古い民家を使った店や旅館の座敷には、いろりや掘ごたつがそのまま残っていることがあります。
炉やボイラーのような大きな設備とちがって、消防の話に出てくることはあまりありません。
ところが火災予防条例(例)には、この二つだけを名指しした第9条が置かれています。
この記事ではいろりと掘ごたつにかかる基準がどこまでなのかを条文から解説します。
座敷にいろりのある店を任されました。
設備の一覧のどこを見ても出てこないので困っています。
いろりと掘ごたつは対象火気設備等の並びには入っていません。
そのかわり火災予防条例が独立した条を置いています。
並びに入っていないのに決まりはあるのですね。
あります。
まず火床の内面をなにで造っているかを見てください。
- いろりと掘ごたつは省令が挙げる対象火気設備等の並びには入っていません。
- それでも火災予防条例(例)は第9条を置いてこの二つだけの基準を定めています。
- 求められるのは掘ごたつの火床といろりの内面を不燃材料で造るか被覆することです。
- 管理は炉の号のうち周囲の整理と清掃と本来の燃料だけを使うことの二つを準用します。
- 離隔距離も設置の届出も条文には出てこないので条例そのものを市町村で確かめます。
▼

目次
いろりや掘ごたつは消防の決まりの対象になるのか

まずその委ね方を見ておきます。
法第9条は設備の例としてかまどと風呂場を、器具の例としてこんろとこたつを挙げたうえで、中身を政令の基準に従った条例に委ねています。
その政令が消防法施行令第5条第1項で、ここでいう対象火気設備等は総務省令で定めるものと書かれています。
受けているのが平成14年総務省令第24号第三条で、第一号から第二十一号まで21の号に炉やボイラーやストーブが並びます。
この21の号を最後まで読んでも、いろりと掘ごたつは出てきません。
それでも火災予防条例(例)は、設備の節のなかに第9条を独立して置いています。
省令の並びに無いのに条例にはあるというのは不思議です。
条例が定めてよい範囲は省令の並びだけではありません。
その根拠は令第5条の3にあります。
火床や内面はなにで造らなければならないのか

そのかわり言葉の指す場所をきちんと押さえる必要があります。
掘ごたつなら熱源を収める火床、いろりならその内面が対象で、座卓や床板の全体ではありません。
やり方は造り、又は被覆しの二通りが並んでいるので、はじめから不燃材料で造ってあっても、後から不燃材料で覆ってあってもよいことになります。
不燃材料は平成14年総務省令第24号第二条第三号が建築基準法第2条第九号に規定するものと定義しており、火災予防条例(例)第3条第1項第一号も同じ定義を置いています。
つまり見るべきは、熱の当たる面がその不燃材料になっているかどうかの一点です。
後から板で覆ってあるものでもよいということですか。
条文は造るか被覆するかの二通りを並べています。
覆っている材料が不燃材料かどうかを確かめてください。
使うときに守ることはなにか

第9条は第2項で、炉の管理の号を名指しで借りてきています。
一つめは周囲を常に整理し清掃するように努めることと、燃料その他の可燃物をみだりに放置しないことです。
座敷では座布団や紙のおしぼり袋、炭の袋がいろりのふちに寄っていきやすいので、ここが実際に指摘を受ける場所になります。
二つめは本来の使用燃料以外の燃料を使わないことで、炭で使う設えに固形燃料や着火剤を足すような使い方を条文の側から止めています。
どちらも器具を買い替えなくても、その日から店の運用として直せる項目です。
つまり片づけと燃料の二つを見ればよいのですね。
条文が準用しているのはその二つです。
閉店後にふちの上をなにも置かない状態に戻す手順を決めてください。
炉やストーブと比べてなにが外れているのか

条文の薄さを安全の証しと読まないための確認をしておきます。
炉は第3条第1項に位置と構造の号が並び、第2項の管理の号も六つありますが、いろりと掘ごたつが借りているのは第1号と第4号の二つだけです。
建築物等や可燃性の物品との間に距離を保つことを求める第3条第1項第一号も、屋内では土間か金属以外の不燃材料の床の上に設けることを求める第六号も、第9条は準用していません。
設置のときの届出も同じで、火災予防条例(例)第44条が挙げる15の号のどこにもいろりと掘ごたつは出てきません。
ただしこれは火を使っていないという意味ではなく、条文が触れていない部分を自分の運用で埋める必要があるという意味です。
決まりが少ないほうが気をつけなくてよいと思っていました。
逆です。
条文が書いていない部分は消防計画の日常の確認で埋めることになります。
明日からなにを確認すればよいのか

起点になるのは条例(例)ではなく自分の市町村の条例です。
火災予防条例(例)は消防庁長官が示したひな形で、実際に効くのは市町村が定めた火災予防条例のほうです。
まず市町村の条例で第9条にあたる条を引き、いろりと掘ごたつの条があるか、番号や中身が(例)とずれていないかを見ます。
次に店の現物で、火床の内面が不燃材料で造られているか被覆されているかを確かめ、ふちの周囲になにも置いていない状態を閉店時の基準にします。
最後に使っている燃料が本来の使用燃料のままかを確かめ、この三つを消防計画の日常の点検の項目に書き足しておくと毎回同じ目で見られます。
まず市の条例を引いてから現物を見ればよいのですね。
その順番が確実です。
番号が(例)とずれていることもあるので条の見出しで探してください。
よくある質問
まとめ
今夜の閉店後に火床の内面から見てみます。
材料とふちの周囲の二つが起点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条・第5条の2・第5条の3
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第二条・第三条・第二十一条
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第3条・第9条・第44条 総務省消防庁
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第九号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





