建築設備定期検査の「排水設備」区分には、排水管そのものとは別に、衛生器具・排水トラップ・阻集器・通気管という器具や配管に関する検査事項があります。
これらは排水管本体ほど目立ちませんが、逆流や臭気の侵入、油脂やガソリンによる配管の損傷を防ぐための重要な仕組みです。
とくに排水トラップと通気管は、封水(トラップにたまった水)を保つという同じ目的でひと組になって働いており、片方が欠けるともう片方も機能しません。
本記事では、この5つのチェックポイントを配管設備定期検査基準書と建築基準法の条文に沿って整理して解説します。
衛生器具や排水トラップ、阻集器に通気管と言われても、正直なにを見られているのか分かりません。
点検ではどんなことを確認するんですか。
はい、衛生器具の取付けから通気管の状態まで、順番に確認していきます。
今回はその5つのチェックポイントを解説します。
阻集器なんて、名前も聞いたことがありませんでした。
はい、油や土砂を配管に流さないための大事な設備です。
厨房のあるテナントではとくに重要になります。
- 衛生器具は取付けが堅固であること、逆流防止のための措置が講じられていることを確認します。
- 排水トラップは深さ5cm以上10cm以下(阻集器を兼ねる場合は5cm以上)を保ち、二重トラップになっていないことを確認します。
- 阻集器は油脂やガソリン、土砂を有効に分離できる構造で、容易に掃除ができることを確認します。
- 通気管の末端は、出入口や窓などの開口部から600mm以上立ち上げるか、3.0m以上離して開放します。
- 通気管は目視だけでなく嗅診(においの確認)もあわせて行い、破封や損傷がないことを確認します。
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目次
衛生器具の取付けはどんな基準で確認するのか

検査ではまず、これらが確実に固定されているかを確認します。
「衛生器具」とは、水を供給する給水器具(給水栓、洗浄弁など)、水受け容器(便器・洗面器類、流し類など)、排水器具(排水金具類、トラップなど)及び付属品の総称です。
施行令第129条の2の4第2項第二号は、水槽や流しなど水を受ける設備に給水する水栓の開口部について、あふれ面と水栓開口部との垂直距離を適当に保つなど、有効な逆流防止の措置を求めています。
検査ではこの逆流防止の措置に加え、衛生器具の取付けが堅固であるか、損傷がないかもあわせて確認します。
ぐらつきや破損を放置すると、水漏れや思わぬ事故につながるおそれがあります。
衛生器具の取付けまで検査対象なんですね。
ただの水回りの点検だと思っていました。
はい、逆流防止の措置も含めて、飲料水を汚染から守る仕組みの一部なんです。
排水トラップの深さや二重トラップはどう判定するのか

検査では深さや設け方まで、細かく数値で確認します。
告示は、雨水排水管(雨水排水立て管を除く。)を汚水排水の配管設備に連結する場合はその雨水排水管にトラップを設けること、同一系統に二重トラップとならないよう設けること、汚水に含まれる汚物等が付着・沈殿しない措置を講ずることの3点をまず求めています。
そのうえで、トラップの深さは5cm以上10cm以下(阻集器を兼ねる場合は5cm以上)とすることも基準です。
利用頻度の少ない場所や乾燥する場所、室内外の気圧差が大きい場所では封水切れが起きやすいため、必要に応じて封水を補給する装置なども検討します。
流し台に蛇腹付きのビニルホースを利用してトラップを形成している事例がありますが、これは正規の排水トラップとは認められません。
台所の下でよく見る、あの蛇腹のホースは
トラップとしては使えないんですね。
はい、正規のトラップに交換していただくようご案内しています。
阻集器はなぜ種類ごとに設けるのか

厨房や工場、駐車場など、用途に応じて種類が分かれています。
告示は、汚水が油脂、ガソリン、土砂その他配管設備の機能を著しく妨げ、又は配管設備を損傷するおそれのある物を含む場合に、有効な位置へ阻集器を設けることを求めています。
阻集器には、厨房排水に使うグリース阻集器のほか、オイル阻集器、砂阻集器及びセメント阻集器、毛髪阻集器、洗たく場阻集器、プラスタ阻集器の6種類があります。
汚水から油脂やガソリン、土砂等を有効に分離できる構造で、容易に掃除ができることも判定基準です。
グリース阻集器はバスケット内の厨芥類を少なくとも1日1回、水表面のグリースは1週間に1回、底部の残さの除去と全体の清掃は2〜4週間に1回の頻度で行う必要があります。
阻集器の掃除って、そんなに頻繁にやるものなんですか。
はい、グリースの蓄積は詰まりの原因になるので、こまめな清掃が欠かせません。
通気管の末端はどこに開放すればよいのか

末端をどこに開放するかにも、細かいルールがあります。
末端の開口部が当該建築物や近隣建築物の出入口、窓、換気口、外気取入口などに近接する場合は、これらの開口部より600mm以上立ち上げるか、水平に3.0m以上離すことが求められます。
寒冷地では凍結による閉塞を防ぐため、開口部の口径を75mm以上とし、口径を大きくする場合は開口部より300mm以上下部で行います。
屋上が庭園や物干場として使われている場合は人の背の高さ以上(約2m)に、使われていない場合でも雨水が流入しない高さ(約200mm)に立ち上げ、開口部には防虫網を設けます。
配管内の空気が屋内に漏れることを防ぐ通気弁を使う場合は、気密性能や耐久性能が確認されたものを、床面より1m以上の高所に設置するなどの条件を満たす必要があります。
通気管の先って、ただ外に出ていればいいと思っていました。
はい、窓からの距離や高さまで決まっているので、検査でそこも確認します。
通気管の状態はなぜにおいでも確認するのか

封水が保たれているかどうかは、においにも表れます。
告示は、排水槽について通気のための装置以外の部分から臭気が漏れない構造とすることを求めており、通気管についても排水トラップの封水部に加わる圧力と大気圧との差によってトラップが破封しないように設けることを求めています。
汚水の流入によって通気が妨げられていないこと、通気管そのものに損傷がないことも判定基準です。
封水が破れると、排水管内の臭気がそのまま室内に上がってきます。
検査員が現地でにおいを確認する嗅診は、図面だけでは分からない不具合を見つけるための実務上の工夫です。
検査でにおいまで確認するんですね。
ちょっと意外でした。
はい、封水切れはにおいで気づくことが多いので、大事な確認方法です。
よくある質問
まとめ
衛生器具や阻集器にも、こんなに細かい基準があるとは知りませんでした。
はい、普段は気づきにくい部分だからこそ、定期検査で確認しています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第129条の2の4第2項第二号及び第3項第二号(e-Gov法令検索)
- 昭和50年建設省告示第1597号 第2第二号・第三号・第四号・第五号(排水槽、排水トラップ、阻集器及び通気管の構造)
- 平成20年国土交通省告示第285号 別記第四号(給水設備及び排水設備の検査結果表)
※本記事は、建築基準法・同施行令・関係告示に基づき、排水設備(衛生器具・排水トラップ・阻集器・通気管)に関する定期検査における一般的な検査事項を解説したものです。建築物の構造や設備の仕様によって具体的な確認方法は異なる場合があります。個別の判定は所轄の特定行政庁又は建築設備検査員にご確認ください。





