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避難器具は現場の工夫をどこまで認めるのか|道路をまたぐ避難橋から一動作の緩降機まで五つの質疑応答を現行の条文と照らして解説

避難器具は現場の工夫をどこまで認めるのか

避難器具は、令で決まった形を敷地にそのまま置けばよいとは限りません。
道路を挟んだ隣のビルへ渡す橋、建物の途中階までしか届かない連絡通路、階段の代わりの傾斜路、折りたたんだままの緩降機、ハッチに格納されたはしご。
消防庁は、こうした現場ごとの事情を一つずつ照会に答える形で判断してきました。
この記事では、そのうち五つの質疑応答を選び、現行の消防法施行令第25条・第32条・第36条の2などと照らして読みます。

うちの建物、道路を挟んだ隣のビルに避難橋を架けたいという計画が出ています。
令に書いてある形そのままじゃないと、やっぱり無理なんでしょうか。

条件付きで認められた実例があります。
五つの質疑応答で、どこまでが現場の工夫として認められたのかを見ていきましょう。

傾斜路や緩降機の収納方法まで判断が分かれたものもあるんですね。
今の条文とは、どうつながるんでしょうか。

一つずつ確かめます。
現行の条文に当てはめて読みましょう。

この記事の結論
  • 道路をまたぐ避難橋は、接続部付近の開口部を四平方メートル以内とし防火戸を設けることを条件に認められました
  • 連絡橋がある建物は、途中階までの降下でも屋外避難階段へ安全につなげられれば令第32条で足りるとされました
  • 階段に代わる傾斜路は、建築基準法施行令第26条の基準を満たせば階段とみなして避難器具の設置を免除できます
  • 緩降機はアームを折りたたんだ収納姿勢のままでも一動作で使える基準に適合すると認められました
  • ハッチ用つり下げはしごの設置工事は消防設備士の独占業務にあたり、着工届の対象になります

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避難器具は現場の工夫をどこまで認めるのかの図解

避難橋は道路をまたいでもよいのか

道路を挟んだ二つの建物を結ぶ避難橋と接続部の開口部の図
百貨店の本館と別館が、公道を挟んで向かい合っていることがあります。
そこへ避難橋を架けたいという計画が、実際に消防庁へ照会されました。
問(要旨) 本館(耐火造7階建、百貨店)と別館(耐火造6階建、事務室等)の間には、本館3階、別館4階及び本館屋上、別館屋上に、市道を隔てて同一垂直線上に、道路上空に設ける通路がすでに設置されている。避難器具として救助袋は設置されている。これとは別に、本館4階と別館5階を避難橋(幅1.8メートル、長さ11メートル)によって固定連結し、有事の際、避難に利用しようとするものである。「道路の上空に設ける通路の取扱い等について」(昭和32年7月15日付け建設省発住第37号、国消発第86号、警察庁乙備発第14号通達)等に照らして疑義があるので、避難橋設置に係る基準等を含めて御検討いただきたい。
答 設問の場合、その設置を認めてさしつかえない。ただし、当該避難橋が接続される部分からそれぞれ3メートル以内の外壁の部分に開口部を有する場合は、当該開口部の大きさを4平方メートル以内とし、かつ、甲種防火戸又は乙種防火戸が設けられていること。(昭和54年6月7日 消防予第111号 消防庁予防救急課長から和歌山県総務部長あて回答)
道路の上を渡る橋でも、条件付きで認められました。
令第25条第2項第1号の表は、避難橋を階ごとに適応する避難器具の一つとして挙げています。公道の上空でも、避難橋そのものを設けること自体は妨げられていません。
回答が付けた条件は、橋の接続部に火が回り込む隙を作らないことです。近くの開口部を小さくし、防火戸で区切ることで、避難橋が使えなくなる事態を防いでいます。
現行の消防法施行規則第27条第4項は、避難橋について、防火対象物の柱・床・はりなど構造上堅固な部分に堅固に取り付けることを定めていますが、接続部付近の開口部の大きさまでは定めていません。
この昭和54年の条件は、個別の計画に対して示された特例の内容として読みます。

