工場や倉庫の敷地を歩いていると赤い格納箱と並んで消防ポンプそのものが置いてあることがあります。
消火栓ではないのにどうして消防用設備等として認められるのか不思議に思う方も多いはずです。
これは消防法施行令第20条が基準を定める動力消防ポンプ設備で、消火栓と互いに入れ替えられる関係にあります。
ただし入れ替えが効く範囲は条文で1階と2階に区切られています。
うちの工場の外に赤い機械が置いてあるのですが消火栓ではないようです。
これも消防用設備等になるのでしょうか。
動力消防ポンプ設備といって消防法施行令第7条第2項が挙げる消火設備の一つです。
建物に据え付けない持ち出せる設備という点がほかと違います。
持ち出せるなら消火栓の代わりに置いてもよいということですか。
それなら配管の工事をしなくて済みそうです。
条文どおりに設ければ屋内消火栓設備や屋外消火栓設備を省ける場面があります。
ただし省ける階が決まっているので先に範囲を確かめましょう。
- 動力消防ポンプ設備は消防法施行令第7条第2項が挙げる消火設備の一つです
- 設置することになるのは屋内消火栓設備を要する防火対象物と屋外消火栓設備を要する建築物です
- 規格放水量は0.2立方メートル毎分以上と0.4立方メートル毎分以上の二段に分かれています
- 水源までの水平距離と20分間放水できる水量が条文で決められています
- 屋内消火栓設備を省けるのは1階と2階の部分に限られます
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目次
動力消防ポンプ設備とはどんな消火設備なのか

まずは消防法施行令がこの設備をどこに位置付けているかを見ます。
前項の消火設備は、水その他消火剤を使用して消火を行う機械器具又は設備であつて、次に掲げるものとする。
一 消火器及び次に掲げる簡易消火用具(略)
二 屋内消火栓設備
(略)
九 屋外消火栓設備
十 動力消防ポンプ設備
消防法施行令第41条
法第21条の16の2の政令で定める消防の用に供する機械器具等は、次に掲げるもの(略)とする。
一 動力消防ポンプ
屋内消火栓設備やスプリンクラー設備が配管と加圧送水装置を建物の中に組み込むのに対して、動力消防ポンプ設備はポンプ本体と水源とホースの組み合わせで成り立ちます。
ポンプは消防ポンプ自動車に積まれたものでも、自動車で牽引するものでも、人が運べる小型のものでもかまいません。
そのぶん建物側の配管工事は軽くなりますが、火災のときに人が運んで据えて動かすことが前提になる設備でもあります。
また動力消防ポンプは消火器のような検定の対象ではなく自主表示対象機械器具等にあたり、製造または輸入をする者が規格に適合していることを表示する仕組みが採られています。
消防隊が持ってくるポンプとは別のものなのですね。
建物の側で用意しておく設備という理解でよいですか。
そのとおりで、関係者が設置して維持する消防用設備等です。
まずは敷地のどこに置いてあるかを図面で押さえておきましょう。
どの建物に置くことになるのか

屋内消火栓設備と屋外消火栓設備の対象をそのまま引いてくる形になっています。
動力消防ポンプ設備は、次の各号に掲げる防火対象物又はその部分について設置するものとする。
一 第11条第1項各号(第四号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分
二 前条第1項の建築物
第1号が引く消防法施行令第11条第1項は屋内消火栓設備の設置対象で、(1)項の劇場等は延べ面積500平方メートル以上、(2)項から(10)項まで・(12)項・(14)項は700平方メートル以上、(11)項・(15)項は1,000平方メートル以上という区切りです。
第2号が引く同令第19条第1項は屋外消火栓設備の設置対象で、地階を除く階数が1のものは1階の、2以上のものは1階と2階の床面積の合計で見て、耐火建築物は9,000平方メートル以上、準耐火建築物は6,000平方メートル以上、その他の建築物は3,000平方メートル以上が対象です。
ここで見落としやすいのが第1号の第四号を除くという括弧書きで、令別表第一(16の2)項の地下街は動力消防ポンプ設備の対象から外されています。
内装を難燃材料にした場合の面積の読み替えや、同一敷地内の建築物を一の建築物とみなす規定は同条第2項で準用されるので、判定の考え方は消火栓のときと変わりません。
うちは倉庫なので屋外消火栓の話になりそうです。
床面積は建物全体で数えるのでしょうか。
屋外消火栓の側は1階と2階の床面積の合計で見ます。
階数が1なら1階だけで数えるので図面の面積表を確かめてください。
放水量と水源はどこまで求められるのか

