燃料電池自動車(FCV)に水素を供給する圧縮水素充填設備設置給油取扱所には、通常の給油取扱所にはない技術基準があります。
液化水素の貯槽を給油取扱所に併設できるようになったことを受け、消防庁は運用指針を刷新しました。
カギになるのは、各設備の周囲に設ける障壁と、設備どうしの離隔距離です。
通知が示したのは障壁の高さ次第で必要な離隔距離が変わるという設計上の分かれ道です。
うちの近くにもFCV向けの水素ステーションができるという話を聞きました。
普通の給油取扱所と何が違うのでしょうか。
圧縮水素を充塡する設備がある分、周囲に障壁を設けることや設備どうしの距離が細かく決められています。
液化水素のタンクがあると、また基準が変わるんですか。
はい。
対象・中身・落とし穴・手順の順に、通知の内容を見ていきましょう。
- 電気を動力源とする自動車等に水素を充塡するための設備を有する給油取扱所(圧縮水素充填設備設置給油取扱所)が対象になります
- 構成設備は改質装置・液化水素の貯槽・圧縮機・蓄圧器・ディスペンサーなどです
- 主要設備と給油空地等の間には鉄筋コンクリート製や鋼板製などの障壁を設置することが前提になります
- 液化水素の貯槽があるときは障壁の高さによって必要な離隔距離が変わります
- 基準を満たさないまま使用していると設置許可や完成検査で指摘を受けます
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目次
圧縮水素充填設備設置給油取扱所の基準はなぜ見直されたのか

そこへ液化水素の貯槽を給油取扱所に併設できるようにする改正が加わり、運用指針が全面的に書き直されています。
従来の圧縮水素充填設備設置給油取扱所は圧縮水素を燃料電池自動車へ直接充填する設備が中心でしたが、液化水素の貯槽を給油取扱所内に置けるようにする省令改正(平成27年総務省令第56号)が行われました。
これにより古い平成17年の62号通知は廃止され、新たに消防危第123号の指針へ全面的に置き換わっています。
液化水素は圧縮水素よりも取り扱う設備の種類が増えるため、障壁や離隔距離の考え方も従来より細かく規定し直されたという経緯です。
この指針は令和元年・令和3年にも改正されており、現在も更新が続いている分野です。
このステーション、前からあった設備とは別物なんですか。
いいえ。
もとからあった設備に液化水素の貯槽が加わって基準が拡張されたという位置づけです。
圧縮水素充填設備設置給油取扱所はどんな設備で構成されるのか

まずは通知が示す設備の範囲と、それぞれの役割を押さえておきましょう。
ガソリンなどの危険物や天然ガスを原料に水素をつくる改質装置、液化した水素を貯める液化水素の貯槽、それを気化する送ガス蒸発器、圧力を高める圧縮機、高圧のまま貯める蓄圧器、そして車両へ充填するディスペンサーまでが一体の設備群です。
どの設備が備わっているかによって適用される基準の条文が変わるため、自施設にある設備を正確に洗い出すことが最初の作業になります。
常用圧力が82メガパスカル以下であることも、圧縮水素スタンドとして扱われるための前提条件です。
うちは液化水素の貯槽は無くて、圧縮水素だけを充填しています。
その場合は貯槽まわりの規定は関係せず、圧縮機やディスペンサーの基準だけを確認すれば足ります。
設備の周りにはどんな障壁を設ければよいのか

通知は設備と給油空地等の間に設ける障壁の材質と寸法まで具体的に定めています。
鉄筋コンクリート製なら厚さ12cm以上、コンクリートブロック製なら15cm以上、鋼板製なら鋼板の厚みに応じた補強が必要で、いずれも高さは2m以上とされています。
これらはガス爆発の衝撃に耐えられる構造であることが前提で、堅固な基礎の上に構築することも求められます。
各設備には障壁とは別に、自動車等の衝突を防ぐための保護柵やポールなどの衝突防止措置も個別に必要になります。
障壁があれば、あとの距離は考えなくていいんですよね。
そうとは限りません。
液化水素の貯槽がある場合は、障壁の高さ次第で追加の距離が必要になります。
液化水素の貯槽があるとき見落としやすいのはどこか

液化水素の貯槽がある施設では、障壁の高さと貯槽の高さの関係が安全性を左右します。
障壁が液化水素の貯槽より高ければ、固定給油設備などとの間に追加の距離を取らなくても輻射熱を遮る措置として認められます。
反対に障壁の高さが貯槽の高さ以下だと、油種や吐出量に応じて障壁からの水平距離や固定給油設備からの水平距離を別途確保しなければなりません(例えばガソリン50リットル毎分以下なら障壁から2.1m以上、固定給油設備から3.9m以上)。
図面上は障壁を設置していても、貯槽の高さより低いまま運用している例が見落とされやすい落とし穴です。
新設・増設のときは、障壁と貯槽の高さを並べて比較する視点を忘れないようにしてください。
うちの障壁、貯槽より低い気がします。
測ったことがありませんでした。
まずは障壁と貯槽、それぞれの高さを実際に測って比べてみてください。
明日から圧縮水素充填設備設置給油取扱所のなにを確認すればよいのか

根拠になるのは、消防法上の許可手続きと予防規程の記載事項を定めた条文です。
新設・改修のときは高圧ガス保安法の許可を先に取得し、そのあとで消防法上の設置許可を受ける順番になっているかを確認してください。
すでに稼働している施設では、予防規程に圧縮水素等による災害時の対応が書き込まれているかをチェックします。
あわせて、この記事で見てきた構成設備の洗い出し・障壁の材質と高さ・液化水素の貯槽との離隔距離の3点を、図面と現地の両方で照らし合わせておくと安心です。
分からない点があれば、設置許可を出した所轄消防署か、施工を担当した専門業者に確認するのが確実です。
つまり、許可の順番と予防規程の記載、両方を見ればいいんですね。
そのとおりです。
あわせて障壁と貯槽の高さも忘れずに確認してください。
よくある質問
まとめ
障壁と距離、そして許可の順番を見ればいいと分かりました。
すっきりしました。
その視点を最初に整理しておけば、新設や改修の相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 圧縮水素充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について(平成27年6月5日 消防危第123号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令第17条第3項第5号
- 危険物の規制に関する規則第27条の5第1項・第6項第1号
- 危険物の規制に関する規則第60条の2第1項第11号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