道路の上を渡る橋でも、開口部さえ絞れば認められるんですね。

はい。
接続部の防火戸が、橋そのものを守る形になっています。

連絡橋がある建物は何階まで降りればよいのか

四階建ての建物の連絡橋が途中階で屋外避難階段につながる図
避難器具は、本来は設置階から避難階まで降りられて初めて役に立ちます。
それでも、建物の構造によっては例外が認められたことがあります。
問(要旨) 下図の防火対象物は、3階までは避難器具の設置は必要ないが、4階に設置が必要となる場合、避難器具は4階から3階までのもので足りるか。(本館・別館の間に、既設の連絡橋が3階の位置で設けられている。)
答 本来、避難器具は設置階から避難階まで避難できるように設置すべきである。設問の場合、避難器具が設けられる3階部分の面積が避難を円滑に行う有効な広さを有し、かつ、当該場所から屋外避難階段を利用して避難することができる場合は、令第32条の規定を適用し、避難器具を3階まで降下できるように設置すれば足りるものとしてさしつかえない。(昭和55年3月12日 消防予第37号「5」)
地上まで降りなくても、安全な中継点があれば足りました。
令第25条第1項柱書は、避難器具を設ける階から避難階及び11階以上の階を除くと定めていますが、何階まで降下させるかの細目までは書いていません。
回答が条件にしたのは、3階部分に避難を円滑に行う有効な広さがあることと、そこから屋外避難階段へ安全に抜けられることの二つです。
どちらも欠けていれば、この取り扱いは使えません。建物ごとに連絡橋の位置と先の階段の構造を確かめる必要があります。
現行の令第32条は、消防長又は消防署長が位置・構造・設備の状況から判断して基準によらないことを認める規定で、この回答もその枠組みで示された特例です。

連絡橋があれば、それだけでもう地上まで要らないってことですか。

いいえ、そこまでは言えません。
広さと先の階段、両方を満たして初めて成り立ちます。

傾斜路は避難器具の代わりになるのか

階段の代わりに設けた傾斜路と交差線を引いた階段アイコンの図
階段の代わりに傾斜路を設けた建物では、避難器具の扱いそのものが変わります。
別表第一の用途によって、二度にわたって同じ結論が確かめられました。
問(要旨) 消防法施行令別表第一(5)項及び(6)項の防火対象物に、建築基準法施行令第26条に規定されている階段に代わる傾斜路を設置した場合は、階段とみなし避難器具の設置を免除して差し支えないか。(平成4年5月22日 消防予第108号「5」。同年12月17日 消防予第249号「7」では、別表第一(6)項ロの防火対象物についても同じ照会がなされている。)
答 設問の場合、建築基準法施行令第26条に規定されている一定の基準(傾斜路の勾配、仕上げ、幅、踊場等の基準)を満たした階段に代わる傾斜路を設置した場合は、消防法施行令第32条の規定を適用し、階段とみなして避難器具の設置を免除して差し支えない。
基準を満たした傾斜路は、階段そのものとして扱われました。
建築基準法施行令第26条は、階段に代わる傾斜路について勾配は8分の1を超えないこと、表面は粗面かすべりにくい材料で仕上げることを定めています。この基準を満たすかどうかが、分かれ目です。
満たしていれば、傾斜路は階段として数えられ、その階に避難器具を別に設ける必要がなくなります。満たしていなければ、この取り扱いは使えません。
(5)項・(6)項イに続いて(6)項ロでも同じ結論が示されており、用途を問わず同じ基準で判断されることがわかります。
現行の建築基準法施行令第26条は、当時と条文の内容が変わっていません。

バリアフリーで付けたスロープが、避難器具の免除にもつながるんですね。

勾配と仕上げの基準を満たしていれば、ですね。
一度、建基令の数値で確認してみてください。

緩降機は収納した状態のままでよいのか

アームを折りたたんで壁の収納棚に収めた緩降機の図
緩降機は、使うときだけ組み立てるものだと思われがちです。
折りたたんで室内にしまっておく設置方法が、基準に合うかどうかが問われました。
問3 緩降機のアームを折りたたんで室内に入れておく等、常時、容易かつ確実に使用できる状態の一動作前の状態で避難器具を設置した場合、規則第27条第1項第1号ハに適合するものとして取り扱ってよいか。(平成15年9月9日 消防予第232号。改正省令による「一動作で使用できる避難器具の取扱いについて」に関連する照会。)
答 お見込みのとおり。
折りたたんだ収納姿勢のままでも、基準を満たすと認められました。
消防法施行規則第27条第1項第1号ハは、避難器具のうち特定一階段等防火対象物に設けるものについて、一動作(開口部を開口する動作及び保安装置を解除する動作を除く)で容易かつ確実に使用できるものであることを求めています。
アームを折りたたんで室内に収めた状態は、使うときに組み立てる動作を増やしているように見えますが、回答は開口部を開けて保安装置を外すだけで使える限り、この一動作の基準に含まれるとしました。
日常はコンパクトに収め、いざというときすぐ使える状態を保つという、設置側の工夫が認められた形です。
現行の規則第27条第1項第1号もハの文言は変わっていません。

