BLOG

移動タンク貯蔵所に危険物と水を一緒に積めるか|減圧吸引の可否と小型タンクローリーの扱い

移動タンク貯蔵所に危険物と水を一緒に積めるかを解説するアイキャッチ画像

車両にタンクを固定すれば移動タンク貯蔵所になる。そう思われがちですが、中身にも条件があります
間仕切りで分けて片方に水を積む、タンク内を真空にして吸い上げる、といった工夫は認められるのか。
また、指定数量に満たない小さなタンクローリーはどう扱われるのか。
この記事では3つの通達をまとめて並べます

タンクを間仕切って、片側に危険物、片側に水を積みたいのですが。

まったく同じ申請が照会されています。
回答は、危険物のみを貯蔵するものを移動タンク貯蔵所とするよう指導されたい、というものでした。

吸い上げるためにタンク内を真空にするのは、どうでしょうか。

そちらも防災上適当でないとされました。
ただし代わりの形が示されているので、そこを読むと道が見えます。

この記事の結論
  • 車両に固定したタンクにおいて危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいとされています
  • タンク内部の圧力を減じて危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるため防災上適当でないとされています
  • 圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当とされています
  • 1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行われる場合、その取扱い場所は一般取扱所として規制すべきとされています
  • 指定数量未満の危険物を貯蔵する移動タンクは、水圧検査を受ける義務はないものの、水圧試験を行うよう指導することが望ましいとされています

危険物と水を間仕切って積めるか

間仕切板で分けたタンクの片側に危険物もう片側に水を積んだ断面のイメージ
昭和39年4月24日付けの自消丙予発第33号は、輸出用自動車の船積み出荷に伴う特殊な移動タンク貯蔵所の照会を扱っています。
自動車の燃料タンク内に残存するガソリン(約0.5リットル)を抜き取り、あわせて自動車を洗浄するためのものです。
照会された車両は、容量1,800リットルのタンクを間仕切板で仕切り、一方にガソリン600リットル、他方に水1,200リットルを貯蔵するものでした。
問1 そもそも、移動タンク貯蔵所は、危険物専用のものであると解せられるが、本件の移動タンク貯蔵所は、容量1,800ℓのタンクを間仕切板をもつて仕切り、一方にガソリン600ℓを、他方に水1,200ℓを貯蔵するものであり、危険物専用のものとは解せられないので、このようなものを許可して差し支えないかどうか。
答1 危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたい
危険物のみを貯蔵するものが対象です
間仕切板で完全に分けていても、同じタンクに水を積む形は移動タンク貯蔵所として扱わない、という整理です。
照会側も自ら「危険物専用のものとは解せられない」と述べており、そこがそのまま結論になりました。

危険物のみを貯蔵するよう指導されたのですね。

混載は認められませんでした。
用途ごとに、車両を分けて計画してください。

タンク内を減圧して吸引してよいか

タンク内部を減圧して危険物を吸い上げ蒸気が放出される様子のイメージ
照会された車両はバキュームポンプ付きで、タンク内を減圧して残存ガソリンを吸い上げる構造でした。
答2 移動タンク貯蔵所の貯蔵タンク内部の圧力を減じて、そのタンク内に危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるので、防災上適当でない。したがつて、設問のように危険物を吸引する必要がある場合は、タンク内部の圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当である
否定の理由が明示されています。
可燃性蒸気を屋外に出すためです
タンク内を真空にすれば、その分の気体をどこかへ排出することになります。中身がガソリンであれば、それは可燃性蒸気です。
そのうえで回答は代わりの形を示しています。圧力を減ずることなく吸引できる設備を設けること。否定で終わらせず、成立する道を残した回答です。

減圧して吸い上げるのは、蒸気を外に出すことになるのですね。

そこが理由です。
代わりの方式が示されているので、そちらを検討してください。

取扱いの場所と一般取扱所との境目

区画された場所を限定して移動タンク貯蔵所の取扱作業を行うイメージ
同じ回答は、作業を行う場所についても2点を示しました。
答3 移動タンク貯蔵所において、設問のような危険物の取扱いを行なう場合は、その場所等を限定して危険物の取扱作業をするよう指導されたい
答4 移動タンク貯蔵所により、1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行なわれる場合、その取扱い場所は、一般取扱所として規制すべきものと解する
定常作業なら一般取扱所になります
照会では、輸出用自動車の船積みが多いときは1日200台以上となることもあり、危険物を指定数量以上取り扱うこととなるが、一般取扱所としては規制されないと解してよいかと尋ねていました。
回答はこれを否定し、定常作業として行われるなら一般取扱所として規制すべきとしています。
1回あたりの量ではなく、1日の合計と作業の常態性で判断されることになります。

定常の作業なら、場所として規制されるのですね。

一般取扱所になります。
作業の頻度と数量を、把握しておきましょう。

小型タンクローリーはどう規制されるか

小型のタンクローリーと通常のタンクローリーを並べて比較したイメージ
昭和40年4月15日付けの自消丙予発第71号は、指定数量に満たない車両固定タンクの扱いを示しています。
問1 指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物を、車両に固定されたタンクにおいて貯蔵し又は取り扱う場合(いわゆる小型タンクローリー)は、火災予防条例準則第46条の規定が当然に適用されるものと解してよいか
答1 お見込みのとおり
指定数量未満であっても規制がなくなるわけではありません。
火災予防条例準則が適用されます
指定数量の5分の1以上であれば、条例の側で受け止める構造になっています。

