BLOG

ドレンチャー等の加圧送水装置は定期検査でどこを確認するのか|制御盤から予備電源まで5つのチェックポイントを解説

加圧送水装置の定期検査で制御盤から予備電源までを確認する作業員

防火設備定期検査の対象には、防火扉や防火シャッターだけでなく、水幕を形成して延焼を防ぐ「ドレンチャー等」も含まれます。
ドレンチャー等は水を放出して初めて機能する設備なので、その水を送り出す加圧送水装置が正常に作動しなければ意味がありません。
加圧送水装置はポンプ制御盤・ポンプ本体・予備電源という3つの要素で構成されており、検査ではそれぞれ別の視点から状態を確認します。
この記事では制御盤のスイッチ類から予備電源の容量まで、加圧送水装置の検査で欠かせない5つのチェックポイントを解説します。

うちの建物にもドレンチャーの散水ヘッドがあるんですが、点検はヘッドを見るだけで十分なんですよね。

いいえ、水を送り出す加圧送水装置まで見ないと片手落ちです。
ポンプが動かなければ散水ヘッドはただの飾りになってしまいます。

なるほど、ポンプが動かないと元も子もないですね。
制御盤やポンプ本体は具体的にどこを見るんですか。

制御盤のスイッチ類からポンプ本体、そして予備電源まで、5つの視点で確認します。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • ポンプ制御盤はスイッチ類・表示灯・電圧計や電流計の指示値まで確認し、正常に操作できるかを見ます。
  • 制御盤内部の結線接続と接地は目視や触診で緩み・断線・腐食がないかを確認します。
  • ポンプ及び電動機は回転軸・軸受部・グランド部まで手で回すなどして異常がないか確かめます。
  • 予備電源への切り替えは常用電源を遮断して自動的に切り替わるかを実際に試験するのが基本です。
  • 予備電源そのものの劣化・損傷・容量も、切り替え試験にあわせて確認します。

加圧送水装置の定期検査の流れを示すインフォグラフィック(制御盤・結線接地・ポンプ電動機・予備電源切替)

加圧送水装置のポンプ制御盤はなぜスイッチと表示灯まで確認するのか

加圧送水装置のポンプ制御盤でスイッチ類と表示灯を確認する作業員のイラスト
加圧送水装置のうち、ポンプの運転や停止を操作し状態を表示するのがポンプ制御盤です。
検査ではこの制御盤自体の外観や機能を、目視と実際の操作の両方から確認します。
(7) 加圧送水装置の検査項目のうち、ポンプ制御盤のスイッチ類及び表示灯の状況は、どのような方法と基準で確認するか。
周囲の状況、外観、表示、電圧計及び電流計、開閉器及びスイッチ類、ヒューズ類、継電器、表示灯、予備品等を目視等により確認し、操作によって確認するものは実際に手で操作して確認する。判定基準は、スイッチ類に破損があること、表示灯が点灯しないこと、スイッチ類が機能しないことのいずれかに該当する場合を要是正とする。
制御盤は表示と操作の両方が正しく機能してはじめて役に立ちます。
スイッチが破損していたり表示灯が点灯しなかったりすると、いざという時にポンプを起動できているのかどうか現場で判断できません。
ポンプ起動のスイッチを実際に操作して検査する際は、事前に関係者へ連絡し、弁類の開閉位置を確認してから行うことが求められます。
継電器の接点の焼損やほこりの付着で、動作しても機能しないというケースもあるため注意が必要です。
できる限り制御盤の電源をOFFにして確認できる項目は、通電状態のまま操作しないのが安全です。

