消防法施行令第32条は、基準どおりでなくてもよいと認めるための規定です。
ところが現場では、うちも特例にしてもらえるはずだという見込みが先に走ります。
実際の照会を並べてみると、認められた例と認められなかった例ははっきり分かれています。
質疑応答が示したのは代わりに何を用意できるかで結論が変わるという線引きです。
うちは小さな建物で、大声を出せば端まで聞こえます。
それでも非常警報設備を付けなければいけませんか。
その言い分がそのまま通った例があります。
人が叫べば聞こえると判断できる規模の建物という解釈が認められました。
では避難しやすい店舗なら、放送設備も外してもらえますか。
出入口はたくさんあります。
そちらはできないと回答されています。
避難しやすいことと、火災を知らせることは別の話だからです。
認められた例と認められない例を5つ並べて見ていきます。
- 番台から脱衣場及び浴槽を監視できる公衆浴場は非常警報器具を置くことで非常警報設備を省略できるとされました
- 音響装置を省ける小規模な防火対象物とは人が叫べば聞こえると判断できる規模で2ないし3教室程度の学校の校舎や幼稚園の園舎等です
- 物品が多く収容人員が大きく算定される家具店について設置免除はできないと回答されました
- 出入口が多く音声誘導が要らないと思われる店舗でも放送設備の設置を免除することはできないとされました
- 従前の規定により設置されている非常警報設備は当分の間そのまま法令に適合しているものとして扱えます
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目次
番台から見渡せる公衆浴場は非常警報設備を省略できるか

その線に対して、普通の銭湯の実状を持ち出した照会です。
番台から脱衣場及び浴槽を監視することができるような一般的な公衆浴場。この書き出しが特例の入口です。
そのうえで非常警報器具を設置することにより、火災の発生を有効に、かつ、すみやかに報知することができる場合に限って、令第32条の規定を適用し非常警報設備を省略してさしつかえないとされました。
省略とは、何も置かなくてよいという意味ではありません。設備を器具に入れ替えてよい、という許しです。
自分の建物でやることは1つです。番台や受付から、人のいる場所すべてが見えているかを実際に立って確かめてください。見えない死角があるなら、この回答の前提から外れます。
見えていることが先で、器具は後なのですね。
順番が逆だと思っていました。
そのとおりです。
建物の側の条件が満たされて、はじめて器具への入れ替えが認められます。
まずは見通しを確かめてください。
人が叫べば聞こえる規模とはどのくらいの建物か

その小規模とはどのくらいかを、山口県が言葉で確かめにいった照会です。
答は一言です。人が叫べば聞えると判断できる規模の防火対象物という読み方が、そのまま認められました。
照会の中に例が添えてあります。2ないし3教室程度の学校の校舎や幼稚園の園舎等。数字ではなく、目に浮かぶ広さで示されているところが実務的です。
ここで認められているのは音響装置を設けなくてよいという話であって、警報そのものを省いてよいという話ではありません。火災である旨の警報を有効に行なえると認められることが前提に置かれています。
自分の建物でやることは1つです。いちばん奥の部屋に人を立たせて、玄関から声を出してみてください。届かないなら、この例には当てはまりません。
教室2つか3つぶん、という言い方はわかりやすいです。
うちの事務所もそのくらいの広さです。
広さだけで決まるわけではありません。
火災である旨の警報を有効に行なえると認められることが前提です。
実際に声を出して確かめてみてください。
品物が多く収容人員がふくらむ家具店は免除されるか

それでも算定すると収容人員が大きくなる、という現場の言い分です。
回答は一言です。できないとだけ示されました。
店内は物品が多いという事情も、4階建で令別表第1(4)項として算出すれば非常ベルおよび放送設備の設置義務が生じるという結論を変えませんでした。理由までは書かれていませんが、収容人員の算定は決められた方法で行うものだという線が引かれた形です。
先ほどの公衆浴場や小規模な校舎との違いは、代わりに置くものが示されているかどうかです。こちらの照会は、算定が実感と合わないという主張だけで、代わりの手だてを示していません。
自分の建物でやることは1つです。売場が広くて人がまばらだと感じても、まず算定表どおりに収容人員を出してみてください。そのうえで何を代わりに置けるかを考える順番になります。
実際にはそんなに人が入らないのに、と言いたくなります。
それでも通らないのですね。
通りませんでした。
特例を求めるときは、代わりに置くものを一緒に示してください。
まずは算定表どおりに数えるところからです。
出入口が多く避難しやすい店舗は放送設備を免除できるか

案内放送をしなくても逃げられるはずだ、という佐賀県からの照会です。
照会の側は、避難に有利な材料をひととおり並べています。出入口は避難上有効な道路及び空地に面して北面と東面に各2か所、南面に1か所。ワンフロア式で、自動火災報知設備と屋内消火栓も基準どおりに入っている。
それでも回答は、設問の場合は放送設備の設置を免除することはできないでした。
出口が近いことは避難の話です。放送設備が担っているのは、火が出たことを知らせて逃げ始めさせる役目のほうで、そこが空いたままになります。理由までは書かれていませんが、2つの役目が別々のものとして扱われた結果と読めます。
自分の建物でやることは1つです。避難のしやすさを理由に設備を減らしたくなったら、火災を知らせる役目を何が引き受けるのかを先に書き出してください。
自動火災報知設備が入っていても駄目なのですか。
それなら知らせる役目はあると思っていました。
この設問では認められませんでした。
免除の理由に挙げられたのは避難のしやすさだけだったためです。
知らせる役目の代わりを先に用意してください。
昔の基準で設置した非常警報設備は付け替えが必要か

すでに指導して付けさせたものをどうするか、という照会です。
従前の規定により設置されている非常警報設備については、当分の間令第32条の規定を適用し、法令に適合しているものとして取り扱つてさしつかえないとされました。
ここでの令第32条は、免除の道具ではなく、既にあるものを認めるための道具として使われています。同じ条文でも向きが違うところが読みどころです。
ただし当分の間という言葉が付いています。恒久的な免除ではないため、更新や改修の機会には新しい基準に寄せていく前提と読むのが素直です。
自分の建物でやることは1つです。設置年と、そのとき従った基準を維持台帳で確認してください。年式がわかっていれば、指摘を受けたときの説明が一度で済みます。
つまり、同じ第32条でも免除と追認の両方に使われているのですね。
古い設備をすぐ捨てなくてよいのは助かります。
そのとおりです。
ただし当分の間という条件が付いています。
設置年を台帳で確かめておいてください。
よくある質問
まとめ
代わりに何を置けるか、を先に考えればよいのですね。
これなら消防署にも話が持っていけます。
見通し、声の届く広さ、代わりに置くもの。
この3つがそろってはじめて特例の話になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 非常警報設備の設置について(昭和45年11月19日 消防予第226号 予防課長から千葉県あて回答)
- 消防用設備等の設置運用基準について(昭和46年5月31日 消防予第88号 予防課長から山口県あて回答)
- 消防法施行令第32条の適用の可否(昭和48年10月23日 消防予第140号 消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 従前の規定により設置されている非常警報設備の取扱いは(昭和48年10月23日 消防予第140号 消防安第42号 予防課長・安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 音声誘導を行わなくても避難が容易であると思われる防火対象物の場合、放送設備の免除は可能か(昭和49年4月2日 消防安第34号 安全救急課長から佐賀県あて回答)
- 消防法施行令第32条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和45年から昭和49年当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





