移動タンク貯蔵所といえば、密閉された円筒形のタンクを思い浮かべます。
ところが運ぶものが液体でなく塊状の固体で、しかも水に触れると可燃性ガスを出すとなると、話が変わります。
密閉すればガスが溜まる。開放すれば雨が入る。
この矛盾に対して、5つの条件で答えが出されました。
カーバイトを運びたいのですが、密閉するとガスが溜まります。
開放式では認められないでしょうか。
認められた例があります。
5つの条件が箇条書きで示されていて、そのまま設計の与件になります。
ガスが出ることを前提に運ぶという考え方でしょうか。
そのとおりです。
だから測る設備と、追い出す設備と、追い出すためのガスの量まで条件に入っています。
- カーバイトを移送する開放式の移動タンク貯蔵所は、5つの条件に適合すれば設置が認められます
- 移動貯蔵タンクは厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板で作ることとされています
- 貯蔵する危険物に雨水が侵入しない構造とすることが求められます
- 移送中に発生するアセチレンガスの量を常時把握できるガス検知設備の設置が必要です
- 窒素等の不燃性ガスの放射により有効に排除できる設備と、排除するに足る十分な量の窒素等の保有が求められます
▼
目次
板厚3.2ミリメートル以上の鋼板で作る

照会された構造は、ダンプカーに鋼板製上板を設け、密閉式とはせずに金網取付の一部開放とするものでした。
回答は、政令第15条第3号、第4号および第6号から第9号までの規定について政令第23条を適用し、次の各号に適合する場合は設置を認めてさしつかえないとしています。
開放式という特殊な形を認めるにあたっても、本体の強度についての水準は下げていません。
緩和されたのは構造の形式であって、材料の厚さではないという整理です。
板厚にも条件があるのですね。
鋼板の厚さが示されています。
製作の仕様に、そのまま入れてください。
雨水が侵入しない構造とする

開放式にすればガスは溜まりませんが、そのままでは雨が入ります。
照会でも、降雨時は防水シートを被覆するとされていました。
外気とは通じているがガスは溜まらず、しかし雨水は入らない。この2つを同時に満たす構造が求められます。
照会された車型は、荷台が気密でなく外気と通じておりアセチレンガスがたまらない、と説明されていました。
開放でも、雨は入れない構造なのですね。
2つを同時に満たします。
覆いの方法を、現場で確かめてください。
ガス検知設備を設置する

照会された運用では、検知管式で工場積込の窒素ガス置換後に1回、輸送中に1回から2回、到着荷卸前に1回、合計3回から4回測定するとされていました。
輸送範囲は大牟田工場から北九州地区までの5時間から6時間で、1回の輸送量は8トンから10トンです。
なお空気中でのアセチレンガスの爆発限度は2.5パーセント以上とされています。
濃度を測る手段が要るのですね。
手動でも自動でも構いません。
測定の回数を、運行の手順に書いてください。
不燃性ガスの放射により排除できる設備

照会では、50リットル150キログラム毎平方センチメートルの窒素ガスボンベを搭載し、濃度測定によりアセチレンガスが0.5パーセント以内の場合は窒素ガス放出置換を行うとされていました。
参考として示されたアセチレンガス分析結果は、積込後が0.01から0.05パーセント、窒素ガス置換後が0.00パーセント、自然放置3時間後が0.10から0.20パーセント、自然放置6時間後が0.20から0.40パーセントです。
分析条件は摂氏23.5度、湿度85パーセント、通風良とされています。
測ったあとは、押し出す仕組みが要るのですね。
不燃性ガスで置換します。
操作の手順を、運転者に教育してください。
排除するに足る十分な量の窒素等を保有する

5つ目の条件はその点を押さえています。
1から4までが移動貯蔵タンクについての条件であるのに対し、5だけは移動タンク貯蔵所についての条件として書かれています。
設備の話ではなく、運用のために積んでおく物量の話だからです。
自然放置6時間後で0.20から0.40パーセントという分析結果と、輸送時間が5時間から6時間であることを突き合わせれば、必要な量の目安が立てられる構成になっています。
積んでおく量まで条件になっているのですね。
運用のための物量です。
輸送の時間から、必要量を逆算してください。
よくある質問
まとめ
- カーバイトを移送する開放式の移動タンク貯蔵所は、政令第15条第3号、第4号および第6号から第9号までの規定について政令第23条を適用し、5つの条件に適合すれば設置が認められます
- 移動貯蔵タンクは厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板で作ります
- 貯蔵する危険物に雨水が侵入しない構造とします
- 移送中に発生するアセチレンガスの量を常時把握できるよう、手動式または自動式のガス検知設備を設置します
- アセチレンガスを窒素等の不燃性ガスの放射により有効に排除できる設備を設けます
- 移動タンク貯蔵所には、アセチレンガスを排除するに足る十分な量の窒素等を保有します
- 1から4までは移動貯蔵タンクの条件であるのに対し、5は移動タンク貯蔵所の条件として書き分けられています
- 照会の参考資料では、自然放置3時間後で0.10から0.20パーセント、6時間後で0.20から0.40パーセントという分析結果が示されています
測って、追い出して、そのぶんの窒素を積む。
3点で条件になっているのですね。
すっきりしました。
設備だけ揃えても運用が続きません。
輸送時間から必要量を逆算しておくのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 固体危険物の移動タンク貯蔵所について(昭和44年5月16日 消防予第164号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
- 危険物の規制に関する政令第15条第3号・第4号・第6号から第9号まで・第23条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




