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自家発電設備はなぜ燃料と始動方式で構造基準が変わるのか|タンクの板厚から緊急ガス遮断装置まで解説

自家発電設備の燃料タンクとガス配管を写したアイキャッチ画像

自家発電設備といえばキュービクル式の外箱ばかり話題になりがちです。
ところが告示の本体は、外箱の無い開放型の設備にも同じ条文がかかっています。
燃料タンクの板厚やガス燃料の耐震性能、始動方式ごとの安全装置は、この条文で決まっています。
この記事では自家発電設備の基本構造の基準を燃料と始動方式ごとに解説します。

施設の自家発電設備がキュービクル式ではありません。
それでも告示の基準はかかるのでしょうか。

はいキュービクル式以外にも基準はかかります。
今日は燃料と始動方式ごとの要件を確認しましょう。

燃料タンクや始動装置まで細かく決まっているのですね。

はい五つの視点で順番に見ていきます。
まずは条文の位置づけからです。

この記事の結論
  • 自家発電設備の基本構造の基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ロと自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二・一にあります。
  • 液体燃料の燃料タンクは容量ごとに板厚が四段階で決められています。
  • ガスを燃料にする設備は400ガルの地震動と緊急ガス遮断装置まで求められます。
  • セルモーター式は高率放電用蓄電池、空気始動式は警報装置と圧力調整装置が必要です。
  • 水冷式の冷却水タンクと発電機の総合電圧変動率2.5パーセント以内も同じ告示が定めています。

自家発電設備の基本構造基準を燃料タンクの板厚ガス燃料の耐震始動方式の安全装置冷却水タンクの4ステップで示した図解

自家発電設備の基本構造の基準はキュービクル式以外にも及ぶのか

外箱に収めたキュービクル式の自家発電設備と外箱の無い開放型の自家発電設備を並べ同じ基準がかかることを示す図
自家発電設備というと、外箱にすべて収めたキュービクル式を思い浮かべがちです。
しかし基準の本体は、外箱の無い開放型の設備にも同じ条文がかかっています。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ロ 自家発電設備は、イ((ホ)及び(ト)を除く。)の規定の例によるほか、次の(イ)から(ニ)までに定めるところによること。 (ニ) 消防庁長官が定める基準に適合するものであること。 自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一 自家発電設備の構造及び性能は、次に定めるところによる。 三 キユービクル式自家発電設備の構造及び性能は、前各号の規定によるほか、次に定めるところによる。
基準は一と二がすべての自家発電設備にかかり三はキュービクル式だけの追加です。
告示の第二は一・二・三の三段構えで書かれています。
一と二は形のいかんを問わず自家発電設備そのものの構造及び性能を定めています。
三はキユービクル式に限って、外箱や換気装置などの追加要件を上乗せする条文です。
つまり燃料タンクや始動方式に関する要件は、外箱の有無にかかわらずすべての設備にかかります。

外箱の無いタイプでも同じ基準がかかるのですね。

はい一と二の規定はすべての形式に共通です。
次に燃料タンクの板厚から見ていきましょう。

液体燃料を使う自家発電設備はなぜ容量ごとに燃料タンクの板厚が変わるのか

容量の異なる燃料タンクを並べ切り欠いた壁の断面に板の厚みが見えている図
燃料タンクは目立たない部品ですが、板の厚さまで容量ごとに決められています。
薄すぎるタンクを使うと、それだけで基準を満たさなくなります。
自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(十二) 液体燃料を用いる原動機の燃料タンクは、次に定めるところによる。 イ その容量に応じ、次の表に掲げる厚さの鋼板又はこれと同等以上の強度を有する金属板で気密に造られ、かつ、さび止めのための措置が講じられていること。 ロ 液面計が設けられていること。 ハ 圧力タンクにあつては有効な安全装置が、圧力タンク以外のタンクにあつては有効な通気管がそれぞれ設けられていること。
燃料タンクの容量板厚
20リットルを超え40リットル以下1.0ミリメートル以上
40リットルを超え100リットル以下1.2ミリメートル以上
100リットルを超え250リットル以下1.6ミリメートル以上
250リットルを超えるもの2.0ミリメートル以上
板厚は容量が大きくなるほど四段階で厚くなります。
20リットルを超え40リットル以下の区分でも、1.0ミリメートル以上の板厚が要ります。
いちばん厚い区分は250リットルを超えるもので、2.0ミリメートル以上です。
材質は鋼板又はこれと同等以上の強度を有する金属板で足りるので、鋼板そのものでなくてもかまいません。
液面計と、圧力タンクなら安全装置、それ以外のタンクなら通気管も忘れずに確認してください。

