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既存不適格建築物の独立部分はなぜ増築後も基準に合わせなくてよいのか|建築基準法施行令第137条の14が定める区分を解説

独立部分は規定によって区切り方が変わることを示すアイキャッチ画像。増改築中の建物の写真

防火管理者として複数の棟や増改築を重ねた建物を管理していると、一部の棟だけを増築したときに建物全体が現行基準の対象になるのか気になる場面があります。
建築基準法は、既存不適格の建物が増築等をする際、建物を「独立部分」という単位に区切って規定の適用を考える仕組みを持っています。
ただしこの独立部分をどう区切るかは、対象となる規定によって参照する基準が異なります。
この記事では、建築基準法施行令第137条の14が定める独立部分の4つの区分方法を整理します。

うちの建物、一部の棟だけ増築する予定なんですが、増築しない棟まで今の基準に合わせないといけないんでしょうか。

そうとは限りません。
建物が2以上の独立部分に分かれていれば、増築する独立部分以外はそのままでよい場合があります。

独立部分って、どうやって決まるんですか。

対象になる規定によって区切り方が変わります。
今日はその4パターンを整理しましょう。

この記事の結論
  • 既存不適格建築物が2以上の独立部分に分かれていれば、増築等をする独立部分以外には、既存不適格として適用除外を受けていた規定を及ぼしません(建築基準法第86条の7第2項)。
  • 対象となるのは第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第35条(階段等)・第36条(防火壁等)・第61条の規定です。
  • 独立部分の区切り方は施行令第137条の14が第一号から第四号までの4パターンに分けています。
  • 第20条は施行令第36条の4(エキスパンションジョイント等)、第21条・第23条・第26条・第27条・第36条・第61条は施行令第109条の8(火熱遮断壁等)で区切ります。
  • 同じ区画でも、対象となる規定が変われば、そのまま独立部分と認められるとは限りません。

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独立部分の区分方法が規定ごとに4パターンに分かれ、要件を満たせば増築する独立部分以外は規定の適用除外を維持できることを示す図解

既存不適格建築物の一部を増築すると、なぜ他の独立部分は基準に合わせなくてよいのか

古い建物が二つの棟に分かれ、片方の棟だけに工事用の足場が組まれているイラスト
建築基準法第3条第2項は、既に建っている建物に新しい基準を遡って適用しない仕組みです。
ただし同条第3項は、増築や改築の工事に着手すると、この既存不適格の扱いが打ち切られると定めています。
建築基準法第八十六条の七第二項(抜粋) 第三条第二項の規定により第二十条、第二十一条、第二十三条、第二十六条、第二十七条、第三十五条(略)、第三十六条(略)又は第六十一条の規定の適用を受けない建築物であつて、これらの規定に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分(以下この項において「独立部分」という。)が二以上あるものについて増築等をする場合においては、第三条第三項の規定にかかわらず、当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、これらの規定は、適用しない。
既存不適格の建物でも、独立部分が2以上あれば増築等の影響を1つの独立部分の中だけにとどめられます。
第86条の7第1項(施行令第137条の2等)は増築部分の床面積の割合で建物全体の緩和範囲を決める仕組みでしたが、第2項はそれとは別に、建物を独立部分という単位で切り分けて考える仕組みです。
独立部分が2以上に区分されていれば、増築等をする独立部分以外の独立部分は、既存不適格として適用除外を受けていた規定の適用をそのまま受けずに済みます。
逆に建物全体が1つの独立部分としてしか扱えない構造であれば、この緩和は使えません。

増築する棟だけ現行基準に合わせればよくて、隣の棟はそのままでいいということですね。
独立部分の対象になる規定は、どれも同じなんでしょうか。

いいえ、対象になる規定は決まっています。
次の章で確認しましょう。

どの基準について独立部分の考え方が使えるのか

梁・壁・階段・盾の図形と法令の本の山が並び、隣に二棟の建物が置かれているイラスト
第86条の7第2項が対象とする規定は、条文の中に列挙されています。
列挙されていない規定については、この独立部分の考え方は使えません。
建築基準法第八十六条の七第二項(抜粋、対象規定) 第二十条、第二十一条、第二十三条、第二十六条、第二十七条、第三十五条(階段等に関する技術的基準に係る部分に限る。)、第三十六条(防火壁等に関する技術的基準(政令で定める防火区画に係る部分を除く。)に係る部分に限る。)又は第六十一条
対象となるのは、構造耐力や防火に関わる8つの規定です。
第20条(構造耐力)・第21条(大規模の建築物の主要構造部等)・第23条(外壁の準防火性能)・第26条(防火壁)・第27条(特殊建築物の耐火建築物等)・第35条のうち階段等に関する技術的基準・第36条のうち防火壁等に関する技術的基準・第61条(防火地域)が対象です。
容積率や用途地域に関する規定はこの列挙に含まれておらず、独立部分の緩和は使えません。
どの規定について独立部分の判定をしたいのかを、まず明確にする必要があります。

8つも規定があるんですね。
独立部分の区切り方は、この8つとも同じ方法なんでしょうか。

いいえ、規定によって区切り方が変わります。
次の章で整理します。

独立部分の区切り方は規定ごとにどう違うのか

継ぎ目のあるすき間・厚い壁・床スラブ・扉の四つの区画パーツが並んでいるイラスト
施行令第137条の14は、対象規定ごとに独立部分の区切り方を四号に分けています。
どの号を見るかは、確認したい規定によって決まります。
建築基準法施行令第百三十七条の十四(抜粋) 法第八十六条の七第二項の政令で定める部分は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該各号に定める部分とする。一 法第二十条第一項に規定する基準の適用上(略)第三十六条の四に規定する建築物の部分 二 法第二十一条第一項若しくは第二項、法第二十三条、法第二十六条第一項、法第二十七条第一項から第三項まで、法第三十六条(略)又は法第六十一条第一項に規定する基準の適用上(略)第百九条の八に規定する建築物の部分 三 法第三十五条(略)に規定する基準の適用上(略)第百十七条第二項各号に掲げる建築物の部分 四 法第三十五条(略)に規定する基準の適用上(略)第百二十六条の二第二項各号に掲げる建築物の部分
四号のうち、参照する条文は規定ごとにはっきり分かれています。
第一号は第20条が対象で、施行令第36条の4が定める、エキスパンションジョイント等で相互に応力を伝えない構造で区切ります。
第二号は第21条・第23条・第26条・第27条・第36条・第61条が対象で、施行令第109条の8が定める火熱遮断壁等(通常の火災の熱で損傷・延焼を生じない性能を持つ壁等)で区切ります。
第三号は第35条のうち階段等に関する技術的基準が対象で、施行令第117条第2項が定める、開口部のない耐火構造の床・壁等で区切ります。
第四号は第35条のうち排煙設備等に関する技術的基準が対象で、施行令第126条の2第2項が定める、開口部のない準耐火構造の床・壁又は防火設備で区切ります。

エキスパンションジョイントで区切ってあれば、防火壁の規定でも独立部分として使えるということですか。

いいえ、規定が変わればそのままでは使えません。
次の章で見落としやすい点を説明します。

実務で見落としやすいのはどこか

同じ建物の継ぎ目の上に青いチェックマーク、下に赤い禁止マークが並んで示されているイラスト
四号がそれぞれ別の条文を参照している点は、実務で取り違えやすいポイントです。
一つの区切り方が、すべての規定に共通して使えるわけではありません。
建築基準法施行令第三十六条の四 法第二十条第二項(略)の政令で定める部分は、建築物の二以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合における当該建築物の部分とする。
エキスパンションジョイントで区切った部分は、あくまで第20条(構造耐力)の独立部分としてしか認められません。
同じ建物で第21条・第26条等の防火関係規定について独立部分の扱いを受けたい場合は、別途施行令第109条の8が定める火熱遮断壁等の性能(火熱による損傷を生じない、延焼を防止できる等)を満たす区画が必要です。
構造的に切り離されていることと、防火上区画されていることは別の要件であり、片方を満たしても他方を自動的に満たすわけではありません。
避難施設に関する第35条の独立部分は、さらに別の第117条第2項または第126条の2第2項の基準で判断するため、規定ごとの個別確認が欠かせません。

一つの区切り方で全部まかなえるわけじゃないんですね。
増築を計画するときは、何から確認すればいいですか。

最後に確認の手順をまとめます。

増築等を計画するときはなにを確認すればよいか

広げた設計図の上にチェックリストと虫眼鏡が置かれているイラスト
独立部分の緩和を使う際は、次の点を順番に確認してください。
判断に迷う部分は、早めに特定行政庁や専門家へ相談するのが安全です。
  • 自分の建物が現在どの規定(第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第35条・第36条・第61条)について既存不適格に当たるかを洗い出す
  • 増築等をする部分としない部分が、確認したい規定ごとの独立部分の要件(施行令第36条の4・第109条の8・第117条第2項・第126条の2第2項のいずれか)を満たしているかを個別に確認する
  • ある規定で独立部分として扱われている区画が、別の規定でもそのまま使えると思い込まない
  • 独立部分の要件を満たさない規定があれば、増築等によって建物全体がその規定の適用を受ける可能性を踏まえて計画する
  • 増築等の着工前に特定行政庁または建築主事へ独立部分の判定について相談する
独立部分の判定を規定ごとに行っておくことが、計画段階でのトラブルを防ぐ最大のポイントです。
着工後に独立部分と認められないと分かると、計画の手戻りが発生します。

規定ごとに独立部分の要件を確認しておけば、増築計画も進めやすそうです。
次はよくある質問も見てみます。

はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。

よくある質問

Q独立部分が2以上あれば、増築する部分以外は何もしなくてよいのですか?
A対象規定(第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第35条の一部・第36条の一部・第61条)について、既存不適格として適用除外を受けていた扱いを維持できるという意味です。その他の規定まで免除されるわけではありません。
Q独立部分の区切り方はどこで決まりますか?
A建築基準法施行令第137条の14が第一号から第四号までで、対象規定ごとに参照する条文(第36条の4・第109条の8・第117条第2項・第126条の2第2項)を定めています。
Qエキスパンションジョイントで区切れば、防火壁の規定でも独立部分として扱えますか?
Aいいえ。エキスパンションジョイント等は第20条(構造耐力)専用の区切り方です。防火壁等に関する規定(第21条・第26条等)では、別途第109条の8が定める火熱遮断壁等の性能を満たす必要があります。
Q避難施設に関する独立部分も同じ基準で判断しますか?
Aいいえ。第35条のうち階段等に関する技術的基準は第117条第2項、排煙設備等に関する技術的基準は第126条の2第2項と、それぞれ別の条文で独立部分を判定します。

まとめ

✔既存不適格建築物が2以上の独立部分に分かれていれば、増築等をする独立部分以外は既存不適格の扱いを維持できます(法第86条の7第2項)。
✔対象となるのは第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第35条(階段等)・第36条(防火壁等)・第61条の8規定です。
✔独立部分の区切り方は施行令第137条の14が四号に分けています。
✔第20条はエキスパンションジョイント等(施行令第36条の4)で区切ります。
✔第21条・第23条・第26条・第27条・第36条・第61条は火熱遮断壁等(施行令第109条の8)で区切ります。
✔第35条は階段等が第117条第2項、排煙設備等が第126条の2第2項と、さらに別の基準で区切ります。
✔一つの区切り方がすべての規定に共通して使えるわけではなく、規定ごとの確認が欠かせません。

独立部分の緩和を使うときは、規定ごとの区切り方を確認しながら計画します!

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第20条・第21条・第23条・第26条・第27条・第35条・第36条・第61条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第36条の4・第109条の8・第117条・第126条の2・第137条の14

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における独立部分の該当性は、構造や区画の内容によって異なります。具体的な判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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