危険物施設のとなりに高圧ガス施設がある。
あるいは同じ敷地の中に、危険物のタンクと高圧ガスのタンクが並んでいる。
この場合に保安距離をとる必要があるのかは、昭和37年から38年にかけての質疑応答で整理されています。
この記事では高圧ガス施設との保安距離の考え方を消防庁の質疑応答に沿ってまとめます。
高圧ガスのタンクが同じ敷地の中にある場合も、距離は必要でしょうか。
それが要るのです。
回答は敷地の内外にかかわらず原則として所要の距離を必要とするとしています。
製造の工程でつながっている場合は、どうなるのでしょうか。
そこに例外が置かれています。
不可分の工程にある場合は所要の距離をとらないことができるとされました。
この記事でまとめて解説します!
- 製造所等と高圧ガス製造施設等との距離は敷地の内外にかかわらず、原則として所要の距離を必要とする
- 同一敷地内にある場合でも当該距離をとることは除外されない
- 高圧ガス施設と製造所等とが不可分の工程にある場合は所要の距離をとらないことができる
- 周囲の地形や取扱いの実態等から政令第23条の規定を適用しうる場合も所要の距離をとらないことができる
- 隣地の危険物施設からの保有距離不足をもって建築確認を不同意とすることはできない
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目次
高圧ガス製造施設との距離は敷地の内外にかかわらず必要になる

昭和38年10月3日付け自消丙予発第62号は、長野県からの照会に答えたものです。
危険物の規制に関する政令第9条第1号ニの規定の運用について問われました。
照会には、ある石油会社から提出された陳情書が添えられていました。
プロパン及びブタン類は、他の種類の高圧ガスと異なり、石油製品の一種であり、石油類の精製過程においてこれと不可分の工程を経て抽出されるものであるという主張です。
製造所等と高圧ガス製造施設等との距離については、敷地の内外にかかわらず、原則として所要の距離を必要とするです。
自分の敷地の中だから対象外、という考え方は採られていません。
敷地の線は関係ありません。
敷地の内外を問わず、距離が要るのですね。
原則として必要とされています。
敷地内の配置図で、距離を確かめてください。
同一敷地内にある場合も距離をとることは除外されない

同じ趣旨の回答が、その前年にも出ています。
昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、北海道からの照会に答えたものです。
問いは高圧ガス製造施設等から20メートルの保安距離をとらなければならない製造所等が、高圧ガス製造施設等と同一敷地内にある場合、当該距離をとることは除外されるかというものでした。
あわせてロ、ハ、ホ、へについても同様であるとされ、政令第9条第1号の他の号にも同じ考え方が及ぶことが示されています。
除外される場合として名指しされているのは不可分の工程にある場合だけです。
同一敷地内であることそれ自体は、距離を免れる理由になりません。
同じ敷地でも、除外されないのですね。
扱いは変わりません。
増設の計画があるときは、距離から検討してください。
不可分の工程にある場合は所要の距離をとらないことができる

では不可分の工程とはどういう場合か。
先ほどの昭和38年の回答が、ただし書として整理しています。
例外は二つ並べられています。
一つめが不可分の工程、二つめが政令第23条を適用しうる場合です。
陳情書が述べていたのは、まさに一つめにあたる主張でした。
石油類の精製過程で不可分の工程を経て抽出されるのだから、切り離して離すことはできないという理屈です。
工程がつながる場合です。
不可分の工程なら、例外があるのですね。
距離をとらないことができます。
工程のつながりを説明できる資料を用意してください。
状況から判断して政令第23条を適用しうる場合も距離をとらないことができる

二つめの例外である政令第23条は、基準の特例を定めた規定です。
判断の材料として回答が挙げているのは危険物及び高圧ガスの種類、周囲の地形、取扱いの実態等の状況でした。
この点について、より具体的に答えた回答があります。
昭和37年12月20日付け自消丙予発第143号は、川崎市消防局長からの照会に答えたものです。
回答は設問の場合、防火上安全と判断できるときは、危険物の規制に関する政令第23条の規定を適用して差し支えないです。
距離が足りないときに、防爆壁のような設備で補う道があることが示されています。
判断の基準は防火上安全と判断できるときです。
設備で補える場合があります。
状況によっては、特例が使える場合もあるのですね。
種類や地形などで判断されます。
個別の事情は、図面と一緒に相談してください。
隣地に高圧ガス施設ができると危険物施設の設置が制限される

川崎市からの照会は、実際に起きた事態を背景にしています。
所定の保有空地を確保している危険物取扱所の隣地で、敷地境界線から約12メートルの位置に高圧ガス施設が建設中であるという状況でした。
回答はお見込みのとおりでした。
先に高圧ガス施設ができてしまえば、あとから危険物施設を建てようとする側がその範囲を避けなければなりません。
自分の土地であっても使えない範囲が生じるということです。
ただし、これを建築確認の場面で押し返すことはできないとされました。
回答は設問のような条件をもつて不同意とすることはできないです。
保安距離の問題は、建築確認の同意で処理する筋のものではないという整理になります。
確認では止められません。
隣地の計画で、こちらが制限を受けることもあるのですね。
早めの確認が要ります。
周辺の開発の情報を、定期的に集めておきましょう。
よくある質問
まとめ
- 製造所等と高圧ガス製造施設等との距離は敷地の内外にかかわらず原則として所要の距離を必要とする
- 高圧ガス製造施設等と同一敷地内にある場合も当該距離をとることは除外されない
- 政令第9条第1号のロやハやホやヘについても同様の考え方が及ぶ
- 高圧ガス施設と製造所等とが不可分の工程にある場合は所要の距離をとらないことができる
- 危険物及び高圧ガスの種類や周囲の地形や取扱いの実態等から政令第23条を適用しうる場合も同様である
- 防火上安全と判断できるときは政令第23条の規定を適用して差し支えない
- 隣地に高圧ガス施設が許可されると自己所有地であってもその区域内に危険物施設を設置できなくなる
- 隣地の危険物施設からの保有距離不足をもって建築確認を不同意とすることはできない
隣に先に建てられると、こちらが下がることになるのですね。
すっきりしました。
だからこそ早めの確認が要ります。
周辺の計画をふまえた配置の検討も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第12条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第23条 e-Gov法令検索
- 製造所等と同一敷地内にある高圧ガス製造施設との保安距離について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から北海道総務部長あて回答)
- 危険物取扱所と隣地に設置される高圧ガス施設との保安距離の規制について(昭和37年12月20日付け自消丙予発第143号 予防課長から川崎市消防局長あて回答)
- 屋外タンク貯蔵所と高圧ガス施設との保有距離について(昭和38年10月3日付け自消丙予発第62号 予防課長から長野県総務部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




