特定事業所の沖合3キロメートル、海底パイプでつながった一点係留ブイ。
そこでパイプが破損し、原油が流出しました。
陸から直接行き来できない場所で、特別防災区域の外です。
それでも通報が不要になるわけではありません。
沖合の係留ブイで原油が流出しました。石災法第23条の通報は必要でしょうか。
必ずしも第23条に基づくと解する必要はないが、少なくとも消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要であるとされました。
構内で配送用のトラックが燃えた場合も、事故報告に含まれますか。
含まれるとされています。特定事業所に係る事故はすべてが報告の対象とされているためです。
この記事の結論
- 沖合の一点係留ブイでの原油流出は、必ずしも石災法第23条に基づくと解する必要はないとされました
- ただし少なくとも、消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要であるとされています
- 特別防災区域外でも、特定事業所間を結ぶ配管のうち当該事業所の管理に係る部分で異常現象が発見された場合は通報の義務があります
- 特定事業所に係る事故はすべてが報告の対象とされており、構内における車両火災も含まれます
- 3点セットが出向訓練等をしている間の覚知手段として、防災相互無線・消防無線等の波を受信できる受令機の設置を指導するとされました
▼
目次
沖合の係留ブイでの流出は通報が要るか

ところが照会の現場は、事業所から沖合3キロメートルにある一点係留ブイでした。海底パイプでつながっているだけで、陸から直接行き来できません。
問 特定事業所の沖合3キロメートルに位置し、陸地とは海底パイプにより連絡されていて直接行き来できない一点係留ブイにおいて、パイプが破損し原油が流出する事故が発生したが、このような場合、法第23条に基づく通報は必要となるか。
答 必ずしも法第23条に基づくと解する必要はないが、少なくとも、消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要である。
答えは2段になっています。石災法第23条によらなくてもよいが、通報そのものは要る、という形です。
根拠として示されたのが消防法第36条において準用する同法第24条の通報です。火災を発見した者が消防機関に通報する義務を定めた条文で、それが石油コンビナートの場面にも準用されます。
実務で押さえておきたいのは、どの条文に基づくかで迷って通報が遅れるのが最悪だということです。
この回答は、条文の選択に議論の余地があっても通報義務そのものは動かないと示しています。まず通報する、という順番でよいことになります。
区域外の配管で異常が起きた場合

特定事業所どうしを結ぶ配管は、区域の外を通ることがあります。
問 特別防災区域外ではあるが、特定事業所間を結んでいる配管のうち、当該事業所の管理に係る部分で異常現象が発見された場合、通報の義務があるとみてよいか。
答 お見込みのとおり。
場所が区域の外でも、通報の義務はあるとされました。
条件として問いに書かれているのは、当該事業所の管理に係る部分であることです。誰の管理下にあるかで線が引かれています。
前の項目の一点係留ブイも、区域からも陸からも離れた場所でした。2つを並べると、この法律が距離や区域の内外ではなく、事業所が管理しているかどうかで通報の範囲をとらえていることが見えてきます。
配管が長く伸びている事業所ほど、自社の管理範囲がどこまでかを把握しておく必要があります。
構内の車両火災も事故報告に含まれるか

昭和56年11月19日付けの消防危第160号および消防地第302号により、特定事業所に係る事故はすべてが報告の対象とされています。
問 昭和56年11月19日付け消防危第160号及び消防地第302号において、石油コンビナート等特別防災区域における事故のうち、特定事業所に係る事故すべてが報告の対象とされているが、構内における車両火災も含まれると解してよいか。
答 お見込みのとおり。
危険物に関わらない事故でも、構内で起きたなら報告の対象になります。
配送用のトラックのエンジンから出火した、フォークリフトが燃えたといった事案も含まれることになります。
すべてが報告の対象という文言をそのまま読めばこうなるのですが、現場では危険物施設に関係しないから対象外だろうと判断しがちなところです。
報告の対象を広くとっておくことで、コンビナート全体の事故の傾向が把握できるという趣旨と読めます。
車両が訓練で出払っている間の覚知手段

