従事命令は公用令書を提示して行うのが原則です。
しかし災害の現場で、書類を用意してから声をかけていては間に合いません。
電話で頼んで、あとから令書を渡すのでは違法になるのか。
回答はそれを適法な措置と認めています。
口頭や電話で従事を命じた場合、実費弁償や損害の補償はできないのでしょうか。
できます。
緊急の場合に口頭や電話や電報等で発令し、事後に公用令書を交付する方法をとるのは適法な措置と考えるとされました。
医師会と結んだ協定で出動をお願いした場合は、どうなるのでしょうか。
法令の規定に基づかない場合は当事者間で解決すべきものと解するとされています。
協定の中で扱いを決めておく必要があります。
- 緊急の場合に口頭や電話や電報等で従事命令を発し、事後に公用令書を交付する方法は適法な措置とされました
- その場合でも実費弁償または損害補償はできます
- 緊急輸送車両は緊急の用務で出動する場合、公安委員会の規制から除外されているのが普通です
- 企業の過失に基づく災害の経費は企業に負担させるべきですが、県または市町村が負担して企業に求償すべきとされました
- 損害補償は非常勤消防団員等公務災害補償条例を一部改正することにより処理して差支えありません
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目次
緊急輸送車両と緊急自動車の関係

災害対策基本法第76条は、災害時に公安委員会が区域や道路を指定して、緊急輸送車両以外の車両の通行を禁止したり制限したりできると定めています。
一方、道路交通法第13条には緊急自動車の規定があります。この2つはどういう関係にあるのか。
車両の種類ではなく、そのときの状態で分けています。
消防車や救急車であっても、普通の状態で走っているなら法的規制を受けます。緊急の用務で出動している場合は別個のものとして扱われ、第76条に基づく公安委員会の規制から除外されているのが普通です。
除外されているのが普通であるという言い方に注意してください。当然に除外されると断言してはいません。実際の規制内容は公安委員会が定めるので、そこで除外されているのが通例だという説明です。
現場の車両運用に引き直すと、緊急走行かどうかの区別がそのまま通行の可否に効いてくるということになります。
緊急の車両と緊急自動車は、別の制度なのですね。
根拠が分かれます。
車両の登録や指定の状況を、確かめておいてください。
公用令書を後から交付してよいか

災害対策基本法第71条の従事命令は、公用令書を提示して実施しなければなりません。
しかし災害時は緊急を要するので、口頭や電話や電報で命じることになる。適法な手続を経ていないから、実費弁償や損害補償ができないのではないか。
また、事後に公用令書を交付することによつて適法な措置となり得るか。
後段 お見込みのとおり。
(理由)緊急の場合、従事命令を口頭、電話、電報等で発令し、事後に公用令書を交付する方法をとるのは適法な措置と考える。
2つの問いに、それぞれ短く答えています。実費弁償または損害補償はできる。事後に公用令書を交付すれば適法な措置となる。
理由に書かれているのが手順そのものです。緊急の場合は口頭や電話や電報等で発令し、事後に公用令書を交付する。この順番でよい。
つまり、書面が先か行為が先かではなく、書面を出すこと自体が省けないという話です。あとからでも交付すれば手続は完成します。
実務でいちばん危ないのは、緊急だったからと言って令書を最後まで出さないことです。それでは記録が残らず、あとから弁償や補償の根拠を示せません。
現場の判断は口頭で先に、書面は必ずあとから。この2つを両方やる前提で様式を用意しておくのが確実です。
順番が入れ替わっても、有効なのですね。
事後に交付する方法です。
令書の様式を、あらかじめ用意しておきましょう。
企業の過失による災害の経費は誰が持つか

企業の過失で交通災害や産業災害が起きた。知事や市町村長等の従事命令または協力要請に基づいて救急医療活動が行われた。
その経費は企業に負担させるべきか、応急措置の範囲内なら県や市町村が負担すべきか。また企業に負担させる場合、直接払わせるのか、いったん市町村が払って求償するのか。
なお、企業に負担させるべきとする場合、直接企業が負担するのか、または市町村が負担して後に企業に求償するのか。(損害補償をする場合は特に問題である。)
後段 県または市町村が負担して企業に求償すべきである。
前段は原則です。過失のある企業が負担すべき。ただし負担能力等も考慮して実情に即応する措置がのぞましい、と含みを持たせています。
後段が手順を決めています。県または市町村が負担して、企業に求償する。
順番が重要です。企業に直接請求させるのではなく、いったん公費で払う。理由は書かれていませんが、医療機関や従事者を待たせないためだと読めます。従事した人が企業と交渉することになれば、応急措置に協力してくれる人はいなくなります。
前の記事で見たとおり、応急措置で私人の土地に工作した費用は第64条第5項では徴収できませんでした。ここでは求償すべきだとされています。
違いは過失の有無です。原因を作った側がいるなら、そこへ請求する道が開かれます。
費用の負担にも、考え方が示されているのですね。
場面ごとに分かれます。
費用の扱いを、事前に整理してください。
協定で出動を頼んだ場合の費用

