加圧送水装置のポンプ方式には、電動機やポンプ本体そのものの構造・材質・性能にも消防庁長官が定める基準があります。
これまでは制御盤やバルブ類、フート弁などの付属装置を中心に解説してきましたが、ポンプ本体そのものにも細かい規定があります。
とくに特定施設水道連結型スプリンクラー設備では、電動機の代わりに内燃機関で直接ポンプを駆動することも認められています。
本記事ではポンプ本体の構造・材質・性能・内燃機関による駆動・表示の基準を、告示の条文から解説します。
ポンプ本体そのものにも基準があるとは知りませんでした。
はい、構造・材質・性能・表示まで細かく決まっています。
順番に見ていきましょう。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備は内燃機関でも駆動できると聞きました。
はい、電動機に代えて内燃機関で直接駆動できます。
起動時間や燃料タンクの基準もあわせて見ていきましょう。
- 加圧送水装置のポンプ方式の構造及び性能は、消防法施行規則第12条第1項第7号ニにより消防庁長官が定める基準による
- ポンプ本体の構造は、点検・給油・防食など取扱いと安全に配慮した構造であることが求められる
- ポンプの材質は部品ごとにJIS規格等が指定され、特定施設水道連結型スプリンクラー設備に用いるものは選べる材料の種類が広い
- ポンプの軸動力は定格吐出量で電動機定格出力を超えてはならず、効率も基準を満たす必要がある
- 特定施設水道連結型スプリンクラー設備は電動機に代えて内燃機関で直接ポンプを駆動でき、起動信号から40秒以内に定格吐出量へ達する構造とされる
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目次
ポンプ本体の構造にはなぜこれほど細かい基準があるのか

いずれも日常の取扱いと安全を意識した規定です。
軸受部の油面を外部から確認できる構造や注油口は、潤滑不足による故障を防ぐための規定です。
回転部や高温部にカバーを設けるのは、人が誤って触れる事故を防ぐためです。
このほかにも、腐食するおそれのある部分の防食処理や、地震による振動に耐える取付ボルトの強度など、構造全体にわたって基準があります。
点検の際は、こうしたカバーや注油口が本来の機能を保っているかどうかも確認するとよいでしょう。
注油口があるのは知っていましたが、基準で決まっていたんですね。
はい、点検のしやすさまで基準に含まれています。
ポンプの材質はなぜ特定施設水道連結型かどうかで変わるのか

このとき、特定施設水道連結型スプリンクラー設備かどうかで、選べる材料の幅が変わります。
ポンプ本体・羽根車・主軸のいずれも、特定施設水道連結型スプリンクラー設備に用いるものは、その他の一般的なポンプより選べる材料の種類が広く定められています。
水源タンクを持たない小規模な設備向けという性格上、コストや調達のしやすさに配慮して材料の選択肢を広げていると考えられます。
どちらの区分でも、表に無い材料であっても同等以上の強度・耐食性があれば使うことができます。
点検では、腐食や摩耗が材質相応に進んでいないかを確認することが大切です。
水道直結だと材料の決まりまで違ってくるんですね。
はい、選べる材料の種類が広く定められています。
ポンプの軸動力と効率はなぜ揚程曲線とは別に確かめるのか

電動機に無理な負荷をかけていないかを確かめるための基準です。
定格吐出量で運転しているときの軸動力は、電動機定格出力を超えてはならないと定められています。
吐出量が定格の150パーセントまで増えたときでも、軸動力は電動機定格出力の110パーセントまでに収める必要があります。
効率についても、別図に示された効率曲線の値を下回らないことが求められます。
これらは揚程曲線とあわせて確認することで、ポンプと電動機の組み合わせに無理が無いかを判断する材料になります。
吐出量が増えると、電動機への負担も増えるということですか。
はい、その負担にも上限が決まっています。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備はなぜ内燃機関で直接ポンプを駆動できるのか

これとは別に、特定施設水道連結型スプリンクラー設備では、電動機そのものの代わりに内燃機関を使うことも認められています。
水源タンクを持たない小規模な設備向けのため、起動から40秒以内に定格吐出量に達するという速い応答が求められます。
セルモーターの蓄電池も、5秒間隔で10秒の始動を3回以上繰り返せる容量と、常時充電できる充電器が必要です。
燃料タンクは30分以上の連続運転ができる量を保有し、残量を確認できる構造でなければなりません。
非常動力装置とは別の条項で定められているため、混同せずに整理しておくとよいでしょう。
以前教わった非常動力装置とは、また別の基準なんですね。
はい、電動機そのものの代わりになる方式です。
ポンプ・電動機・内燃機関の表示にはどんな事項が必要か

見やすい箇所に、消えないように表示することが前提です。
ポンプには製造者名や型式のほか、定格吐出量及び定格全揚程、回転方向を示す矢印など性能や取扱いに関わる事項が並びます。
電動機や内燃機関にも同じように、定格出力や燃料の種類など、それぞれの機器に応じた事項が定められています。
制御盤の表示(第一種・第二種の別など)とは項目が異なるため、点検のときはどの機器の銘板を見ているかを意識するとよいでしょう。
表示が消えていたり読めなくなっていたりする場合は、専門業者に相談して確認することをおすすめします。
制御盤の表示とはまた別に、ポンプ本体にも表示があるんですね。
はい、機器ごとの銘板で性能を確認できます。
よくある質問
まとめ
ポンプ本体にもこんなに基準があるとは、正直驚きました!
ポンプ本体の点検もお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第12条第1項第7号ニ(屋内消火栓設備等の加圧送水装置の構造及び性能)
- 消防法施行令第12条第2項第3号の2(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の設置範囲)
- 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)第五 ポンプ方式の加圧送水装置 一 ポンプの構造・二 ポンプの材質・三 ポンプの放水性能・五の二 内燃機関・六 表示
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。設備の仕様や点検の実施方法は機種や建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または専門業者にご確認ください。





