ビルにエレベーターやエスカレーターを新しく設けるとき、建物の建築確認とあわせて消防の同意も必要になると考えがちです。
しかし建築設備だけを対象にした確認申請には、消防の同意そのものを省略できる特別な扱いが条文で用意されています。
ただし同意が不要になっても、その工事の情報が消防に伝わらなくなるわけではありません。
本記事では、建築設備の確認申請で消防同意が不要になる仕組みと、その代わりに課される通知義務を条文にもとづいて解説します。
うちのビルにエレベーターを増設する話が出ているんですが、これも消防の同意が必要になるんでしょうか。
実は建築設備だけの確認申請は、消防の同意を省略できる扱いになっています。
同意がいらないなら、消防はその工事のことを何も知らないままなんですか。
いいえ、代わりに通知という形で情報が消防に届く仕組みがあるので、順番に説明しますね。
- 建物にエレベーターなどの建築設備だけを設ける確認申請は、消防の同意を原則として必要としません
- この扱いを定めているのは消防法第7条第1項ただし書と建築基準法第87条の4です
- 対象になるのはエレベーター・エスカレーター・小荷物専用昇降機など建築基準法施行令第146条が指定する設備です
- 同意が不要な場合でも、建築主事等は消防長又は消防署長へその内容を通知しなければなりません
- 建物全体の新築確認と一体で審査される場合はこの扱いに当たらず、通常どおり消防の同意が必要です
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目次
エレベーターの確認申請になぜ消防の同意はいらないのか

しかし建築設備だけの確認申請には、消防の同意そのものを省略できる扱いが条文で用意されています。
消防法第7条第1項は、建築確認に消防の同意を必須とする原則をまず定めています。
そのただし書には、住宅の建築確認と並んで、この建築設備の確認をする場合が例外として挙げられています。
つまり除外されるのは建物全体の確認ではなく、設備だけを対象にした確認という限られた場面です。
次の見出しでは、具体的にどの建築設備がこの対象になるのかを確認します。
今回の増設はエレベーターの工事だけなので、それだけを確認してもらう形になりそうです。
それなら建築設備だけの確認にあたるので、同意は原則不要になります。
どの建築設備がこの確認手続きの対象になるのか

対象になる建築設備は、政令であらかじめ種類が指定されています。
第一号はエレベーターとエスカレーターで、ごく一部の低リスクなものを除いて広く対象に入ります。
第二号の小荷物専用昇降機も対象ですが、危害を受けるおそれが少ないと国土交通大臣が定めたものは除かれます。
第三号は特定行政庁が個別に指定する設備で、し尿浄化槽・合併処理浄化槽ははじめから除かれています。
自分の建物で予定している工事がこの一覧に当てはまるかどうかを、まず確認しておくとよいでしょう。
今度の改装ではエスカレーターも設置する予定なんですが、それも同じ扱いになりますか。
はい、エスカレーターも同じ第146条第1項の対象に入っています。
消防の同意を省略した代わりに何が課されるのか

建築基準法には、同意の代わりに情報を伝えるための規定が別に置かれています。
これは許可を求める同意の手続きではなく、あくまで情報を共有するための通知です。
この通知によって、消防機関は管轄区域内でどんな建築設備の工事が行われているかを把握できます。
「同意が不要イコール消防と無関係になる」と考えると、この通知の存在を見落としがちです。
工事が同意不要の扱いになったと分かっても、消防機関には情報が届いていると考えておく必要があります。
同意がいらないなら、消防署はうちの工事のことを何も知らないと思っていました。
いいえ、通知という形で確認申請の内容が消防に届く仕組みになっています。
実務で見落としやすいのはどこか

建物全体の確認と設備だけの確認とでは、そもそも手続きの土台が違います。
新築工事のように建物全体の確認申請の中で設備もあわせて審査される場合は、この規定の対象になりません。
その場合は通常どおり消防法第7条第1項の原則に戻り、消防の同意が必要になります。
対象になる建物も、床面積200平方メートルを超える特殊建築物か、2階建て以上もしくは延べ面積200平方メートルを超える建築物に限られます。
既存ビルへエレベーターを後付けする改修のような場面で、この単独の確認の扱いになりやすいと考えておくとよいでしょう。
新築のときはこの扱いにならないんですね、知りませんでした。
はい、建物全体の確認と一体になる新築時は通常どおり同意が必要です。
明日から何を確認すればよいのか

エレベーターなどの工事を検討し始めた段階で、次の点を押さえておくと安心です。
- まず、その工事が建物全体の確認と一体か、建築設備だけの単独の確認かを設計者や確認検査機関に確認します
- 単独の確認になる場合は、消防の同意は原則不要でも通知は行われることを前提に準備を進めます
- 対象の建物が建築基準法第6条第1項第1号又は第2号の規模に当てはまるかどうかもあわせて確認します
通知が行われるとはいえ、消防用設備側の基準まで自動的にクリアになるわけではありません。
既存不適格の解消や非常用エレベーターの基準など、消防用設備等の側の確認もあわせて進めておくと工事が滞りません。
単独の確認になるかどうか、まず設計士に聞いてみます。
それが確実です、早めの確認が結局いちばんの近道ですよ。
よくある質問
まとめ
これでエレベーターの工事のとき何を確認すればいいか分かりました、今度の増設計画で早速確認します。
建築設備の確認申請から消防用設備側の確認まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第7条
- 建築基準法第6条・第87条の4・第93条
- 建築基準法施行令第146条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または特定行政庁にご確認ください。





