大きな地震や風水害が起きたとき、自社の車両向けに許可を受けている自家用給油取扱所を、取引先など他社の車両にも使わせてよいのか、判断に迷う場面があります。
自家用の給油取扱所はもともと自社車両の燃料補給のために許可を受けた施設で、他社の車両への給油は当然には想定されていません。
消防庁は令和7年12月、相互応援協定を結んだ他社の車両への給油を、一定の条件のもとで認める考え方を執務資料で示しました。
協定の位置づけから、事前に用意しておく計画書と書面の中身まで、震災時に迷わないための実務を解説します。
取引先のB社から、災害のときにうちの給油取扱所を使わせてほしいと言われました。
自家用の施設なのに、他社の車両へ給油してもよいのでしょうか。
条件を満たせば認められます。
相互応援協定に基づく給油を、消防庁が令和7年12月の執務資料で示しました。
協定さえ結んでいれば、それだけで給油を認めてもらえるということですか。
協定だけでは足りません。
予防規程に準じた計画書と、協定を確認できる書面の準備が条件になります。
- 相互応援協定を結んでいる他社の車両への給油は、震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等のガイドラインの枠組みを参考にすれば、認めて差し支えないとされた。
- 自家用給油取扱所の所有者は、事前に相手方と協議のうえ、予防規程に準じた計画書を用意しておく。
- 協定が締結されていることを確認できる書面の提出を求めることも、あわせて条件になる。
- この取扱いによって、自家用給油取扱所そのものの許可内容が変わるわけではない。
- 同じ考え方は、他の自家用給油取扱所どうしの相互応援協定にも応用できる。
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目次
相互応援協定とはどのような取り決めか

災害時にこの施設を他社の車両にも使わせたいというニーズに対し、消防庁は令和7年12月の執務資料で具体的な回答を示しました。
問3が扱っているのは、自家用給油取扱所の所有者であるA社と、協定の相手方であるB社という2社間の取り決めで、消防への届出とは別のものです。
根拠になっているのは「震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きについて」(平成25年10月3日付け消防災第364号・消防危第171号)別紙1の「第3 危険物施設における臨時的な危険物の貯蔵・取扱い」という枠組みです。
まずはこの枠組みの考え方を押さえておく必要があります。
相互応援協定を結んでさえいれば、消防への届出は不要ということですか。
協定そのものは消防への届出ではありません。
次に、事前に用意しておく計画書の中身を見ていきましょう。
予防規程に準じた計画書には何を書くか

その一つが、予防規程に準じた計画書です。
根拠になっている平成25年ガイドラインの「第3-2」も、予防規程及びそれに基づくマニュアルに、発災時の緊急対応や応急点検、臨時的な貯蔵・取扱いの手順を位置付けておくことを事前の対応として挙げています。
この計画書は、A社が自社の予防規程を補う形で用意するもので、B社が用意するものではありません。
中身が具体的であるほど、災害発生時に迷わず動けます。
緊急対応の手順だけでなく、応急点検の中身まで書いておくのですね。
はい、施設の状態を確かめる手順も欠かせません。
次は、協定を確認できる書面について見ていきます。
協定を確認できる書面とは何か

計画書が「発災時に何をするか」を示すのに対し、この書面は協定そのものの存在を確認するためのもので、役割が異なります。
問3の本文はこの書面の書式までは定めていないため、協定書の写しなど、協定の締結を客観的に確認できる資料を用意しておくことになります。
2つの書類がそろって初めて、この取扱いの対象になります。
協定書のコピーを用意しておけば、それで確認書面になりますか。
協定の締結が確認できる資料であれば対象になります。
次は、A社の許可がどう扱われるかを確認しましょう。
A社の許可内容はどう扱われるか

根拠になっている平成25年ガイドラインの考え方を確認します。
平成25年ガイドラインの「第3-1」は、震災時等に必要となる臨時的な貯蔵・取扱いのうち、許可の範囲内にある設備の使用は消防法第十条第一項ただし書の仮貯蔵・仮取扱いの承認を必ずしも要しないとしています。
一方で、許可外の危険物の貯蔵・取扱いや、利用方法がまったく異なる設備の利用は、変更許可または仮貯蔵・仮取扱いの承認が必要になります。
問3のB社車両への給油は、A社の既存の給油取扱所をそのまま使う行為なので、A社の許可内容を変える手続きは要りません。
許可の中身を書き換えなくてよいなら、手続きの負担はかなり軽いですね。
既存の設備をそのまま使う範囲であることが前提です。
最後に、他の施設にも応用できるかを見ていきます。
他の自家用給油取扱所にも同じ考え方は使えるか

このガイドラインは特定の企業間の協定を前提とせず、許可内容の範囲内であることや予防規程等への位置付けができているかどうかで判断する枠組みだからです。
自社と同業の他社が自家用給油取扱所を持っている場合も、事前協議・計画書・確認書面という同じ3点をそろえれば、同じ考え方が使える可能性があります。
実際の適用は施設ごとに事情が異なるため、検討する際は所轄消防署に事前相談することをおすすめします。
同業の他社との間でも、同じ3点をそろえれば相談できるということですね。
はい、まず所轄消防署に事前相談することをおすすめします。
最後によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
相互応援協定の考え方がよく分かりました!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(令和7年12月25日 消防危第260号 消防庁危険物保安室長)別添 問3・答3
- 震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きについて(平成25年10月3日付け消防災第364号・消防危第171号)別紙1 第3 危険物施設における臨時的な危険物の貯蔵・取扱い
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十条第一項、第十一条第一項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