タンクの容量が小さいと板厚も薄くてよいのですね。

はい容量が小さい区分ほど板厚の基準は薄くなります。
次はガスを燃料にする設備の要件です。

ガスを燃料にする自家発電設備はなぜ耐震性能まで求められるのか

建築物の外壁を貫通するガス導管とその付近に設けた緊急ガス遮断装置を描いた図
液体燃料なら燃料タンクの容量を確保すれば足りますが、ガス燃料は事情が違います。
供給が地震で止まれば、その時点で非常電源の役目を果たせなくなるためです。
自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(十三) 原動機の燃料供給は次のいずれかによるものであること。 ロ ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第11項に規定するガス事業者により供給されるガスを燃料とする原動機の場合において、次に定める方法により、燃料が安定して供給されるものであること。 (イ) 地表面水平加速度400ガルの地震動が加えられた後であつても、燃料が安定して供給されるものであること。 (ロ) 導管が建築物の外壁を貫通する場合にあつては、次に定める緊急ガス遮断装置(危急の場合に建築物の外壁を貫通する箇所の付近で直ちにガスの供給を遮断することができるものをいう。)が設置されていること。
ガス燃料の設備だけに地震動と緊急遮断の要件が上乗せされます。
液体燃料は燃料タンクに一定量を保有すれば足りますが、ガスは導管を通じて供給が続く前提だからです。
400ガルの地震動が加わった後でも、燃料が安定して供給される構造でなければなりません。
導管が建築物の外壁を貫通する場合は、緊急ガス遮断装置を設置し、危急の際に外壁の貫通箇所付近で直ちに止められるようにします。
遮断装置はガスの供給を止めずに点検できる措置も求められています。

うちは都市ガスを引き込んでいます。
耐震性能まで確認が必要なのでしょうか。

はいガス事業者供給ガスを使う設備には耐震の要件がかかります。
導管が外壁を貫通する箇所も見ておきましょう。

セルモーター式と空気始動式ではどんな安全装置が必要になるのか

セルモーターと蓄電池を備えた原動機と空気タンクと圧力計を備えた原動機を並べて始動方式の違いを示す図
原動機を動かす最初の一歩、始動の方式によっても求められる装置が変わります。
電気で回すか空気で回すかで、備えるべき安全装置がまったく違います。
自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(九) セルモーター付きの原動機にあつては、セルモーターピニオンと原動機のリングギヤとの不噛み合わせ防止装置を設けること。 (十) (九)に定めるセルモーターに使用する蓄電池設備は、蓄電池設備の基準に準ずるほか、高率放電用蓄電池(各始動間に5秒の間隔を置いて10秒の始動を3回以上行うことができる容量の蓄電池をいう。)を用いるものとすること。 (十一) 空気始動式の原動機にあつては、空気タンクの圧力が連続して3回以上始動できる圧力以下に低下した場合に自動的に作動する警報装置及び圧力調整装置を設けること。
セルモーター式と空気始動式は求められる装置がそれぞれ違います。
セルモーター式は、歯車の噛み合わせがずれない不噛み合わせ防止装置に加えて、高率放電用蓄電池という特別な蓄電池を使います。
これは5秒の間隔を置いて10秒の始動を3回以上こなせる容量を持つ蓄電池のことです。
一方の空気始動式は、空気タンクの圧力が連続して3回以上始動できる圧力を下回ると、自動で作動する警報装置と圧力調整装置が要ります。
どちらの方式か分からないときは、蓄電池の銘板か空気タンクの有無で見分けてください。

