平成28年、厨房に設置されていた樹脂製の消火器が破裂し、消火薬剤が飛び散る事故が計4件相次いで発生しました。
原因は、本体容器に使われた樹脂が厨房で使う洗剤などの薬品に触れて劣化する「ケミカルクラック」だったと推定されています。
消防庁は消防予第211号でこの事故を周知し、対象機種の交換や設置場所の見直しを呼びかけました。
樹脂製消火器は検定に合格していても、置き場所を誤ると壊れることがあります。
うちの厨房にも消火器を置いてるんですけど、樹脂製かどうかなんて意識したことがなかったです。
実は樹脂製の消火器が厨房で破裂した事故が過去にありました。
原因は洗剤などの薬品による劣化です。
薬品に触れただけで壊れることがあるんですか。
はい。
検定基準は内側の耐食性が中心で、外からの薬品までは想定されていません。
- 厨房で使われていた樹脂製消火器が破裂する事故が計4件発生し、消防予第211号が発出されました
- 対象はカルミエCM10EPとカルミエCM2.5NNの2機種で、いずれも厨房に設置されていたものです
- 原因は洗剤などの薬品が本体容器に付着し、内部の圧力とあわさって割れが進むケミカルクラックと推定されています
- 検定基準(消火器の技術上の規格を定める省令第6条)は消火剤に触れる内側の耐食性を試験するもので、外側からの薬品付着は基準の対象外です
- 対象機種はSUS製への交換が進められ、対象外の樹脂製消火器も厨房への設置を避ける対応が取られています
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目次
厨房の樹脂製消火器はなぜ破裂事故を起こしたのか

きっかけは、ある製造者からの事故報告でした。
事故を起こしたのは、本体容器にポリエチレンナフタレート(PEN)という樹脂を使った消火器でした。
厨房では清掃用に業務用アルカリ洗剤が使われることがあり、これが本体容器に付着したこと、そして消火器内部に蓄圧された圧力が応力として働いたことが重なり、本体にひび割れ(ケミカルクラック)が生じたと推定されています。
けが人は出ていませんが、消火薬剤が広範囲に飛び散る事故が起きた事実は重く受け止める必要があります。
まずは、この事故がどんな消火器のどんな設置状況で起きたのかを見ていきます。
うちの厨房の消火器、まさに樹脂っぽい素材な気がします。
設置状況によっては注意が必要です。
次で対象になる機種を確認しましょう。
どの消火器のどんな設置状況が対象になるのか

機種と設置場所の両方の条件で絞り込まれています。
機種はカルミエCM10EP(粉末消火器・赤色)とカルミエCM2.5NN(強化液消火器・青色)の2つです。
同じ機種でも、厨房以外の事務所や倉庫に設置されている場合は、ただちに交換が必要とはされていません。
自分の施設にある消火器がこの2機種に当てはまるかは、本体に表示された型式番号と器種名で確認できます。
次は、対象機種に実際にどんな対応が求められているのかを見ていきます。
型式番号なんて、正直あまり見たことがなかったです。
本体のラベルに必ず書かれています。
次の項目で、求められている対応を確認しましょう。
通知はどんな対応を求めているのか

通知は、製造者による対応を周知したうえで留意を呼びかけています。
対象機種は厨房設置分をSUS製消火器へ自主交換し、厨房以外に設置されている場合も希望すれば保護カバーが無償提供されます。
さらに、対象外の樹脂製消火器にも「厨房設置不可シール」が貼られるようになり、今後同じ場所に設置されることを防ぐ仕組みが加わりました。
これらの対応は、施設の関係者が負っている消防用設備等の点検・維持管理義務とも関わっています。
形だけの交換で終わらせず、なぜこの対応が必要なのかを次の項目でもう一段掘り下げます。
交換だけじゃなく、シールまで貼るんですね。
はい。
設置する側が気づけるようにする工夫です。
検定に合格した消火器がなぜ割れてしまったのか

それなのに、なぜ破裂を防げなかったのでしょうか。
省令第6条が求める腐食試験は、消火剤が触れる本体内側を対象にしたもので、食塩水やアルカリ性・酸性の溶液に14日間浸す試験を行います。
一方で、今回の事故は厨房の洗剤が本体の本体外側に付着したことが原因と推定されており、この試験項目では直接想定されていない劣化でした。
つまり、検定に合格していることは、あらゆる薬品への耐性を保証するものではありません。
設置場所を選ぶことは、検定とは別に、施設側が果たすべき役割だといえます。
検定さえ通っていれば安心だと思っていました。
検定は消火剤側の話です。
設置場所の管理は別に必要になります。
明日からなにを確認すればよいのか

特別な工事や届出は必要ありません。
本体のラベルで型式番号を確認し、カルミエCM10EPまたはカルミエCM2.5NNに該当し、かつ厨房に設置されている場合は交換の対象になります。
該当しない樹脂製消火器であっても、洗剤や薬品を使用・保管する場所に置かれていないかを見直してください。
新しく消火器を選ぶ際は、設置場所の環境に合わせて材質を選ぶという視点を持つとよいでしょう。
日々の点検のときに、設置場所と本体の状態をあわせて確認する習慣をつけることが、次の事故を防ぐ一歩になります。
型式番号と置き場所、両方をチェックすればいいんですね。
はい。
次の点検のときに一緒に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
厨房の消火器は、材質と置き場所を次の点検でしっかり確認します!
設置場所まで気にかけていただきありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第211号「樹脂製消火器の不具合(破裂事故)に係る注意喚起について」(平成28年6月17日、消防庁予防課長)
- 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和三十九年自治省令第27号)第6条 e-Gov法令検索
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





