BLOG

電気施設の火災でなぜ消防隊は電路遮断の前に放水しないのか|蓄電池設備の爆発を受けた通知と関係者の備えを解説

電気施設の火災で消防隊がなぜ電路遮断の前に放水しないのかを解説する記事のアイキャッチ画像。夕暮れのフェンスの奥に立つ白いコンテナ型の蓄電池設備と灰色の盤が写る写真

令和6年3月、鹿児島県伊佐市のメガソーラー発電施設で、蓄電池設備のある建屋内の爆発により消防職員が負傷しました。
消防庁は翌月、電気施設の火災で消防隊が守るべき留意事項を、全国の消防機関に通知しました。
通知は、消防隊が来てもすぐには放水しないという点で、施設関係者の動きにも関わります。
この記事では、消防消第122号ほかが示す留意事項と、関係者の備えを整理します。

うちの建物にも受変電設備と太陽光がありますが、火災のときに消防隊はどう動くのでしょうか。

電気施設の火災では、消防隊にも感電の危険が大きいとされています。
まずは、通知が何を求めているのかを確認しましょう。

私たち関係者は、消防隊が着くまでに何をしておけばよいのでしょうか。

通知は、消防隊が関係者に電路遮断を依頼するとしています。
その中身を、順に見ていきます。

この記事の結論
  • 令和6年4月26日の通知(消防消第122号ほか)は、伊佐市のメガソーラー施設の蓄電池建屋での爆発事案を受け、電気施設火災の留意事項を示したものです。
  • 指揮者は、早期に施設関係者から構造や電圧、感電危険の有無を確認し、感電危険区域を設定します。
  • 消防隊は、電路遮断の前はむやみに進入せず、放水も原則として遮断後に、十分な安全距離をとった噴霧注水とされています。
  • リチウムイオン蓄電池の火災では、電解液や可燃性ガスが噴出して爆発する危険に留意するとされています。
  • 関係者は、蓄電池設備の点検・整備を徹底し、電解液量が指定数量以上のときは許可が必要な点にも注意します。

▼

電気施設の火災で、施設関係者への確認、電路の遮断、離れた位置からの噴霧注水の順に消防隊が活動する流れを示した図解

メガソーラーの蓄電池建屋の爆発はなぜ電気施設の火災への通知につながったのか

白い小さな建屋の開いた扉の横にオレンジ色の爆発の印があり、隣に太陽光パネルが並び、遠くに消防車が止まっているイラスト
この通知は、令和6年3月に鹿児島県伊佐市で起きた爆発事案を出発点にしています。
まず、通知が示している背景を原文で確認します。
(電気施設等における警防活動時等の留意事項について 令和6年4月26日消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)令和6年3月27日、鹿児島県伊佐市において、メガソーラー発電施設に併設された大容量のリチウムイオン蓄電池設備のある建屋内での爆発により消防活動中の消防職員4名が負傷する事案が発生しました。電気施設の火災は、感電危険や絶縁被覆等の燃焼による有毒ガスの発生など消火活動上の困難性・危険性が高く、安全管理上特段の注意を払う必要があります。
通知が出された背景は、消防活動中に消防職員4名が負傷した爆発事案です。
通知は、令和6年3月27日に伊佐市のメガソーラー発電施設で、蓄電池設備のある建屋内で爆発が起きたと書いています。
この事案で、消防活動中の消防職員が4名負傷しました。
通知は、電気施設の火災は感電危険や有毒ガスの発生があり、消火活動上の困難性・危険性が高いと述べています。
発出は令和6年4月26日で、消防庁の消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長の連名の消防消第122号ほかです。

爆発で、消防職員の方が負傷されたのですね。

通知は、電気施設の火災には感電危険や有毒ガスの発生があると述べています。
次は、通知が誰に何を求めているのかを確認しましょう。

この通知は誰に向けて何を求めているのか

灰色の受電盤と白いコンテナ型の蓄電池ユニットと太陽光パネルが同じ敷地に並ぶイラスト
通知の宛先は消防機関で、施設の所有者や管理者に直接向けたものではありません。
ただし、関係者の協力が前提の内容が多く含まれています。
(電気施設等における警防活動時等の留意事項について 令和6年4月26日消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)各消防本部において安全管理体制を再点検するなど、安全管理の徹底を図るとともに、各種訓練や安全管理に関する教育に万全を期すようにしてください。また、下記に示す蓄電池設備において火災予防上留意すべき事項についても、執務の参考にしていただき、施設関係者における適切な管理を徹底されるようお願いいたします。
消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条 消防庁長官は、必要に応じ、消防に関する事項について都道府県又は市町村に対して助言を与え、勧告し、又は指導を行うことができる。
通知の宛先は、都道府県の消防防災主管部長や消防長などの消防機関です。
通知は、各消防本部に、安全管理体制の再点検と、各種訓練や教育の徹底を求めています。
あわせて、蓄電池設備の火災予防上の留意事項を執務の参考にして、施設関係者における適切な管理を徹底するよう求めています。
通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたと、本文に書かれています。
経済産業省からも、蓄電池設備の設置者と電気主任技術者に向けた、別添の保安確保の通知が出ています。