能力が決まると水源を置ける距離と必要な水量が自動的に定まる作りです。
動力消防ポンプ設備は、法第21条の16の3第1項の技術上の規格として定められた放水量(次項において「規格放水量」という。)が第1項第1号に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものにあつては0.2立方メートル毎分以上、同項第2号に掲げる建築物に設置するものにあつては0.4立方メートル毎分以上であるものとする。
消防法施行令第20条第4項第3号
水源は、その水量が当該動力消防ポンプを使用した場合に規格放水量で20分間放水することができる量(その量が20立方メートル以上となることとなる場合にあつては、20立方メートル)以上の量となるように設けること。
規格放水量は屋内消火栓側の対象では0.2立方メートル毎分以上、屋外消火栓側の対象では0.4立方メートル毎分以上と分かれていて、法第21条の16の3第1項の技術上の規格として定められた数値を使います。
水源の置き場所は防火対象物の各部分から一の水源までの水平距離で決まり、0.5立方メートル毎分以上のものは100メートル以下、0.4立方メートル毎分以上0.5立方メートル毎分未満のものは40メートル以下、0.4立方メートル毎分未満のものは25メートル以下となるように設けます。
水量は規格放水量で20分間放水できる量が必要ですが、計算した量が20立方メートル以上になるときは20立方メートルで足りるという頭打ちの規定が置かれています。
消防用ホースの長さも同じ水平距離の範囲内にある各部分へ有効に放水できる長さにする必要があるので、ポンプの能力とホースの本数はセットで考えることになります。
つまり能力の大きいポンプほど水源を遠くに置けるということですね。
小さいポンプなら水源をすぐそばに用意しないといけないと。
そのとおりの関係になっています。
今ある水源と建物の距離を先に測ってから機種を考えると手戻りがありません。
消火栓の代わりに使えるのはどこまでか

省略の規定には階を限る括弧書きが入っています。
第1項各号に掲げる防火対象物又はその部分にスプリンクラー設備(略)、屋外消火栓設備又は動力消防ポンプ設備を(略)技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、同項の規定にかかわらず、当該設備の有効範囲内の部分(屋外消火栓設備及び動力消防ポンプ設備にあつては、一階及び二階の部分に限る。)について屋内消火栓設備を設置しないことができる。
消防法施行令第11条第4項は屋内消火栓設備を設置しないことができる場合を並べていますが、屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備については1階及び2階の部分に限るという括弧書きが付いています。
外から人が運んで据える設備である以上、上の階まで有効に放水できるとは限らないという考え方が背景にあります。
屋外消火栓設備を省く側の規定である同令第19条第4項には階の限定がなく、動力消防ポンプ設備を基準どおり設置すればその有効範囲内の部分について屋外消火栓設備を設けないことができます。
逆に同令第20条第5項は、屋外消火栓設備を設けたときや1階か2階に屋内消火栓設備等を設けたときに動力消防ポンプ設備を設けないでよいと定めていて、両者は互いに置き換えられる関係になっています。
三階建ての工場だと上の階は結局消火栓が要るのですね。
全部を置き換えられるわけではないということですか。
はい、上の階は屋内消火栓設備などで手当てすることになります。
階ごとにどの設備で満たしているかを一覧にしておくと検査で困りません。
明日からなにを確認すればよいのか

置き場所の決まりを知らずにしまい込んでしまう例が少なくありません。
動力消防ポンプは、消防ポンプ自動車又は自動車によつて牽引されるものにあつては水源からの歩行距離が1,000メートル以内の場所に、その他のものにあつては水源の直近の場所に常置すること。
常置場所は水源からの距離で決まり、消防ポンプ自動車に積むものや自動車で牽引するものは歩行距離1,000メートル以内、それ以外のものは水源の直近に置かなければなりません。
直線距離ではなく歩行距離なので、門扉や段差で回り道になる敷地では実際に歩いて確かめてください。
点検と報告はほかの消防用設備等と同じで、消防法第17条の3の3に基づいて定期に点検し、特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回の頻度で消防長又は消防署長に報告します。
日常の確認は消防計画の自主検査に組み込み、ポンプが始動すること・ホースと吸管がそろっていること・水源に水があることを担当者が見る形にしておくと維持しやすくなります。
置き場所まで決まっているとは思いませんでした。
倉庫の奥にしまっておくのはまずいですか。
水源から歩ける距離であることが条件なので回り道は禁物です。
雨風をしのげてすぐ持ち出せる場所を選んでください。
よくある質問
まとめ
消火栓とポンプの関係がやっと整理できました。
明日さっそく敷地の置き場所を見に行きます。
その一歩がいちばん効きます。
消火設備の設置や点検でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の3・第21条の16の2・第21条の16の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第2項・第11条・第19条・第20条・第41条・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