指定数量に満たなくても、条例が働くのですね。

規制がなくなるわけではありません。
少量でも、扱いを所轄に確かめてください。

水圧検査と安全装置の作動圧

タンクに試験ポンプと圧力計をつなぎ安全装置の作動を確認するイメージ
同じ通達は、水圧検査についても答えています。
答2 指定数量未満の危険物を貯蔵する移動タンクについては、水圧検査を受ける義務はないが、水圧試験を行なうよう指導することが望ましい
義務と指導が書き分けられています。
義務はないが指導が望ましいです
なお、昭和40年6月16日付けの自消丙予発第100号は、ガス用ナフサを貯蔵する移動タンク貯蔵所について、圧力の条件を数値で示しています。
答1及び2 設問のタンクが、摂氏40度における蒸気圧(以下「基礎圧力」という。)の1.5倍の圧力で10分間行なう水圧試験において、もれ、又は変形せず、かつ、当該タンクの安全装置が、基礎圧力の1.1倍以下の圧力で作動する場合、危険物の規制に関する政令第23条の規定を適用して、その使用を認めて差し支えない。なお、設問のタンクについての基礎圧力は、添付資料から計算すれば0.5kg/c㎡となる
摂氏40度における蒸気圧を基礎圧力と定義したうえで、水圧試験は1.5倍で10分間、安全装置は1.1倍以下で作動、という2つの条件を組み合わせています。
照会は、規則が定める作動圧0.2キログラム毎平方センチメートルでは夏期に液温が36度以上になると安全装置が常時作動してしまう、という実務上の困りごとから出たものでした。

義務と指導が書き分けられているのですね。

望ましいとされた事項です。
指導の内容も、記録に残しておきましょう。

よくある質問

Q. 間仕切板で完全に分けても水を積めませんか?
照会された車両は容量1,800リットルのタンクを間仕切板で仕切り、一方にガソリン600リットル、他方に水1,200リットルを貯蔵するものでしたが、回答は危険物のみを貯蔵するものを移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいというものでした。仕切りの有無ではなく、危険物専用であるかどうかで判断されています。
Q. 減圧せずに吸引する方法はありますか?
回答は「タンク内部の圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当である」としています。具体的な機種までは示されていませんが、タンクを真空にする以外の方法で吸い上げる設備であればよいという方向性が示されています。
Q. 1日に指定数量以上を扱えば必ず一般取扱所になりますか?
回答は「1日に指定数量以上の危険物の取扱いが定常作業として行なわれる場合」としています。定常作業であることが要件に含まれており、たまたま1日だけ超えた場合とは書き分けられています。
Q. ガス用ナフサのタンクで基礎圧力はどう決まりますか?
摂氏40度における蒸気圧を基礎圧力といいます。昭和40年6月16日付け自消丙予発第100号では、設問のタンクについての基礎圧力は添付資料から計算すれば0.5キログラム毎平方センチメートルとなるとされています。この値を基準に、水圧試験は1.5倍、安全装置の作動圧は1.1倍以下という条件が設定されます。

まとめ

  • 車両に固定したタンクにおいて危険物のみを貯蔵するものを、移動タンク貯蔵所とするよう指導されたいとされています
  • 間仕切板で仕切って一方に水を積む形は、危険物専用のものとは解せられないとされました
  • タンク内部の圧力を減じて危険物を吸引することは、多量の可燃性蒸気を屋外に放出する危険性があるため防災上適当でないとされています
  • 吸引が必要な場合は、圧力を減ずることなく危険物を吸引することができる設備を設けることが適当とされています
  • 設問のような取扱いを行う場合は、その場所等を限定して取扱作業をするよう指導されたいとされています
  • 1日に指定数量以上の取扱いが定常作業として行われる場合、その取扱い場所は一般取扱所として規制すべきとされています
  • 指定数量の5分の1以上指定数量未満の小型タンクローリーには、火災予防条例準則第46条の規定が適用されます
  • 指定数量未満の移動タンクは水圧検査を受ける義務はないものの、水圧試験を行うよう指導することが望ましいとされています

否定されても、代わりの形が示されているのは助かりますね。
すっきりしました。

否定の理由まで書かれている回答は、代替案を組み立てる材料になります。
㈱防災屋でも設計の見直しからご相談を承っています。

参考・出典

  • 特殊な移動タンク貯蔵所の設置について(昭和39年4月24日 自消丙予発第33号 予防課長から横須賀市消防長あて回答)
  • 小型タンクローリーについて(昭和40年4月15日 自消丙予発第71号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
  • ガス用ナフサを貯蔵する移動タンク貯蔵所について(昭和40年6月16日 自消丙予発第100号 予防課長から愛媛県総務部長あて回答)
  • 危険物の規制に関する政令第15条第2号・第23条/危険物の規制に関する総理府令第19条第2項第1号/火災予防条例準則第46条・第30条・第31条
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動
BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
移動タンク貯蔵所に危険物と水を一緒に積めるかを解説するアイキャッチ画像
車両にタンクを固定すれば移動タンク貯蔵所になる。そう思われがちですが、中身にも条件があります。 間仕切りで分けて片方に水を積む、タンク内を真空にして吸い上げる、といった工夫は認められるのか。 また、指定数量に満たない小さ...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →