機械室の隅に並んだ、白くて大きなガスボンベ。
あれはハロン消火設備といって、水や泡を使わず気体の薬剤で火を消す設備です。
ハロンはオゾン層を壊す物質として新しい生産が止められましたが、今でも新しく設置される場合があります。
通知が示したのは他の消火設備で対応できない場合に限り設置を認めるという判断の物差しです。
新しく建てる機械室にハロン消火設備を入れたいと業者に相談したら、今は簡単には設置できないと言われました。
もう無理なんでしょうか。
無理ではありません。
クリティカルユースという条件を満たせば今でも新規設置できます。
その条件は、誰がどうやって判断するんですか。
消防庁の通知が判断の手順を示しています。
順番に見ていきましょう。
- ハロン消火設備の新規設置は他の消火設備によることが適当でない場合にのみ認められるのが原則です
- 判断は防火対象物全体でなく消火設備を設置する部分ごとに行います
- まず人が存する部分か否かで区分し、それぞれ別の基準で判断します
- クリティカルユースの当否は新たに設置する場合に判断するもので、既設の設備は対象外です
- 疑義が生じたときはハロンバンク推進協議会のハロン管理委員会に相談できます
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目次
ハロン消火設備の新規設置はなぜ抑制されるようになったのか

何が起きて、どんな方針が示されたのかを確認します。
ハロンはモントリオール議定書でオゾン層を破壊する特定物質に指定され、生産と消費が段階的に規制されたのち、平成6年(1994年)に生産等が全廃されました。
ただし全面禁止ではありません。クリティカルユース、つまり必要不可欠な分野における使用だけは、全廃の対象から外されています。
消防庁はこのクリティカルユースの範囲を明確にするため、平成13年に通知を発し、平成26年にも用途例を見直す改正を行っています。今も現役の判断基準だということです。
つまり新規設置は「原則できない」のではなく、「クリティカルユースに当たるかどうかを判断してから決める」ものだということです。
全部禁止になったわけではなかったんですね。
はい。
必要不可欠な分野かどうかを、これから見ていく基準で確かめます。
どんな場合に新規設置がクリティカルユースとして認められるのか

まず考え方の土台になる3つの原則があります。
1つ目は、ハロンを使えるのは他の消火設備が適当でない場合だけという原則です。
2つ目が実務でつまずきやすい点です。防火対象物全体で一括判断するのではなく、消火設備を設置する部分ごとに必要性を検討します。同じ建物でも部屋によって答えが変わり得るということです。
3つ目は、人命安全を最優先に、人が存する部分か否かをまず区分するという順番です。
自分の建物のどの部分に設置を検討しているのか、まずその部分に人が常時いるかどうかを整理しておくと、この先の判断が早くなります。
建物ごとじゃなくて、部屋ごとに答えが違うんですね。
そのとおりです。
次は、その区分ごとの具体的な判断手順を見ていきます。
判断はどんな手順で進むのか

通知が示す手順を、順番に追っていきます。
人がいる部分は、まず水系の消火設備(水噴霧消火設備・泡消火設備)と比べます。電気火災に不適、水損や汚染の被害が大きい、機器の早期復旧が必要、設置コストが著しく大きいといった事情で水系が適さないと判断されて初めて、ハロンの選択肢が出てきます。
人がいない部分は、比べる相手が一段増えます。水系だけでなくハロン以外のガス系消火設備とも比べたうえで、どちらも適さない場合に限りハロンを選べます。
「人が存する部分」には、不特定の者が出入りするおそれのある部分だけでなく、居室のように特定の者が常時いる部分やおおむね1日2時間以上出入りする部分も含まれます。
自分の建物の該当部分がどちらに区分されるかは、出入りの実態を点検業者や設計士に伝えたうえで一緒に確認するのが確実です。
いきなりハロンありきではなく、まず他の設備で足りないかを確かめるんですね。
はい、その順番です。
水損や電気絶縁性が理由になることが多いです。
実務で見落としやすいのはどこか

どちらも通知にはっきり書かれています。
1つ目は、判断が必要になるのは新規設置のときだけだという点です。既にあるハロン消火設備をこの基準で洗い直す必要はありません。ただし、その部分で大規模な改修が行われる機会には見直しが求められます。
2つ目は、この抑制が法令の義務ではなく行政指導だという点です。消防組織法に基づく助言として発出されたもので、消防同意や設置許可の審査の中で説明・周知が図られる形で運用されています。
「うちは既設だから関係ない」で終わらせず、次の増築や大規模改修の計画段階でこの基準が動き出すことを、設計の早い段階から関係者と共有しておきましょう。
今ある設備をすぐに取り替えろという話ではないんですね。
そうです。
関わってくるのは新規設置と大規模改修のタイミングです。
明日からなにを確認すればよいのか

判断そのものは専門家と一緒に進めるものですが、準備できることはあります。
新規設置や大規模改修を検討している部分について、まず人が常時いるかどうかを整理しましょう。
次に、水系の消火設備(人がいない部分ならハロン以外のガス系消火設備も)で対応できない理由を、水損・電気絶縁性・設置コストといった観点で言語化しておきます。
判断に迷う場合は、ハロンバンク推進協議会のハロン管理委員会に個別に相談できる仕組みが用意されています。
設計士や消防設備士に相談する際は、この記事で見た3つの原則と判断手順を伝えたうえで、自分の建物の該当部分がどちらに区分されるかを一緒に整理してもらいましょう。
まずは検討している部屋に、人が常時いるかどうかを整理してみます。
それが第一歩です。
迷ったら、設計の早い段階で相談してください。
よくある質問
まとめ
人の有無から順番に整理すればいいと分かりました!
まず自分の建物で確かめてみます。
それが一番の近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について(通知)(平成13年5月16日 消防予第155号・消防危第61号)
- 「ハロン消火剤を用いるハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について」の一部改正について(通知)(平成26年11月13日 消防予第466号・消防危第261号)
- 「オゾン層の保護のためのウィーン条約」及び「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