スイッチを操作するときは、うちの担当者にも連絡が来るということですね。

そのとおりです。
弁の開閉状態を確認してから操作するので、事前調整は欠かせません。

制御盤内部の結線接続と接地はどこまで細かく見るのか

ポンプ制御盤内部の結線接続と接地端子を点検する様子のイラスト
制御盤の外側だけでなく、内部の配線がきちんとつながっているかも検査の対象です。
結線接続と接地はどちらも、目視と触診を組み合わせて確認します。
(8)(9) ポンプ制御盤内部の結線接続の状況と接地の状況は、それぞれどのように確認するか。
結線接続は、制御盤から各機器への配線に損傷や切断がなく、接続端子に緩みや脱落がないことを目視等によって確認する。端子部を触診する場合は、感電や短絡を防ぐため事前に被覆の損傷がないかを確認したうえで実施する。接地の状況は、制御盤から正しく接地接続がなされ、設備の機能に支障がないことを目視等で確認する。判定基準は、断線、端子の緩み、脱落、損傷又は著しい腐食があることとされる。
配線と接地は普段目に触れない分、劣化に気づきにくい場所です。
端子の緩みや脱落は振動や経年でじわじわ進むため、外観だけでは異常が分からないことも多くあります。
ドライバー等で触診するときは、感電や短絡につながらないよう電線の被覆状態を先に目視で確かめるのが手順です。
接地線に断線や著しい腐食があると、漏電時に本来の保護機能が働かなくなるおそれがあります。
端子部にが生じている場合は、故障の予兆として記録に残しておくとよいでしょう。

つまり見た目がきれいでも、触ってみないと分からない不具合があるんですね。

まさにそうです。
だからこそ資格を持った検査員が定期的に確認する意味があります。

ポンプ本体と電動機はどこを点検するのか

加圧送水装置のポンプと電動機の回転軸を点検する作業員のイラスト
制御盤が正常でも、水を送り出すポンプと電動機そのものが劣化していては意味がありません。
ここでは機械としての基本性能を、外観・回転・潤滑の3方向から確認します。
(10) 加圧送水装置のポンプ及び電動機の状況は、どのような点に着目して確認するか。
ポンプ・電動機ともに、外観に変形や損傷、著しい腐食がないかを確認する。回転軸は手で回すなどして回転が円滑かどうかを確認し、軸受部は潤滑油に著しい汚れや変質がないか、必要量が満たされているかを確認する。ポンプのグランド部は著しい漏水がないか、電動機の軸継手は緩み等がなく機能が正常かを確認する。
回転軸を手で回して確認するのは、機械的な引っかかりを早期に見つけるためです。
軸受部の潤滑油が汚れていたり不足していたりすると、いざ起動したときに摩耗が急速に進むおそれがあります。
ポンプのグランド部からの著しい漏水は、内部のパッキンなどが劣化しているサインとして扱われます。
加圧送水装置には消防用設備等と共通のポンプユニットが使われる例もあり、共通点の多い点検内容です。
電動機側の軸継手に緩みがあると、ポンプへ動力がうまく伝わりません。

ポンプって普段は止まったままなのに、そんなに細かく見るものなんですね。

止まっている時間が長いからこそ、いざという時に動くかを確認しておく必要があります。

予備電源への切り替えはどう確認するのか

加圧送水装置の予備電源への切り替えを確認する作業員のイラスト
停電時でもポンプを止めないため、加圧送水装置には予備電源への切り替え機能が備わっています。
ここでは実際に電源を切り替えて、正しく作動するかどうかを確かめます。
(11) 加圧送水装置用予備電源への切り替えの状況は、どのような方法で確認するか。
あらかじめポンプを起動して定格負荷運転の状態にしたうえで、常用電源を遮断して停電状態を作り出し、予備電源へ自動的に切り替わってポンプが再運転を開始するか、適正に定格運転するかを確認する。予備電源の多くは自家発電設備であり、その取扱いは自家用電気工作物に関する資格者の立会いのもとで行うことが望ましいとされる。
切り替え試験は火災時の停電を想定した、いわば本番のリハーサルです。
常用電源とあわせて停電させる試験なので、実施のタイミングは予備電源側の検査時期に合わせるのが現実的とされています。
自動的に予備電源へ切り替わったあと、ポンプが単に動き出すだけでなく定格どおりの運転になっているかまで確認します。
電気設備を扱う試験のため、資格を持つ電気工事関係者の立会いのもとで実施することが望ましいとされています。
この試験結果は、次に説明する予備電源の容量確認とあわせて記録します。

