製造所のまわりに確保しなければならない保有空地。
その土地が自分のものでない場合、どこまでの権利があれば認められるのでしょうか。
借りればよいのか、契約だけで足りるのか、期限が来たらどうなるのか。
この記事では保有空地に必要な権利の内容を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
隣の空地は自社の土地ではありません。
借地権も取れない場合は難しいでしょうか。
それだけでは決まりません。
回答は法律上空地状態の継続が担保されれば足りるとしています。
契約書さえ交わしておけばよいのでしょうか。
期限が切れたらどうなりますか。
そこが要点です。
回答は製造所等が存続する限り空地状態が存続するよう契約条項中において措置すべきであるとしています。
この記事でまとめて解説します!
- 政令第9条第1項第1号の当該市町村長等が定めた距離は規則で定める必要はない
- 空地につき所有権又は借地権を取得できない場合は法律上空地状態の継続が担保されれば足りる
- 保有空地を含めた土地を賃貸借契約して施設を建設した場合も保有空地の部分に借地権は及ぶ
- 空地状態の存続を内容とする債権を有しているにすぎない場合は当該空地につき借地法の適用はない
- 契約条項には製造所等が存続する限り空地状態が存続するよう措置すべきである
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目次
市町村長等が定めた距離は規則で定める必要はない

まず距離そのものの定め方についてです。
昭和35年2月3日付け国消乙予発第6号は、京都市消防長からの照会に答えたものです。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号には当該市町村長等が定めた距離という表現があります。
この距離を市町村規則で規定しておかなければならないかが問われました。
あらかじめ規則という形で一律に決めておく必要はなく、個別の案件ごとに市町村長等が判断して定めればよいという整理です。
規則化は必須ではありません。
距離をあらかじめ規則で定める必要はないのですね。
個別に定められます。
該当しそうな施設は、所轄に確認しておいてください。
所有権も借地権も取れない場合は契約で空地状態を担保する

ここからが本題です。
昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、鳥取県からの六つの照会にまとめて答えたものです。
一つめは保有空地に自己の所有権、地上権又は借地権が及ばない場合は、いかなる権利がこれに代替できるかという問いでした。
求められているのは土地に対する権利の種類ではありません。
そこに建築物その他の工作物が建たない状態が法律上続くことが担保できていればよい、という考え方です。
具体例として挙げられているのが、空地の所有者等との間で工作物を設置しない旨の契約を結ぶ方法です。
不作為の約束で足ります。
権利の種類ではなく、状態が続くかで見るのですね。
担保できれば足ります。
契約の形は、条項の中身で判断してください。
土地全体を借りて施設を建てた場合は空地部分にも借地権が及ぶ

二つめと三つめの問いは、賃貸借契約と借地権の関係についてです。
いずれも回答はお見込みのとおりでした。
三つめは保有空地のみを所有者と賃貸借契約した場合に、借地権が及ぶかという問いです。
施設を建てるために土地全体を借りたのであれば、そのうち建物が建っていない保有空地の部分にも借地権が及びます。
また空地だけを借りた場合も同様とされました。
あわせて四つめでは空地が田畑又は畑地等である場合、所有者又は永小作権者の承諾を得たときは、借地権の及ぶ保有空地とみなされるかとも問われており、これもお見込みのとおりとされています。
土地全体を借りていれば、空地の部分にも及ぶのですね。
借地権が及びます。
賃貸借の範囲を、図面で明確にしておきましょう。
空地状態の存続を求める債権だけなら借地法の適用はない

五つめの問いは、単なる契約で足りるとした場合に、その契約内容はどの程度まで必要かというものでした。
回答はまず、この場合の法律関係を整理しています。
ここが実務上いちばん注意すべき点です。
土地を使う権利ではなく建てないでほしいという約束を持っているだけの状態なので、借地法による保護は受けられません。
借地法が適用されないということは、契約の更新が法律によって守られないということです。
更新は自動ではありません。
約束だけでは、借地法の保護がないのですね。
債権にとどまります。
だからこそ条項の作り込みが要ります。
契約には施設が存続する限り空地が続く条項を置く

借地法の保護がないのであれば、契約そのものでそれを補うほかありません。
回答はその点についても具体的に述べています。
示されている具体例が期限到来時における一方的更新請求条項です。
こちらから更新を求めれば相手の同意なしに契約が続く、という形の条項を置いておくということです。
照会の六つめは契約に当たつては、期限が必要であるが、その期限到来の際の取扱いとその確認方法についてというもので、回答は5により承知されたいとされています。
保有空地は、施設が存在する限り確保し続けなければならないものです。
土地の権利が自分にない場合、その永続性を支えるのは契約の書きぶりだけになります。
条項の作り込みが要です。
施設が続く限り空地が続く条項を置くのですね。
更新の請求の条項が例として示されています。
契約書の案を、専門家にも確認してもらってください。
よくある質問
まとめ
- 政令第9条第1項第1号の当該市町村長等が定めた距離は市町村規則で定める必要はない
- 保有空地に所有権や地上権や借地権が及ばない場合でも法律上空地状態の継続が担保されれば足りる
- その方法として空地の所有者等と工作物を設置しない旨の契約を締結することが挙げられている
- 保有空地を含めた土地を賃貸借契約して施設を建設した場合は保有空地の部分にも借地権が及ぶ
- 保有空地のみを所有者と賃貸借契約した場合にも借地権は及ぶ
- 空地が田畑又は畑地等の場合は所有者又は永小作権者の承諾を得たときに借地権の及ぶ保有空地とみなされる
- 空地状態の存続を内容とする債権を有しているにすぎない場合は当該空地につき借地法の適用はない
- 契約の期限や更新等は製造所等が存続する限り空地状態が存続するよう契約条項中で措置すべきである
土地を借りることより、契約の中身を詰めるほうが大事なのですね。
すっきりしました。
どちらも大事です。
保有空地の確保の仕方についても、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条 e-Gov法令検索
- 市町村長等が定める保有距離とは(昭和35年2月3日付け国消乙予発第6号 予防課長から京都市消防長あて回答)
- 保有空地に対する権利の内容について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から鳥取県総務部長あて回答)
- 宿直室の取り扱いについて(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から栃木県足利市消防長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




