BLOG

風俗営業の許可申請はなぜ警察消防建築が連携するのか|歌舞伎町ビル火災後にできた仕組みを解説

夜の雑居ビル街の外観写真

風俗営業の店舗が入るテナントの許可申請に、消防が関わっていることはあまり知られていません。
実は風俗営業の許可や変更承認の審査には、警察だけでなく消防や建築部局も関わる仕組みが用意されています。
きっかけは、同じ地区で相次いで起きた重大な雑居ビル火災でした。
消防庁は平成13年、風俗営業の許可審査に合わせて警察・消防・建築行政が情報を共有する連携の仕組みを通知しました。

うちのビル、これから風俗営業の店子さんが入る予定なんです。

実は風俗営業の許可審査には、消防への確認が入ることがあるんですよ。

許可を取るのに消防が関係してるなんて知りませんでした。

はい。
連携の仕組みを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成13年の新宿歌舞伎町ビル火災を機に、風俗営業の許可審査で警察・消防・建築行政が連携する仕組みが通知されました。
  • 警察機関から消防機関へ、許可等の申請に係る防火対象物が消防法令等に違反していないか確認が入ることがあります。
  • 確認の対象は風適法第3条第1項の許可第9条第1項の変更承認に係る申請です。
  • 是正が必要な違反が見つかれば、許可の可否とは別に是正指導や措置命令の対象になります。
  • 違反がなくても、防火管理者選任届など今後必要になる手続きを案内されることがあります。

風俗営業許可の審査で警察消防建築が連携する仕組みを示す図解

風俗営業を含む雑居ビルの火災はなぜ警察との連携を招いたのか

雑居ビルの前に消防車が止まっている様子を示す図
雑居ビルの火災は、一度発生すると多数の死傷者につながりやすい建物です。
実際にそれを裏付ける重大な火災が、短い間に立て続けに起きました。
去る平成13年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災において、死者44名を出す惨事が発生した。同種のビルに関して全国的に一斉立入検査を行い、違反是正措置を行うなど防火安全の徹底を図っていたが、去る10月29日、再び新宿区歌舞伎町の風俗営業施設等を含む雑居ビルで死者2名、負傷者5名を出す火災が発生した(風俗営業の用途に供する営業所を含む防火対象物の防火安全対策における風俗営業行政との連携について 平成13年11月12日消防予第393号)
同じ地区で連続した惨事が転機になりました。
歌舞伎町では平成13年9月、雑居ビル火災で44名もの命が失われました。
消防庁はただちに全国の同種ビルへ一斉立入検査を指示し、違反是正の徹底を進めていました。
ところがわずか2か月足らずで、同じ歌舞伎町の風俗営業施設を含む雑居ビルで再び火災が発生しました。
同じ街で二度目の火災が起きたことで、許可を出す側の警察との連携も見直されることになりました。

一度目の火災のあとも、また同じような火災が起きてしまったんですね。

そうなんです。
だから許可の入り口から連携する発想が生まれました。

どんな許可申請がこの連携の対象になるのか

警察と消防と建築の三つの建物が三角形につながる様子を示す図
連携の対象になるのは、すべての営業ではありません。
特定の許可・承認の申請に絞られています。
警察機関から、風俗営業の許可(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号。以下「風適法」という。)第3条第1項)又は変更の承認(風適法第9条第1項)(以下「風俗営業の許可等」という。)の申請に係る風俗営業施設を含む防火対象物が、消防法令及び火災予防条例(以下「消防法令等」という。)に違反する疑いがあるとして、その確認が消防機関にあった場合等の対応については、以下のとおりとする。(同通知)
対象は風適法上の許可・変更承認の申請に絞られています。
新規に風俗営業を始めるときの風適法第3条第1項の許可と、営業所の構造や設備を変える風適法第9条第1項の変更承認が対象です。
警察が許可等の申請を審査する過程で、その防火対象物が消防法令や火災予防条例に違反している疑いを確認したときに、この連携が動き出します。
つまり、営業を始めようとするテナント側にとっては、許可の審査そのものが防火安全のチェックポイントにもなっているということです。

新しく店を出すときの許可申請が、そのままチェックのきっかけになるんですね。

はい。
変更のときも同じ扱いになります。

警察から確認があったとき消防はなにを回答するのか

警察の建物から消防の建物へ書類が届き虫眼鏡で確認する様子を示す図
確認が来たとき、消防機関はその場しのぎでは対応しません。
あらかじめ回答の流れが決められています。
確認があった防火対象物については、早急に立入検査等を実施するなどして、実態の把握を行うこと。確認に対する回答事項としては、防火対象物使用開始届出等の必要な手続きの有無、消防法令等の違反事項、その是正のため今後採ろうとする措置などが考えられるが、具体的には、各都道府県警察との調整を図った上で決定すること。(同通知)
回答の前に、まず現地を確認するのが原則です。
確認の連絡を受けた消防機関は、早急に立入検査を行って実態を把握します。
回答する内容は届出の有無や消防法令等の違反事項、今後の是正の見通しなどで、都道府県警察との調整を経たうえで具体的な回答内容が決められます。
つまり、風俗営業を営むテナント側が知らないうちに、立入検査が実施されている可能性があるということです。
連携の仕組みは警察機関と消防機関の間だけでなく、建築行政機関との情報共有にも広がっています。

許可の審査中に、こっそり立入検査までされてるかもしれないんですか。

実態把握が先、という決まりなんです。

許可が出れば消防法令の違反は解決したことになるのか

書類の山に警告マークがつき公印の書類へ矢印が伸びる様子を示す図
許可が下りたからといって、安心はできません。
違反の有無と許可の可否は、別の話として扱われます。
是正措置が必要でない防火対象物にあっても、今後、消防法令等の手続き(例えば、防火管理者選任届、防火対象物使用開始届等)が必要となる可能性のある防火対象物にあっては、許可申請者等にその旨を伝えること。…風俗営業の許可等の際に、許可申請者等があくまで是正指導に従わない場合は、消防機関において「是正指導に従わなければ違法防火対象物について措置命令をし、これに従わなければ消防法令違反で告発を行うこともあり得る」旨の通告を許可申請者等に行うこと。(同通知)
許可の可否と、消防法令違反の是正は別々に判断されます。
今回、是正が必要な違反が見つからなくても、防火管理者選任届や防火対象物使用開始届など、今後必要になる手続きを案内されることがあります。
是正指導に応じない場合は、許可の有無にかかわらず措置命令や告発の対象になり得ることも明示されています。
つまり、風俗営業の許可を取得できたことと、消防法令の違反が解消されたことはまったく別の話です。
許可を得て安心してしまい、指摘事項を放置するのがいちばん危険なパターンです。

許可さえ取れれば、消防のほうは大丈夫だと思っていました。

いいえ、許可と是正は別物だと考えてください。

風俗営業の店舗を開くとき明日から何を確認すればよいか

申請書と設計図とカレンダーと電話が並ぶ机の様子を示す図
この連携は、営業を始める側にとっても他人事ではありません。
準備の段階でできることを整理しておきましょう。
風俗営業の許可等に際して、警察機関(各都道府県警察及び各警察署をいう。)と消防機関及び建築行政機関が相互に連携を図ることは、雑居ビル等の防火安全対策に資するところが大であるので、有効な連携を図るための仕組みの整備等について、早急に各都道府県警察と調整を図り、防火安全確保の徹底を図ることを基本とする。(同通知)
営業所を開く準備は、許可の書類をそろえるだけでは終わりません。
まず、店舗の構造や設備が消防法令や火災予防条例に適合しているかを、許可申請の前に自主的に確認しておきましょう。
防火対象物使用開始届や防火管理者選任届など、必要な手続きの有無を早い段階で洗い出しておくことが大切です。
指摘を受けてから動くのではなく、開店準備の段階で消防設備や防火管理に詳しい専門家に相談しておくと手戻りが少なくなります。
この連携の仕組みは平成26年にも改めて活用が呼びかけられており、今も生きている枠組みです。

開店前にもう一度、消防のほうも確認しておいたほうがよさそうですね。

はい。
早めの確認が結局いちばんの近道です。

よくある質問

Q風俗営業の許可を取れば消防法令の違反は問題にならなくなりますか?
Aいいえ。許可の可否と消防法令違反の是正は別に扱われ、違反が残っていれば是正指導や措置命令の対象になります。
Qこの連携の対象になるのはどんな申請ですか?
A風適法第3条第1項の営業許可第9条第1項の変更承認の申請が対象です。
Q確認があった場合、消防機関はすぐに警察へ回答しますか?
Aいいえ。早急に立入検査を行い実態を把握したうえで、都道府県警察との調整を経て回答内容を決めます。
Q違反が見つからなければ何も案内されませんか?
A違反がなくても、防火管理者選任届など今後必要になる手続きがあれば申請者に案内されます。

まとめ

平成13年の新宿歌舞伎町ビル火災を機に、風俗営業の許可審査で警察・消防・建築行政が連携する仕組みが通知されました。
対象は風適法第3条第1項の許可と第9条第1項の変更承認に係る申請です。
警察機関から消防機関へ確認があった場合、消防は早急に立入検査を行って実態を把握します。
回答内容は都道府県警察との調整を経たうえで具体的に決められます。
違反がなくても防火管理者選任届など今後必要になる手続きを案内されることがあります。
是正指導に従わなければ、許可の有無にかかわらず措置命令や告発の対象になり得ます。
営業所を開く側は、開店準備の段階で消防設備や防火管理の専門家に相談しておくことが大切です。

開店準備のときは早めに消防のほうも確認します!

判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「風俗営業の用途に供する営業所を含む防火対象物の防火安全対策における風俗営業行政との連携について」(平成13年11月12日消防予第393号消防庁予防課長)
  • 「風俗営業の用途に供する営業所を含む防火対象物の防火安全対策における風俗営業行政との連携の推進について」(消防庁予防課長、平成26年)
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第3条第1項・第9条第1項
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第2項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
夜の雑居ビル街の外観写真
風俗営業の店舗が入るテナントの許可申請に、消防が関わっていることはあまり知られていません。 実は風俗営業の許可や変更承認の審査には、警察だけでなく消防や建築部局も関わる仕組みが用意されています。 きっかけは、同じ地区で相...