建物の窓から垂れ下がる筒状の袋を伝って、地上まで滑り降りる「救助袋」を見たことはありますか。
実はこの袋の出口には、内部の骨組みから体を守るための構造が組み込まれています。
かつてその構造が原因で、避難訓練中に負傷者が出る事故が起きました。
この記事では、事故をきっかけに生まれた救助袋の改良と、今の技術基準に引き継がれている中身を解説します。
うちのビルにも救助袋が付いてるんですけど、あの中ってどうなってるんですか。
出口の部分には、実は過去の負傷事故がきっかけで加わった構造があるんですよ。
避難訓練で使う道具なのに、事故が起きたことがあるんですか。
はい、その事故を受けて消防庁がメーカーに改良を指示した経緯があるんです。
- 垂直式救助袋の改良は、大阪市消防局管内の避難訓練中に起きた負傷事故がきっかけでした。
- 降下者がカプセル部の鉄棒の枠に膝を打ちつけたことが事故の直接の原因です。
- 消防庁は鉄棒を布で覆う構造と脱出口の転落防止措置をメーカーに指示しました。
- 今は避難器具の基準(消防庁告示)が緩衝装置と4個以上の取手を義務付けています。
- 古い救助袋が残っていないか、緩衝装置と取手の数を点検で確認することが大切です。
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目次
垂直式救助袋の事故はなぜ通達が出るまでになったのか

消防庁がその経緯を通知した内容を見てみましょう。
救助袋は建物の窓や開口部から筒状の布を垂らし、内部を滑り降りて地上に到着する避難器具です。
出口の部分は「カプセル部」と呼ばれ、当時は形を保つために内側に金属の枠が組み込まれていました。
降りてきた人がその枠に体をぶつければ、けがにつながる構造だったのです。
消防庁はこの事故を受け、救助袋そのものの安全性を見直す指導に乗り出しました。
袋の中に金属の枠が入ってるなんて、ちょっと意外でした。
はい、袋の底の形を保つために必要な部材だったんですが、そこに危険が潜んでいたんです。
カプセル部のどこにどんな危険があったのか

どこにどんな問題があったのかを整理します。
救助袋は垂直または斜めに張って内部を滑り降りる避難器具で、出口付近には降下者の体を受け止める部分があります。
当時はこの部分の強度を保つための鉄棒が、布の外側にそのまま露出する形で組み込まれていました。
消防庁は「改良型でないものは早急に取り替える」よう、既設分も含めた対応をメーカーと消防機関双方に求めました。
つまりこの通知は、新しく作る救助袋だけでなく、すでに設置されているものにも関わる内容だったのです。
すでに設置してあるものまで取り替えの対象になったんですね。
そうなんです、命に関わる避難器具だからこそ既設分にも早急な対応が求められました。
改良型の救助袋はどこをどう変えたのか

改良のポイントは大きく2つです。
まず鉄棒より内側に布を縫い合わせることで、降下者の体が直接金属に触れない構造にしました。
さらに出口部分に緊迫部(絞り)を設け、勢いあまって外へ転落する事故も防ぐようにしています。
このほか通知では、袋の長さ2メートルあたり120キログラムの荷重に耐える強度や、カプセル底部と地面との間隔を計算式で求めることも定めていました。
一つの事故から、構造・強度・設置寸法まで具体的に見直された点が、この通知の特徴です。
布で覆うだけで、そんなに変わるものなんですか。
はい、硬い部分に直接触れなくなるだけで、けがのリスクは大きく下がるんですよ。
この改良は今の基準にどう引き継がれているか

今の技術基準にどう受け継がれているかを見てみましょう。
昭和42年当時はメーカーへの個別の行政指導でしたが、その後の告示で避難器具全体の統一基準として明文化されました。
出口付近に取手が複数あることで、降下者が姿勢を保ちやすくなり、勢いよく硬い部分にぶつかる事故も防ぎやすくなります。
つまり今設置されている垂直式救助袋には、この事故の教訓がそのまま構造として組み込まれているのです。
古い救助袋が更新されないまま残っていれば、この基準を満たしていない可能性があります。
一つの事故がきっかけで、今の基準にまでつながっているんですね。
そうなんです、だからこそ今の救助袋がその基準を満たしているか確認する意味があります。
明日からなにを確認すればよいのか

自分の建物の救助袋で確認しておきたいポイントです。
保護マットなどの緩衝装置があるか、取手が出口の左右に均等に4個以上付いているかがポイントです。
布の縫い目のほつれや、金属部分が布から透けて見えるような劣化も、点検の際にあわせて見ておきたい部分です。
気になる点があれば自分で分解・改造せず、消防設備士や専門業者等に点検を依頼してください。
避難訓練で実際に使う前に確認しておけば、いざというときも安心して降りられます。
今度の点検のとき、出口の取手の数もちゃんと見てもらいます。
それが一番確実です、気になることがあればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
今度の訓練で救助袋を使うとき、取手の数も気にして見てみます。
救助袋のことで気になる点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 垂降式救助袋の安全措置について(昭和42年6月7日 自消丙予発第36号 消防庁予防課長通知)
- 避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第九
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