その間に災害が起きたら、どうやって知るのか。
問 特定事業所の非常通報設備については、既に無線設備(防災相互波)を設置しているところであるが、共同防災組織に備え付けられている3点セットが出向訓練等して、災害が発生した場合の覚知手段について教示願いたい。
答 当該3点セットには、防災相互無線・消防無線等の波を受信できる受令機の設置を指導されたい。
事業所には非常通報設備があります。ただしそれは事業所の中で鳴るものです。
車が出払っていれば、その音は届きません。だから車の側に受信する装置を積んでおく、というのが答えです。
受令機は、防災相互無線や消防無線の波を受信するものです。送信の機能ではなく、受け取れることが求められています。
前の記事で見た、整備で車が抜ける間の代替措置と同じ発想です。資機材が現場を離れている時間をどう埋めるかが、繰り返し問われています。
訓練で航空機が投下や吊り下げをできるか

航空法第81条にはただし書があり、許可を受ければ低空飛行などができます。ところが特別防災区域については、その許可が行われないこととなっています。
問 石油コンビナート等特別防災区域上空においては、航空法第81条ただし書の許可は行われないこととなっているが、防災訓練のために航行する消防機関の航空機が防災資機材等の投下、吊り下げ等を行う場合はどうか。
答 航空法第81条ただし書の許可は行われない。
防災のための訓練であり、飛ぶのは消防機関の航空機です。目的からすれば認められそうに見えます。
それでも許可は行われないとされました。理由は書かれていませんが、区域上空の飛行制限が何のためにあるかを考えれば筋は通ります。
コンビナートの上空で物を投下したり吊り下げたりすれば、落下したときに危険物施設を直撃します。訓練かどうかで危険の大きさは変わりません。
制限の趣旨が、目的の正当性ではなく行為そのものの危険性に向いているという読み方になります。
よくある質問
Q石災法第23条によらないなら通報しなくてよいのですか?
A回答は、必ずしも法第23条に基づくと解する必要はないとしたうえで、少なくとも消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要であるとしています。根拠となる条文が変わるだけで、通報しなくてよいという趣旨ではありません。
Q区域外の設備はすべて通報の対象ですか?
A問いが挙げているのは、特定事業所間を結んでいる配管のうち当該事業所の管理に係る部分です。その範囲について通報の義務があるとみてよいかという問いに、お見込みのとおりと答えています。管理に係る部分であることが前提です。
Q危険物に関係しない火災でも報告するのですか?
A回答は、構内における車両火災も含まれると解してよいかという問いにお見込みのとおりと答えています。特定事業所に係る事故すべてが報告の対象とされているためです。
Q防災訓練でも区域上空を飛べないのですか?
A問いは、防災訓練のために航行する消防機関の航空機が防災資機材等の投下、吊り下げ等を行う場合について尋ねたものです。回答は航空法第81条ただし書の許可は行われないとしています。訓練であることや消防機関の航空機であることを理由に許可されるものではありません。
まとめ
- 沖合3キロメートルの一点係留ブイでの原油流出は、必ずしも石災法第23条に基づくと解する必要はないとされました
- ただし少なくとも消防法第36条において準用する同法第24条の通報は必要です
- 特別防災区域外でも、当該事業所の管理に係る部分で異常現象が発見された場合は通報の義務があります
- 特定事業所に係る事故はすべてが報告の対象とされており、構内における車両火災も含まれます
- 3点セットが出向訓練等をしている間の覚知手段として、防災相互無線・消防無線等の波を受信できる受令機の設置を指導するとされました
- 防災訓練のために航行する消防機関の航空機が投下や吊り下げ等を行う場合でも、航空法第81条ただし書の許可は行われません
区域の内外より、自社が管理しているかどうかで見るんですね。
通報や報告の範囲は、社内の手順書に落としておかないと現場で迷います。㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(災害応急措置関係・共同防災組織関係・その他)
- 石油コンビナート等特別防災区域における事故報告について(昭和56年11月19日 消防危第160号・消防地第302号)
- 石油コンビナート等災害防止法第23条・第28条第5項
- 消防法第24条・第36条
- 航空法第81条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。