この通知は、消防機関への通知なのですね。

施設側の協力を前提にした内容が多く、関係者にも直接関わります。
次は、蓄電池設備の火災で何が危険とされているのかを確認しましょう。

蓄電池設備の火災では何が危険とされているのか

消防車が離れた位置から箱形の設備へ細かい水をかけ、周囲を広くロープで囲むイラスト
通知は、リチウムイオン蓄電池の設備がある場合の危険を、消防隊向けに具体的に挙げています。
また、火災予防の面では、施設関係者に管理の徹底を求めています。
(電気施設等における警防活動時等の留意事項について 令和6年4月26日消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)(6)リチウムイオン蓄電池等を用いた設備が設けられている場合は、火災時に当該蓄電池から、引火性液体である電解液や可燃性ガスが噴出し、爆発する危険性があることに留意する。(7)リチウムイオン蓄電池等を用いた設備での火災では、爆発等の危険を想定し、急な燃焼拡大等に対応可能な離隔距離をとって活動するものとする。また、当該蓄電池は筐体に覆われている場合があるため、当該蓄電池が発火している場合は、筐体に対して放水による冷却を行う。
(電気施設等における警防活動時等の留意事項について 令和6年4月26日消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)2 蓄電池設備において火災予防上留意すべき事項(1)(略)(2)リチウムイオン蓄電池に用いられる電解液については、第四類第二石油類等の危険物が用いられている場合があることから、当該電解液量の総和が指定数量以上となるときは、消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項に基づく許可が必要となることに留意されたい。
消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項 製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、製造所、貯蔵所又は取扱所ごとに、次の各号に掲げる製造所、貯蔵所又は取扱所の区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けなければならない。
蓄電池設備の火災では、爆発の危険を想定して、離れて活動するとされています。
通知は、蓄電池から電解液や可燃性ガスが噴出して爆発する危険性があることに留意するよう、消防隊に求めています。
活動は、急な燃焼拡大に対応できる離隔距離をとって行い、発火している場合は筐体に放水して冷却するとされています。
火災予防の面では、電解液に第四類第二石油類等の危険物が用いられている場合があると示されています。
電解液量の総和が指定数量以上のときは、消防法第11条第1項に基づく許可が必要だと通知は述べています。

蓄電池は、火が出ると爆発するおそれもあるのですね。

だから消防隊は、爆発を想定して離隔距離をとって活動するとされています。
次は、消防隊が着いてもすぐに放水しない理由を確認しましょう。

電気施設に消防隊が着いてもすぐ放水しないのはなぜか

灰色のブレーカー箱に小さな鍵が付き、赤白の遮断棒の後ろで消防車が待機しているイラスト
電気施設の火災では、消防隊が着いてもすぐには放水しません。
通知は、その活動の順番を示しています。
(電気施設等における警防活動時等の留意事項について 令和6年4月26日消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)(1)指揮者は、早期に関係者から、施設の構造、設備の位置、供(需)給電圧及び感電危険の有無等を確認し、活動の安全を確保する感電危険区域を設定する。(2)指揮者は、感電防止のために、早期に施設関係者に電路遮断を依頼する。電路遮断前はむやみに進入しない。やむを得ず進入する場合は、万一に備え、電気事業者等に漏えい電流を検知させ、安全を確認してから進入する。(3)放水は原則として電路遮断後とし、対象物から十分な安全距離をとり、噴霧注水とする。建物に放水した水が漏電経路となり、感電するおそれがあるので注意する。
消防隊は、電路遮断の前にはむやみに進入せず、放水も原則として遮断後です。
指揮者は、まず早期に関係者から、施設の構造、設備の位置、供(需)給電圧、感電危険の有無などを聞き、感電危険区域を設定するとされています。
次に、感電を防ぐため、早期に施設関係者へ電路遮断を依頼するとされています。
放水は原則として遮断後で、十分な安全距離をとった噴霧注水です。建物にかけた水が漏電経路になり、感電するおそれがあるためです。
つまり、消防隊の活動の安全は、施設に詳しい関係者から早く情報を得られるかに左右されます。