わざと停電させて試すなんて、想像していませんでした。

実際の火災を想定した試験だからこそ、意味があるんです。

予備電源そのものの状態と容量はどう判定するのか

加圧送水装置用予備電源の劣化と容量を確認する作業員のイラスト
切り替えができても、予備電源そのものが劣化していたり容量不足だったりすれば安心できません。
最後に予備電源本体の状態と、供給できる容量を確認します。
(12)(13) 加圧送水装置用予備電源の劣化及び損傷の状況、並びに容量の状況は、それぞれどのように確認するか。
劣化及び損傷の状況は、外観、周囲状況などを目視等によって確認し、自家発電設備の場合はその劣化及び損傷の状況もあわせて確認する。判定基準は変形、損傷又は著しい腐食があることとされる。容量の状況は、上記の切り替え試験の結果とあわせて、検査結果、設計図書、銘板等により確認する。なお、切り替えると業務に支障が出る場合は、休業日等の全館停電日に合わせて実施することとされている。
予備電源は普段動かさない分、劣化に気づきにくい設備です。
配線に損傷があったり、変形・腐食が進んでいたりすると、いざ切り替わっても継続使用できないおそれがあります。
容量については設計図書や銘板の数値と、実際の切り替え試験の結果を突き合わせて確認します。
テナントの営業に影響が出る建物では、検査日そのものを全館停電日に合わせて調整する配慮も必要です。
制御盤・ポンプ・予備電源の3つがそろって初めて、ドレンチャー等は火災時に確実に作動します。

停電日に合わせるとか、うちのテナントさんとの調整も必要になりそうです。

その調整も含めて、事前に検査会社と日程を相談しておくと安心です。

よくある質問

Qポンプ制御盤の検査はどのくらいの頻度で必要ですか。
A防火設備定期検査は建築基準法第12条第3項に基づき、特定行政庁が定める時期ごとに実施し報告することとされています。ポンプ制御盤を含む加圧送水装置は、その検査のたびに確認する対象です。
Q予備電源への切り替え試験は自分たちで行ってもよいですか。
A防火設備定期検査は資格を持つ検査員が行う必要があります。自家発電設備の取扱いは自家用電気工作物に関する資格者の立会いのもとで行うことが望ましいとされているため、専門の検査会社に依頼するのが安全です。
Qポンプの回転軸を手で回すのはなぜですか。
A回転が円滑かどうかを確かめるためです。実際にポンプを運転させなくても、手で回した時の引っかかりや異音から軸受部の異常を早期に見つけられます。
Q要是正と判定された場合はどうすればよいですか。
A検査結果表に記載したうえで、特定行政庁への報告にあわせて改修計画を立てる必要があります。制御盤や予備電源に関わる不具合は放置すると火災時にポンプが起動しないおそれがあるため、早期の改修が重要です。

まとめ

加圧送水装置はポンプ制御盤・ポンプ本体・予備電源という3つの要素で構成されます。
ポンプ制御盤はスイッチ類・表示灯を目視と実際の操作の両方で確認します。
結線接続と接地は緩み・断線・著しい腐食がないかを目視や触診で確認します。
ポンプ及び電動機は回転軸・軸受部・グランド部まで手で回すなどして確認します。
予備電源への切り替えは常用電源を遮断する試験で実際に確かめます。
予備電源本体は劣化・損傷の有無と容量を切り替え試験にあわせて確認します。
要是正の判定が出た場合は、特定行政庁への報告にあわせて早期の改修を検討します。

制御盤からポンプ、予備電源まで見るべき場所がよく分かりました。
今度の検査では検査員の方にも詳しく聞いてみます

加圧送水装置は火災時の最後の砦となる設備です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第12条第3項・第4項
  • 建築基準法施行規則第6条第2項・第3項及び第6条の2第1項
  • 平成28年国土交通省告示第723号(防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件)
  • 建築基準法施行令第112条第19項(防火設備の構造方法に関する基準)

※本記事は建築基準法・同施行令・同施行規則及び関係告示の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建築物における検査方法や判定は、実際の設備の仕様や設置状況によって異なる場合があります。具体的な検査・報告については、専門の検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
加圧送水装置の定期検査で制御盤から予備電源までを確認する作業員
防火設備定期検査の対象には、防火扉や防火シャッターだけでなく、水幕を形成して延焼を防ぐ「ドレンチャー等」も含まれます。 ドレンチャー等は水を放出して初めて機能する設備なので、その水を送り出す加圧送水装置が正常に作動しなけ...