複合用途ビルの管理を任されると、スプリンクラー設備の要否をフロアごとに判定する場面に必ず出会います。
延べ面積が同じくらいの階でも、テナントの組み合わせひとつで基準面積が変わることをご存知でしょうか。
消防法施行令第十二条第一項第十一号は、その階にどんな用途が入っているかによって基準を書き分けています。
特に(2)項や(4)項の用途が混ざると、基準は一気に厳しくなります。
うちのビル、四階の飲食店フロアだけスプリンクラーの基準が違うと言われたんです。
床面積は他の階と同じくらいなのに、なぜでしょうか。
その階に含まれる用途の種類が関係しています。
消防法施行令第十二条第一項第十一号が、用途ごとに基準面積を書き分けているんです。
用途が違うだけで、同じ広さの階の基準が変わるということですか。
そのとおりです。
この記事でどの用途が基準を厳しくするのか、順番に見ていきましょう。
- 複合用途ビル(令別表第一(16)項イ)のスプリンクラー設備は、建物全体ではなく階ごとの床面積の合計で要否が決まる。根拠は消防法施行令第十二条第一項第十一号
- 四階以上十階以下の階は、原則として該当用途の床面積の合計が千五百平方メートル以上でスプリンクラーが必要になる
- その階に(2)項(キャバレー等)や(4)項(百貨店等)の用途が含まれると、基準は千平方メートル以上まで下がる
- 基準面積は該当する用途部分だけではなく、その階にある該当用途の床面積の合計で判定する
- 小さなテナントひとつが階全体の基準を動かすことがあるため、用途構成表での確認が欠かせない
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目次
複合用途ビルのスプリンクラー基準はなぜ単純に決まらないのか

ところが複合用途ビルは、階ごとに違う用途が入っているぶん、判定の単位も一段複雑になります。
条文の柱書は「地階、無窓階又は四階以上十階以下の階」を対象にしていて、建物全体の延べ面積ではなくその階だけを見ることを前提にしています。
そのうえで(十六)項イに掲げる防火対象物、つまり事務所や店舗や飲食店などが混ざった複合用途ビルについては、専用のハ号が別に用意されています。
ハ号が見ているのは、その階のうち(一)項から(四)項まで・(五)項イ・(六)項・(九)項イに掲げる用途に供される部分の床面積の合計です。
どの用途がどれだけの面積を占めるかを、階ごとに積み上げて確かめるところから判定が始まります。
建物全体ではなく、階ごとに別々に見るということなんですね。
そのとおりです。
次はその階でどれだけの面積になれば基準に達するのかを見ていきましょう。
四階から十階までの階はどんな基準で決まるのか

地下や窓のない階と、四階から十階までの階とでは、求められる面積が違います。
地階や窓のない無窓階は、階の性質上あらかじめ危険度が高いとみなされ、千平方メートル以上という低いほうの基準がそのまま適用されます。
一方、四階から十階までの階は、通常であれば千五百平方メートル以上という一段緩やかな基準で足ります。
ところがこの千五百平方メートルという数字には、後ろにかっこ書きの例外がついています。
その中身が、次に見る用途の組み合わせによる読み替えです。
四階以上なら千五百平方メートルまでは大丈夫、と考えていいんですか。
そこにかっこ書きの条件が付いています。
次の項で、その条件がどんな階に効くのかを説明します。
(2)項や(4)項の用途が入るとなぜ基準が下がるのか

そこに名指しで挙げられているのが(2)項と(4)項です。
(2)項はキャバレーや遊技場、性風俗関連特殊営業の店舗など、(4)項は百貨店やマーケットなど物品販売を営む店舗を指しています。
四階から十階の階であっても、その階に(2)項や(4)項の用途に供される部分が存すれば、千五百平方メートルではなく千平方メートルという条文が適用されます。
これは(2)項や(4)項の用途だけの床面積を測るという意味ではなく、その階全体の該当用途の床面積の合計に対して、より厳しい基準を当てはめるという読み方です。
用途構成の中に(2)項や(4)項が一つでも含まれているかどうかが、階全体の基準を左右する分かれ目になります。
うちの四階には小さなラウンジが一軒あるだけなんですが、それでも変わるんですか。
条文は用途に供される部分が存するかどうかで書かれています。
広さではなく、その用途があるかどうかが分かれ目になります。
実務で見落としやすいのはどこか

条文は面積の大小で用途を区別していません。
大半が事務所フロアであっても、その一角に小さなラウンジや物販コーナーが入っていれば、その階は(十六)項イの複合用途として扱われます。
床面積の割合が小さいからといって、その用途を数えなくてよいという規定はどこにもありません。
テナントの入れ替えがあった階ほど、以前の用途構成表のまま判定してしまい、新しい用途を見落としがちです。
フロア図面と契約書の用途欄を照らし合わせ、その階にある用途を漏れなく洗い出す作業が欠かせません。
つまり、小さいテナントを後回しにすると足元をすくわれるんですね。
そのとおりです。
最後に、明日からどう確認すればよいかをまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

明日からできることは大きく三つです。
まず各階について、テナントの用途を一件ずつ書き出し、(2)項や(4)項に当たる用途が入っていないかを確認します。
次に、該当する用途がある階については、その階にある(一)項から(四)項まで・(五)項イ・(六)項・(九)項イの用途の床面積を合計し、千平方メートルという基準と照らし合わせます。
最後に、テナントの入れ替えがあった階を優先して見直し、用途構成表を現状に合わせて更新しておきます。
判断に迷う用途区分が出てきたら、図面と契約書を持って所轄消防署に確認するのが確実です。
まずは自分のビルの用途構成表を作るところから始めればいいんですね。
その表があれば、次のテナント入れ替えでも慌てずに済みます。
迷ったらいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
うちのビルの用途構成表、さっそく作り直してみます!
その用途構成表の読み合わせから、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第1項・別表第一
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