しまっておいても一動作のうちに入るなら、見た目をすっきりさせられますね。

そのとおりです。
開口部を開けて保安装置を外すところまでが一動作という考え方です。

ハッチのはしごも資格者の工事が必要なのか

床のハッチから下りる金属製避難はしごと工具アイコンの図
避難器具用ハッチに格納されたはしごは、普段は床にはまっているだけに見えます。
その取り付け工事が誰の仕事かが、改めて整理されました。
問2 避難器具用ハッチに格納した金属製避難はしご(以下「ハッチ用つり下げはしご」という。)は、消防法施行令第36条の2第1項第11号(消防設備士でなければ行ってはならない工事又は整備)の「金属製避難はしご(固定式のものに限る。)」に該当し、着工届を提出する必要があるか。(平成25年3月18日 事務連絡)
答 お見込みのとおり。ハッチ用つり下げはしごは、建築物に固定して設置されるものであり、かつ、金属製避難はしごを取り付ける避難器具用ハッチ(取付金具を含むもの)を建築物に固定する工事が適正に行われる必要があることから、消防設備士が行わなければならない工事に該当するものである。
ハッチごと建物に固定する工事だから、資格者の仕事になります。
令第36条の2第1項第11号は、金属製避難はしご(固定式のものに限る)の設置工事を消防設備士の独占業務としています。はしご本体だけでなく、はしごを受け止めるハッチや取付金具の固定も、この工事に含まれます。
取付け部分に不備があれば事故につながるため、知識と技能を持つ消防設備士が行うことで安全性を確保する、という趣旨が回答で示されています。
普段は床に収まっているだけに見えても、設置や交換のときは無資格の業者に任せられません。
現行の令第36条の2第1項第11号も文言は変わっていません。

床にはめ込んであるだけだから、金具の交換くらいなら自前でもいいのかと思っていました。

ハッチの固定まで含めて、消防設備士の仕事です。
着工届も忘れずに出しましょう。

よくある質問

Q避難橋は何階に設けられる器具ですか?
A令第25条第2項第1号の表は、防火対象物の区分と階ごとに適応する避難器具を定めており、避難橋はその一つとして挙げられています。設ける階は、建物の用途と階数に応じて表で確かめます。
Q避難器具の設置個数は減らせますか?
A令第25条第2項第1号ただし書は、防火対象物の位置・構造・設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより設置個数を減らし、又は設けないことができるとしています。細目は消防法施行規則第26条で確かめます。
Q令第32条の特例は誰が判断するのですか?
A令第32条は、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置・構造・設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最小限度に止められると認めるときに適用されます。個別の適用は所轄の消防機関に確かめます。
Q昭和や平成の回答は、今もそのまま使えますか?
A回答は発出当時のもので、条番号や防火戸の区分などが変わった部分があります。現行の令第25条・第32条・第36条の2と、所轄の消防機関で確認します。

まとめ

✔道路をまたぐ避難橋は、接続部の開口部を小さく区切ることを条件に認められました
✔連絡橋がある建物は、途中階から屋外避難階段へ抜けられれば足りるとされました
✔階段に代わる傾斜路は、建築基準法施行令第26条の基準を満たせば階段とみなされます
✔緩降機は、折りたたんだ収納姿勢のままでも一動作の基準に適合すると認められました
✔ハッチ用つり下げはしごの工事は消防設備士の独占業務にあたります
✔いずれも令第32条の特例として個別に認められた取り扱いです
✔個別の適用は所轄の消防機関に確認します

うちの避難橋や緩降機の計画も、今の条文と照らして確かめてみます!

質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第25条・第32条・第36条の2
  • 消防法施行規則第27条
  • 建築基準法施行令第26条
  • 道路の上空に設ける避難橋の取扱いについての回答(昭和54年6月7日 消防予第111号 消防庁予防救急課長から和歌山県総務部長あて回答)
  • 避難器具の設置についての回答(昭和55年3月12日 消防予第37号「5」)
  • 消防法施行令別表第一(5)項及び(6)項の防火対象物にスロープ(傾斜路)を設けた場合の避難器具の設置の免除についての回答(平成4年5月22日 消防予第108号「5」、同年12月17日 消防予第249号「7」)
  • 一動作で使用できる避難器具の取扱いについての回答(平成15年9月9日 消防予第232号)
  • 避難器具用ハッチに格納した金属製避難はしごの工事区分についての回答(平成25年3月18日 事務連絡)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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