つまり蓄電池の種類まで始動方式で変わるのですね。

はい始動方式を確認してから点検表を選んでください。
次は冷却方式と発電機本体の基準です。

水冷式の原動機と発電機本体にはどんな性能基準があるのか

専用の冷却水タンクを備えた水冷式の原動機と電圧計を備えた発電機を並べた図
燃料と始動方式を見てきましたが、最後は原動機と発電機そのものの基準です。
冷やし方と、出力の安定度がここで問われます。
自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一(十四) 水冷式の内燃機関には、専用の冷却水タンクを設けるものとし、その容量は冷却するのに十分なものとすること。 ただし、冷却塔、熱交換器その他これらに類するものを用いるものにあつては、専用の冷却水タンクを設けることを要しない。 (十五) 発電機の固定子は、耐振性を有するものであること。 (十六) 発電機の回転子は、良質な材料を用いたものであること。 (十七) 発電機の総合電圧変動率は、定格電圧のプラスマイナス2.5パーセント以内であること。
水冷式は専用の冷却水タンクを設けるのが原則です。
冷却塔や熱交換器など、これらに類するものを用いる場合に限り、専用タンクを省略できます。
発電機側は固定子の耐振性と回転子の材料まで条文で求められています。
出力の安定度を示す総合電圧変動率は、定格電圧のプラスマイナス2.5パーセント以内に収めなければなりません。
冷却方式と電圧変動率の実測値は、点検票に記録が残っているはずなので、そこから確認するのが早道です。

うちは冷却塔を使っているので専用タンクは無くてよいのですね。

はいその場合は専用の冷却水タンクを省略できます。
電圧変動率の実測値も点検票で確認しておきましょう。

よくある質問

Qキュービクル式以外の自家発電設備には板厚や耐震の基準はかからないのですか?
Aいいえかかります。告示第二・一・二の規定はキュービクル式かどうかを問わずすべての自家発電設備にかかり、三はキュービクル式だけに上乗せされる追加要件です。
Q液体燃料とガス燃料の両方を使える設備は、どちらの基準に従いますか?
A使用する燃料それぞれの規定がかかります。液体燃料側は燃料タンクの板厚の基準、ガス燃料側は耐震性能と緊急ガス遮断装置の基準を、両方とも満たす必要があります。
Q高率放電用蓄電池かどうかは、どこで見分けられますか?
A蓄電池の銘板や仕様書に記載がある容量から見分けます。5秒の間隔で10秒の始動を3回以上行える容量かどうかが基準なので、数値が分からないときはメーカーに確認してください。
Q水冷式なら必ず専用の冷却水タンクが必要ですか?
Aいいえ必要ありません。冷却塔や熱交換器など、これらに類するものを用いる場合は、専用の冷却水タンクを設けることを要しないとされています。

まとめ

自家発電設備の基本構造の基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ロと自家発電設備の基準第二・一にあります。
三のキユービクル式の規定は一・二に対する追加要件であって、置き換えではありません。
液体燃料の燃料タンクは容量ごとに1.0ミリメートルから2.0ミリメートルまで四段階の板厚が決められています。
ガスを燃料にする設備は400ガルの地震動と緊急ガス遮断装置まで求められます。
セルモーター式は高率放電用蓄電池、空気始動式は警報装置と圧力調整装置がそれぞれ必要です。
水冷式は原則専用の冷却水タンクが必要で、冷却塔や熱交換器等を使う場合は省略できます。
発電機の総合電圧変動率は定格電圧のプラスマイナス2.5パーセント以内でなければなりません。

燃料と始動方式ごとの基準を確認します!

三は追加要件で一と二がすべての設備にかかります
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ロ
  • 自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)第二 一・三
  • ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第11項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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