災害時にはその協定に基づいて出動を要請する。
この場合の実費弁償や損害補償はどうなるのか。
(理由)法令の規定に基づかない場合は、当事者間で解決すべきものと解する。
理由のほうが中身を語っています。法令の規定に基づかない場合は、当事者間で解決すべきものと解する。
従事命令は法令に基づく行為なので、費用の扱いも法令と解釈の側で決まります。協定に基づく出動要請は法令に基づく行為ではないので、その枠には乗りません。決めるのは当事者どうしです。
これは協定が弱いという話ではありません。決め方が違うという話です。
前の記事で見たとおり、法令に基づいて従事させた医療関係者には、実費弁償の義務はないものの日当や旅費等を支出することは差しつかえないとされていました。協定の場合は、そこを協定文の中に書き込んでおく必要があります。
事業所が近隣や取引先と災害時の協力を取り決めるときも同じです。誰が何をするかだけでなく、かかった費用をどちらが持つかまで書いておかないと、あとで揉めます。
協定による場合は、当事者どうしで決めるのですね。
法令に基づかないためです。
協定書に、費用の条項を入れてください。
損害補償は既存の条例を直して使えるか

災害対策基本法第84条は、応急措置の業務に従事した者が死亡し負傷し疾病にかかった場合の損害補償を市町村の条例で定めるとしています。
新しい条例を作るのではなく、既存の非常勤消防団員等公務災害補償条例を一部改正して処理してよいか。
(理由)
1 条例の基準は、災害対策基本法施行令第36条第1項の規定による基準と合致していること。
2 上記条例の対象は、消防団員、水防団員ならびに消防作業および水防作業に従事した者として規定されているが、これに「災害対策基本法に基づく応急措置の業務に従事した者」を追加規定し、その他一部の関連改正を行なうことにより処理することは差支えないものと思われる。
3 条例の名称は、従来の「〇〇市非常勤消防団員等公務災害補償条例」で適当であると思われる。
新しい条例を作らずに済むという回答です。ただし条件が3つ示されています。
1つ目が実質的な条件です。条例の基準が災害対策基本法施行令第36条第1項の規定による基準と合致していること。ここが合っていなければ、名前だけ足しても補償の中身が法の求める水準に届きません。
2つ目が具体的な作業です。対象に災害対策基本法に基づく応急措置の業務に従事した者を追加規定し、関連する箇所を直す。
3つ目が細かいところで、名称は従来のままでよいとしています。
仕組みを増やさず、既にあるものに乗せる。これは事業所の消防計画でも使える考え方です。新しい計画を1冊増やす前に、既存の計画に対象と手順を足せば足りないかを見るほうが、運用は確実に軽くなります。
既存の条例を直して使う方法もあるのですね。
新設に限りません。
関係する条例を、洗い出しておきましょう。
よくある質問
まとめ
- 緊急自動車は緊急の用務で出動する場合に公安委員会の規制から除外されているのが普通です
- 従事命令は緊急の場合口頭や電話や電報等で発令できます
- ただし事後の公用令書の交付は省けません
- その場合でも実費弁償または損害補償はできます
- 企業の過失による経費は県または市町村が負担して企業に求償します
- 法令の規定に基づかない協定による出動要請は当事者間で解決すべきものです
- 損害補償は非常勤消防団員等公務災害補償条例の一部改正で処理して差支えありません
先に動いて、書類はあとから。
ただし省いてはいけないのですね。
すっきりしました。
あとから出す書類の様式まで用意しておくのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 「緊急輸送車両」と道路交通法第13条の緊急自動車との関係について(昭和39年7月21日 自消丙総発第167号 佐賀県あて回答)
- 公用令書によらない従事命令について(山口県あて回答)
- 企業の過失に基づく交通または産業災害の場合の経費負担について(山口県あて回答)
- 協定に基づく出動要請の場合の実費弁償または損害補償について
- 損害補償に関する市町村条例の取り扱いについて(昭和39年4月3日 自消丙総発第77号)
- 災害対策基本法第71条・第76条・第84条
- 災害対策基本法施行令第36条第1項
- 道路交通法第13条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和30年代から40年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




