動力消防ポンプといえば、エンジン音を響かせる内燃機関式を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ところが令和7年7月、この動力消防ポンプの規格そのものに大きな変化がありました。
脱炭素化の流れを受けて、電動機(モーター)を原動力とするポンプが正式に規定されたのです。
今回の改正で何が変わり、導入や点検でなにに注意すればよいのかを解説します。
うちの施設でも動力消防ポンプを備えているんですが、最近はバッテリー式のものもあると聞きました。
電動機を原動力とする規定について、令和7年の改正が要件を示しています。
まずは背景から確認しましょう。
いま使っている内燃機関のポンプを、電動のものに買い替えないといけないんでしょうか。
買い替えの義務はありません。
順番に見ていきましょう。
- 令和7年7月30日、動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令に電動機を原動力とする規定が新設されました。
- 従来は内燃機関を原動力とするものしか規定がありませんでした。
- 可搬消防ポンプの電動機は規格放水性能で30分間以上の連続放水ができる蓄電池を備える必要があります。
- 蓄電池の点検方法は改正の時点でまだ示されておらず、今後の通知を待つ必要があります。
- 既存の内燃機関型のポンプはそのまま使い続けられ、入れ替えは義務付けられていません。
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目次
動力消防ポンプになぜ電動機の規定が新設されたのか

それが令和7年の改正で、大きく変わりました。
これまで動力消防ポンプの機関として認められていたのは内燃機関だけで、電動機を積んだポンプは正式な規定の対象外でした。
今回の改正で、電動機のみを原動力とするものと、内燃機関と電動機を併せて用いるものの両方が、規格省令上の動力消防ポンプとして位置づけられました。
ガソリンや軽油を使わない選択肢が、制度として明文化されたことになります。
次は、どんなポンプが対象になるのかを見ていきます。
電動機だけのポンプと、内燃機関と電動機の両方を積んだポンプ、どちらもあるんですね。
はい、両方とも認められています。
次は対象になる範囲を見ていきましょう。
どんな動力消防ポンプが対象になるのか

既存のポンプがどう扱われるかも、あわせて確認しておきましょう。
第二章の消防ポンプ自動車、第三章の可搬消防ポンプのいずれについても、電動機を原動力とする規定が新たに整備されました。
持ち運んで使う可搬消防ポンプでは、蓄電池を取り除いた状態の重さである「乾燥質量」に、電動機駆動用の蓄電池も除く対象として明記された点が実務上のポイントです。
なお、改正の施行時点ですでに型式承認や届出を受けているポンプは、経過措置により改正後の省令に適合するものとみなされます。
既存のポンプを持つ事業所が、この改正で急に基準違反になるわけではありません。
次は、電動機を使うポンプに具体的にどんな基準が求められるのかを見ていきます。
うちのポンプはもう何年も前に届出をしているんですが、それでも大丈夫でしょうか。
経過措置でみなされるので問題ありません。
次は電動機の技術基準を確認しましょう。
電動機を使うポンプにはどんな基準があるのか

放水を続けられる時間が、種類ごとに定められています。
持ち運んで使う可搬消防ポンプよりも、車載型の消防ポンプ自動車のほうが長い放水時間を求められます。
内燃機関と電動機を併用するタイプでは、燃料タンクと蓄電池の容量をあわせて、それぞれの必要放水時間を満たせばよいとされています。
また、新たに表示すべき項目(質量や蓄電池の使用温度範囲など)が第7条第1項に追加され、電動機駆動用の蓄電池を含めた総質量の表示が必要になりました。
これは蓄電池を除いた重さである「乾燥質量」とは別の数値なので、カタログを見るときは混同しないよう注意してください。
次は、実務で見落としやすい落とし穴を確認します。
可搬式と車載式で、必要な放水時間が違うんですね。
はい、30分間と1時間で分かれています。
次は見落としやすい注意点です。
実務で見落としやすい落とし穴はどこか

とりわけ点検の扱いには注意が必要です。
規格省令の改正で電動機を積んだポンプは正式に認められましたが、その蓄電池をどう点検するかという具体的な方法は、消防予第331号の時点で「追って定める予定」とされたままです。
非常電源として使われる蓄電池設備の点検方法をそのまま準用できるのかどうかも、この時点では明言されていません。
また、改正前から動力消防ポンプの機関として電動機を扱っていた古い通知(昭和38年自消丙予発第52号のうち電動機に関する部分)は、今回の改正にあわせて廃止されているため、古い資料をそのまま参照すると内容がずれてしまいます。
次は、明日から確認しておきたい手順を整理します。
点検方法が決まっていないなら、電動機のポンプはまだ導入しないほうがいいんでしょうか。
導入自体はできますが、点検の相談は必須です。
最後に確認手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

既存のポンプと新規導入のポンプで、確認事項が異なります。
すでに使っている内燃機関型の動力消防ポンプは、この改正によって入れ替えを求められることはなく、そのまま使用を続けられます。
新たに電動機型や併用型のポンプを検討する場合は、蓄電池の容量が規格放水性能で必要な連続放水時間(可搬式30分間・車載式1時間)を満たしているか、質量などの表示が省令どおりに付されているかをメーカーに確認します。
施行前に届出済みの機種を扱う場合は、経過措置の対象になっているかもあわせて確認しておくと安心です。
そして最も重要なのが、蓄電池の点検体制です。
点検方法がまだ消防庁から正式に示されていない現時点では、導入や更新を検討する前に所轄消防署へ相談し、点検の進め方を確認しておくことをおすすめします。
まずは表示と蓄電池の容量を確認して、点検については所轄消防に相談してみます。
その順番なら手戻りが出にくいです。
次はよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
電動機のポンプがどう扱われるか、よく分かりました!
まずは蓄電池の容量を確認します!
点検体制の相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令及び消防法施行規則の一部を改正する省令等について」(令和7年7月30日 消防予第202号 消防庁予防課)
- 「閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令及び消防法施行規則の一部を改正する省令等に係る運用について(通知)」(令和7年7月30日 消防予第331号 消防庁予防課長)
- 動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令(昭和61年自治省令第24号)第2条第1号・第3条第9号・第7条第1項・第9条第2項・第13条第2項・第21条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





