます。
- 圧縮天然ガスの製造には条件が無い一方、圧縮水素の製造には国土交通大臣が定める基準に適合する設備であることが必要です。
- 天然ガスと水素で条件が異なる点を見落とすと、水素の設備だけ用途地域の審査を通らないおそれがあります。
- 判断に迷うときは特定行政庁の窓口に早めに相談する必要があります。
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目次
なぜ準工業地域でも圧縮ガスの製造は原則禁止なのか

準工業地域は工業系の中でも比較的自由に建物を建てられる地域ですが、無制限というわけではありません。
建築基準法は、この地域でも特定の事業を営む工場の建築そのものを禁止しています。
準工業地域は、環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を図るための地域という位置づけです。
そのため火薬類の製造や消防法上の危険物の製造などとならび、圧縮ガス又は液化ガスの製造も原則として建築が禁止される事業の一つに数えられています。
禁止の対象は「工場」そのものの建築であって、既に製造された圧縮ガスを保管するだけの設備ではありません。
条文の「製氷又は冷凍を目的とするものを除く」という一文のほかに、別の条文で定められた例外もあります。
まずはこの原則禁止という前提を押さえておきましょう。
消防法の許可さえ取れば、ガスの設備も建てられると思っていました。
建築基準法は別の基準で用途地域ごとに建物の種類を制限しています。
次はどこまでが禁止の対象か見てみましょう。
禁止される圧縮ガスの製造とはどんな事業を指すのか

「圧縮ガス又は液化ガスの製造」とひとことで言っても、条文の禁止規定は同じ項の中で他の危険な事業ともまとめて定められています。
まずは条文の並びから、禁止の範囲を確認しましょう。
圧縮ガス又は液化ガスの製造は、石炭ガス類やコークスの製造、可燃性ガスの製造と同じ並びで禁止されている事業です。
条文上はこれらの事業と隣り合っており、いずれも準工業地域の環境を害するおそれが高い事業として扱われています。
禁止の対象になるのは製造そのものを営む工場で、既に製造された圧縮ガスを消費・貯蔵するだけの設備は別の号や消防法など別の規制で扱われます。
号ごとに「政令で定めるものを除く」という除外規定が置かれており、この号にも同じ形の除外があります。
次はこの除外=例外の中身を具体的に見ていきましょう。
石炭ガスやコークスの製造と同じ扱いだったなんて、知りませんでした。
はい、環境への影響が大きい事業として一括りにされています。
次は認められる例外を見てみましょう。
自動車用の圧縮天然ガスや水素の製造ならなぜ建てられるのか

圧縮ガス又は液化ガスの製造は原則禁止ですが、条文には政令で定める例外があります。
その中身を建築基準法施行令で確認しましょう。
例外として建築が認められるのは、自動車の燃料として使う圧縮天然ガスと圧縮水素の製造設備です。
条文はこの二つを同じ号の中のイとロに分けて定めており、扱いが完全に同じというわけではありません。
自家用の給湯や工業用の圧縮ガス製造は対象に含まれず、あくまで自動車の燃料としての用途に限られています。
逆に言えば、この二つのどちらにも当たらない圧縮ガスの製造は、たとえ小規模であっても準工業地域では建てられません。
次はイとロで扱いがどう違うのか、見落としやすい点を見ていきましょう。
自動車用のガスを詰める設備だから特別扱いというわけですね。
圧縮天然ガスと圧縮水素の製造設備の二つだけが例外です。
次は見落としやすい違いを見てみましょう。
天然ガスと水素で扱いが変わるのはなぜか

同じ号の中でも、天然ガスと水素とでは条文が求める条件が異なります。
実務で見落としやすいのはこの違いです。
圧縮天然ガスの製造にはイに条件が付いておらず、圧縮水素の製造だけがロで設備の基準適合を求められています。
つまり圧縮水素の製造設備は、国土交通大臣が定める基準に適合していなければ、この例外そのものに当たりません。
天然ガスの設備で認められた実績があっても、水素の設備をそのまま横並びで建てられるとは限らないということです。
条文にその理由までは明記されていませんが、天然ガスと水素とで取扱い上の危険性の評価が異なることと関係すると考えられます。
基準適合の確認を怠ると、用途地域の審査そのものを通らないおそれがあります。
天然ガスの設備と同じ感覚で水素の設備を置いていました。
圧縮水素の製造設備には個別の基準適合が必要です。
次は明日からの確認手順を見てみましょう。
明日から何を確認すればよいのか

準工業地域での圧縮ガスの製造は、事前に区分と設備の基準を確認しておけば防げるトラブルです。
明日から確認しておきたい手順を整理します。
- 自分の建物がある用途地域が準工業地域に当たるかを確認する
- 行おうとしている事業が建築基準法別表第二(る)項第一号(十二)の圧縮ガスの製造に該当するかを確認する
- 自動車用の圧縮天然ガスか圧縮水素か、どちらの製造に当たるかを確認する
- 圧縮水素の製造の場合は、国土交通大臣が定める基準に適合する設備かどうかを確認する
- 判断に迷うときは特定行政庁の窓口に早めに相談する
天然ガスと水素、それぞれの条件を確認しておきます。
区分と設備の基準の両方が最初の確認です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
自分の設備がどちらの区分に当たるか、確認してみます!
用途地域の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法別表第二(る)項第一号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十条の九の七(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。設備の区分や基準への適合の判定は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または国土交通省の関係窓口にご確認ください。