消防隊が着けば、すぐ放水してくれると思っていました。

通知は、放水は原則として電路遮断後とし、遮断前はむやみに進入しないとしています。
最後に、明日から何を確認するかを整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

空欄のチェック欄がある白紙のクリップボードと折りたたんだ平面図が置かれ、横に蓄電池ユニットと消火器が並ぶイラスト
通知は消防機関向けですが、聞かれる内容は施設側が準備できます。
あわせて、経済産業省の通知が例示する蓄電池設備の点検項目も確認します。
(発電所等に施設される蓄電池設備の保安確保の徹底について 令和6年4月26日 経済産業省産業保安グループ電力安全課)設備点検においては、例えば、結露や錆、異音や異臭の有無、充電部の埃等の蓄積、漏電や短絡、過充電や過放電、異常な温度上昇、蓄電池の容量低下の発生、温度上昇等を感知する保護装置の動作等を確認することが考えられます。また、蓄電池設備メーカーからは、設備の設置、点検方法に加えて、部品の推奨交換時期が示されている場合があります。
確認したいのは、消防隊に聞かれる情報と、蓄電池設備の点検・整備の2点です。
1点目は、消防隊が早期に確認するとされた構造・設備の位置・電圧・感電危険の有無を、すぐ答えられるようにしておくことです。
併せて、電路遮断を依頼されたとき、誰がどこで操作するのかも決めておきたいところです。この備えは通知の順番から逆算した実務上のもので、通知そのものが求めているものではありません。
2点目は、蓄電池設備の点検と整備を、メーカーの推奨する部品の交換時期も参照しながら遺漏なく行っているかです。
電解液量が指定数量以上になる場合の許可の要否は、所轄消防署に確認するのが確実です。

私は何から確かめればよいのでしょうか。

まずは、電気設備の構造と電圧を答えられる人を決めておきましょう。
蓄電池の点検記録も、あわせて見ておきます。

よくある質問

Qこの通知は、施設の所有者や管理者に義務を課していますか?
A通知は、消防組織法第37条に基づく助言として、消防機関に向けて発出されたと書かれています。関係者に義務を課すとは書かれていません。
Q消防隊が電路遮断を依頼するのは誰ですか?
A通知は、指揮者が感電防止のために、早期に施設関係者へ電路遮断を依頼するとしています。
Qリチウムイオン蓄電池の電解液は危険物になりますか?
A通知は、電解液に第四類第二石油類等の危険物が用いられている場合があるとしています。電解液量の総和が指定数量以上になるときは、消防法第11条第1項に基づく許可が必要です。
Q放水は、いつどのように行うとされていますか?
A通知は、放水を原則として電路遮断後とし、対象物から十分な安全距離をとった噴霧注水とするとしています。

まとめ

✔消防消第122号ほかは、伊佐市のメガソーラー施設の爆発事案を受けて、電気施設火災の留意事項を示した通知
✔通知は消防機関向けの助言で、施設関係者の協力を前提にした内容が多い
✔指揮者は、早期に関係者から構造・電圧・感電危険の有無を確認し、感電危険区域を設定する
✔消防隊は、電路遮断の前はむやみに進入せず、放水も原則として遮断後に噴霧注水で行う
✔リチウムイオン蓄電池の火災では、電解液や可燃性ガスが噴出して爆発する危険性に留意する
✔電解液量の総和が指定数量以上のときは、消防法第11条第1項に基づく許可が必要
✔まずは、消防隊に答えられる人を決め、蓄電池設備の点検記録を確認する

答えられる人から決めます!

電気設備の情報の整理や蓄電池設備の点検体制づくりは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 電気施設等における警防活動時等の留意事項について(令和6年4月26日 消防消第122号・消防予第234号・消防危第119号 消防庁消防・救急課長、予防課長、危険物保安室長)
  • 発電所等に施設される蓄電池設備の保安確保の徹底について(令和6年4月26日 経済産業省産業保安グループ電力安全課)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
電気施設の火災で消防隊がなぜ電路遮断の前に放水しないのかを解説する記事のアイキャッチ画像。夕暮れのフェンスの奥に立つ白いコンテナ型の蓄電池設備と灰色の盤が写る写真
令和6年3月、鹿児島県伊佐市のメガソーラー発電施設で、蓄電池設備のある建屋内の爆発により消防職員が負傷しました。 消防庁は翌月、電気施設の火災で消防隊が守るべき留意事項を、全国の消防機関に通知しました。 通知は、消防隊が...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →