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消防署の指導は法令上の義務なのか|消防庁が行政指導指針の公表と義務の区別を求めた通知を解説

消防署の指導と法令上の義務の違いを示すアイキャッチ

消防署の担当者から「こうしておいてください」と言われたとき、それが法律上の義務なのか、お願いなのか、迷ったことはありませんか。
実は消防本部が独自に定める「行政指導指針」には、法令の義務と任意の指導が混ざっていることがあります。
消防庁は令和5年に、その指針が全国でどれだけ作られ、公表されているのかを調査しました。
この記事では、その調査結果と通知の中身から、法令上の義務と行政指導をどう見分けるのかを解説します。

消防署に言われたことは、全部守らないといけないんでしょうか。

いいえ、任意の指導も含まれています。

じゃあ、どこまでが義務なのか、どうやって見分けるんですか。

消防庁は指針の公表と義務の区別を全国の消防本部に求めました。

この記事の結論
  • 消防庁は令和5年9月27日の通知で、消防用設備等と危険物施設の技術基準に関する行政指導指針の策定・公表状況を調査した結果を示しました。
  • 令和5年7月1日時点で、消防用設備等の指針(消防法第17条第1項関連)を策定していたのは751団体中256団体(34%)にとどまります。
  • 策定した256団体のうち公表しているのは147団体で、インターネットで公表しているのはそのうち36%です。
  • 通知は、法令上義務となる内容と行政指導の内容を区別することを消防本部に求めています。
  • 行政指導は相手方の任意の協力によって実現されるものですが、政令や条例で定める法令上の義務は別です。

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消防署の指導が義務か任意かを確かめる4ステップの概要図解

なぜ消防庁は行政指導指針の公表状況を調べたのか

庁舎と棒グラフの調査報告書を示すイラスト
この通知は火災や事故の後に出されたものではなく、国の規制改革の方針を受けて出されたものです。
事業者が消防本部の指導内容をあらかじめ知ることができないという課題が背景にあります。
「消防用設備等の技術基準や危険物施設の技術基準に関する行政指導指針の策定及び公表の状況等に関する調査の結果について(通知)」(令和5年9月27日付け消防予第531号・消防危第281号、消防庁予防課長・危険物保安室長発出)によれば、令和5年6月5日付け消防予第314号・消防危第150号により実施した調査の結果が取りまとめられました。また、指針を策定しながら公表していない消防本部は、規制改革実施計画(令和5年6月16日閣議決定)で令和5年度中にフォローアップを行うこととされた趣旨を踏まえて、原則として令和5年度中に公表できるように、速やかに公表に向けて取組を進めることとされています。
この通知のきっかけは、事故ではなく規制改革の閣議決定です。
調査の基準日は令和5年7月1日で、全国の消防本部(消防本部を置かない町村を含む)が対象になりました。
指針を作っているのに公表していない消防本部には、令和5年度中の公表に向けた取組が求められました。
通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されており、消防本部への強制ではなく取組を促す性格のものです。
読者にとっては、自分の建物を担当する消防本部の指導の根拠が、公開される方向に動き出したということです。

調査の背景に、国の規制改革の方針があったんですね。

はい。
閣議決定を受けて、公表を進める流れが生まれました。

どの技術基準の行政指導指針が調査の対象になったのか

消火器と警報ベルと危険物タンクを並べたイラスト
対象になったのは、消防用設備等の技術基準と危険物施設の技術基準の2つの分野です。
どちらも、消防本部が独自に運用している指導の目安が調査されました。
通知の冒頭によれば、消防法(昭和23年法律第186号)第10条第4項及び第17条第1項に基づき政令で定める技術基準並びに同法第9条の4第2項及び第17条第2項に基づき市町村条例で定める技術基準に関する行政手続法上の行政指導指針に相当するものは、各消防本部が各団体の行政手続条例等に基づき策定及び公表されるものとされています。
消防法第17条第1項
(略)政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について(略)政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
消防法第17条第2項
市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、(略)条例で、同項の消防用設備等の技術上の基準に関して、当該政令又はこれに基づく命令の規定と異なる規定を設けることができる。
消防法第10条第4項
製造所、貯蔵所及び取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、政令でこれを定める。
対象は、政令や条例が定める技術基準を、現場でどう運用するかという指針です。
消防用設備等は消防法第17条の第1項(政令)と第2項(条例)、危険物施設は第10条第4項(政令)と第9条の4第2項(条例)が根拠です。
政令や条例そのものは法令上の義務ですが、それを消防本部がどう審査し、どう指導するかを書いたものが指針に当たります。
指針の中には、法令が求める内容と、消防本部が望ましいとして求める内容が並んでいるものもあります。
ここが次の落とし穴につながります。

うちの消防本部も、そういう指針を作っているんでしょうか。

調査では、策定は全体の一部にとどまっていました。

調査の結果と通知は何を求めているのか

ウェブページの画面と書類の束を示すイラスト
調査の結果、策定している消防本部は多くなく、公表方法もばらつきがありました。
通知はそこから5つの事項を示しています。
通知の別紙によれば、令和5年7月1日時点で、消防用設備等の技術基準に関する行政指導指針を策定していたのは、法第17条第1項関連が751団体中256団体(34%)、法第17条第2項関連が56団体(7%)とされています。また記の3には、事業者にとって利便性の高いインターネット上で公表することにより、事業者があらかじめ当該指針に沿った対応をとることができるため、行政上特別の支障がない限りインターネット上で公表することとされています。
指針の区分策定団体数(751団体中)策定団体のうち公表公表団体のうちインターネット
消防用設備等(法第17条第1項関連)256団体(34%)147団体(57%)53団体(36%)
消防用設備等(法第17条第2項関連)56団体(7%)34団体(61%)17団体(50%)
危険物施設(法第10条第4項関連)172団体(23%)108団体(63%)26団体(24%)
危険物施設(法第9条の4第2項関連)168団体(22%)86団体(51%)22団体(26%)

※通知の別紙(令和5年7月1日時点)から作成。公表している団体には一部公表の団体を含みます。

公表しているのは策定団体の半分から6割ほどで、インターネットで見られるのはさらに少数です。
消防用設備等(法第17条第1項関連)で見ると、策定した256団体のうち公表は147団体(57%)、そのうちインターネット公表は53団体(36%)でした。
公表の方法は、事務所に備え付けて閲覧に供する方法が最も多く、複数の方法を併用する団体もあります。
通知は公表を促すとともに、法令上義務となる内容と行政指導の内容を区別することも求めています。
なお、令和5年度中の公表状況を確かめるフォローアップ調査は、令和6年2月1日時点で行う予定とされています。

公表されていれば、事前に内容を確かめられるんですね。

はい。
ただしネットで見られる消防本部は半数以下です。

行政指導と法令上の義務を取り違えるとなにが起きるのか

実線の枠の書類と破線の枠の書類を並べたイラスト
指針の中で義務と指導が区別されていないと、読者が判断を誤るおそれがあります。
通知は、その点を名指しで取り上げています。
同通知の記の4によれば、指針を策定している消防本部のうち、法令上義務となる内容と行政指導の内容を区別していない消防本部においては、行政指導は相手方の任意の協力によって実現されるものであり、行政指導が法令上の義務であるとの誤解を招かないよう十分に配慮すべきであることから、法令上義務となる内容と行政指導の内容を区別することが必要であるとされています。
行政手続法第32条第1項
行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、(略)行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
行政手続法第32条第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
落とし穴は、指導を義務と思い込むことと、義務を指導と軽く見ることの両方にあります。
地方公共団体の行政指導には行政手続法の第2章から第6章までは直接適用されませんが(第3条第3項)、通知は第46条の趣旨にのっとった対応を求めています。
一方で、政令や条例が定める技術基準は法令上の義務で、「指導だから」と放置してよいものではありません。
消防用設備等が基準どおりに設置・維持されていなければ、消防長又は消防署長が消防法第17条の4に基づき命令を出すことがあります。
大切なのは、目の前の指導が義務なのか任意なのかを、根拠とセットで確かめることです。

指導だからといって、無視してよいということですか。

いいえ、法令上の義務は別です。
まず内容を切り分けましょう。

消防署から指導を受けたら明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと虫眼鏡と電話の受話器を示すイラスト
通知の趣旨を踏まえると、読者側でもできることがあります。
指導を受けた場面ごとに、確認する順番を整理しておきましょう。
同通知の記の2によれば、指針を公表していない消防本部は、事業者から問合せがあった場合に、個別対応を行うなど適切に対応することとされています。
  • 所轄の消防本部のホームページで、行政指導指針や審査基準に当たるページが公表されていないか探す
  • 指導を受けたら、その場で「これは法令上の義務ですか、行政指導ですか」と担当者に確認する
  • 義務と言われたときは、根拠になる政令・省令・条例の条項を聞いて記録に残す
  • 指導と言われたときも、従うかどうかを判断する前に、目的と代わりの方法がないかを所轄消防署に相談する
明日からは、指導を受けたら「義務か任意か」と「根拠は何か」の2点をセットで確認してください。
指針が公表されていれば、指導を受ける前に内容を確かめておくこともできます。
公表されていないときは、通知が求める個別対応を、問合せで引き出すことができます。
根拠を聞いても分からないときは、口頭だけで済ませず、確認した内容を書面やメモに残しておきましょう。

指導を受けたら、まず何を聞けばいいですか。

「これは義務ですか」と根拠条文を確認しましょう。

よくある質問

Q行政指導指針とはなんですか?
A同一の行政目的のために一定の条件に当たる複数の者へ行政指導をするとき、あらかじめ定めておく指針のことで、行政手続法第36条は定めて公表することを求めています。
Q自分の消防本部が指針を公表しているかはどう調べますか?
A調査では消防用設備等(法第17条第1項関連)で策定は256団体、公表は147団体でした。消防本部ごとに状況が違うので、所轄消防本部のホームページか窓口で確認します。
Q指針に書かれていることは必ず守らなければなりませんか?
A行政指導は相手方の任意の協力で実現されるものです。ただし政令や条例が定める法令上の義務は別なので、義務かどうかを担当者に確かめます。
Qこの通知は消防本部への命令ですか?
A通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されています。令和5年度中の公表状況は、令和6年2月1日時点で調べる予定とされています。

まとめ

✔消防庁は令和5年9月27日の通知で、行政指導指針の策定と公表の状況を調査した結果を示した
✔通知のきっかけは事故ではなく、令和5年6月16日の規制改革実施計画(閣議決定)だった
✔消防用設備等の指針を策定していたのは751団体中256団体(34%)、公表は147団体だった
✔インターネットで公表している団体は少数で、閲覧の主流は事務所備付けだった
✔通知は法令上義務となる内容と行政指導の内容を区別することを求めている
✔行政指導は任意の協力が前提だが、政令や条例が定める法令上の義務は別である
✔指導を受けたら「義務か任意か」と根拠条文を所轄消防署に確認する

指導を受けたら義務か任意かを必ず確認します!

指針の確認や消防署との調整も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防用設備等の技術基準や危険物施設の技術基準に関する行政指導指針の策定及び公表の状況等に関する調査の結果について(通知)(令和5年9月27日 消防予第531号・消防危第281号 消防庁予防課長・危険物保安室長)
  • 消防用設備等の技術基準や危険物施設の技術基準に関する行政指導指針の策定及び公表の状況等に関する調査について(令和5年6月5日付け消防予第314号・消防危第150号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4・第10条・第17条・第17条の4
  • 行政手続法(平成5年法律第88号)第3条・第32条・第36条・第46条
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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