加圧防排煙設備の風道を設計するとき、「一般の排煙設備と同じように、熱で自動的に閉じるダンパーを付けてよいのか」という質問を受けることがあります。
一般の風道は、火災で風道内部の温度が著しく上昇したときに限り、自動閉鎖装置を設けたダンパーの設置を認めています。
しかし加圧防排煙設備の給気用の風道には、この高温閉鎖の例外そのものを告示が丸ごと外すという独自の読み替えがあります。
この記事では、給気用の風道に適用される基準の読み替えから、自動閉鎖装置が一切認められない理由まで整理して解説します。
うちの給気用の風道、火事で熱くなったら自動でダンパーが閉じる仕組みにしてあるんですが。
それで大丈夫ですよね。
いいえ、加圧防排煙設備の給気用の風道では、その自動閉鎖の仕組み自体が認められません。
一般の排煙設備の風道なら、高温になったときだけ閉じるダンパーは認められるんですよね。
はい、そこが決定的に違うところです。
順番に確認していきましょう。
- 加圧防排煙設備の給気用の風道は、消防法施行規則第三十条第三号(ホ(ハ)及び(ニ)を除く。)の規定の例によります
- 一般の風道と違い、給気用の風道は自動閉鎖装置を設けたダンパーを一切設置できません
- 規則が認める「風道内部の温度が著しく上昇したときに限り閉鎖してよい」という高温閉鎖の例外は、給気用の風道には適用されません
- 同号イ・ロの「排煙上又は給気上」「排煙機又は給気機」は、それぞれ「給気上」「給気機」に読み替えられます
- 消火活動拠点以外に接続する給気用の風道も含め、例外なくダンパーの自動閉鎖が禁止されます
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目次
給気用の風道にも一般の風道と同じ基準が適用されるのか

まずは一般の風道の基準がどこまで及ぶのかを確認します。
イ 排煙上又は給気上及び保安上必要な強度、容量及び気密性を有するものであること。
ロ 排煙機又は給気機に接続されていること。
ハ 風道内の煙の熱により、周囲への過熱、延焼等が発生するおそれのある場合にあつては、風道の断熱、可燃物との隔離等の措置を講ずること。
ニ 風道が防煙壁を貫通する場合にあつては、排煙上支障となるすき間を生じないようにすること。
加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準第三 七 給気用の風道は、規則第三十条第三号(ホ(ハ)及び(ニ)を除く。)の規定の例によるほか、自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置しないこと。
告示第三 七は、規則第三十条第三号(風道に関する一般基準)の規定の例によるとしており、強度・容量・気密性(同号イ)、給気機への接続(同号ロ)、風道内の煙の熱による過熱・延焼を防ぐ断熱等の措置(同号ハ)、防煙壁を貫通する箇所にすき間を生じさせないこと(同号ニ)は、そのまま適用されます。
告示が独自に手を入れるのは、この先のダンパーに関する部分(同号ホ)です。
一般の風道と同じ土台の上に、給気用の風道だけの追加ルールが乗っている、という構造をまず押さえておきます。
強度や気密性の基準は、普通の風道と同じなんですね。
はい、そこは共通です。
次は言葉の読み替えを見ていきましょう。
条文の読み替えでどこが変わるのか

給気用の風道だけに使うためには、言葉を絞り込む作業が必要です。
規則第三十条第三号イは「排煙上又は給気上」、ロは「排煙機又は給気機」という、両方を並記した書き方になっています。
告示第三 七はこの条文を給気用の風道専用に使うため、イ中の語を「給気上」に、ロ中の語を「給気機」にそれぞれ読み替えると定めています。
読み替えたあとの条文は、給気系統だけを名指しした基準として読むことになります。
条文の言葉を差し替えて読むということですね。
はい、給気専用の条文として読み直すイメージです。
次はダンパーの基準に進みましょう。
ダンパーを設ける場合にまず満たす基準はどこか

ここは一般の風道と変わりません。
(イ) 外部から容易に開閉することができること。
(ロ) 防火上有効な構造を有するものであること。
告示第三 七が適用除外にしているのはホ(ハ)及び(ニ)の2項目だけで、ホ(イ)(ロ)は給気用の風道にもそのまま適用されます。
つまり「開けやすいこと」「防火上有効な構造であること」という共通要件はクリアしたうえで、この先の閉鎖のしかたが給気用の風道だけ大きく変わります。
共通部分と独自部分を混同しないよう、条文のどこまでが準用でどこからが告示の独自ルールかを意識してください。
ここまでは普通の風道と同じ感覚で大丈夫なんですね。
はい、ここまでは共通です。
問題はこの次の閉鎖の条件です。
実務で見落としやすいのはどこか

ここが、加圧防排煙設備の給気用の風道でひっくり返ります。
同号ホ(ニ) 消火活動拠点に設ける排煙口又は給気口に接続する風道には、自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置しないこと。
同告示第三 七 (前略)自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置しないこと。
規則ホ(ハ)は、風道内部の温度が著しく上昇したとき(自動閉鎖装置は280度以上)に限り閉鎖してよいとする例外を置き、ホ(ニ)は消火活動拠点に接続する風道だけを狙って自動閉鎖を禁止しています。
告示第三 七は、この(ハ)(ニ)を丸ごと適用除外としたうえで、代わりに「自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置しないこと」という一文を独自に置いています。
温度の条件も接続先の限定も付いていないため、給気用の風道は消火活動拠点に接続するかどうかを問わず、例外なく自動閉鎖が禁止されると読むことになります。
280度うんぬんという条件自体が、給気用の風道には無いんですね。
そのとおりです。
温度に関わらず設置できません。
明日からなにを確認すればよいのか

図面を確認するときは、この違いを踏まえて見る必要があります。
・風道が給気機に接続され、強度・容量・気密性の基準を満たしているか
・耐火構造の壁や床を貫通する箇所のダンパーが、外部から容易に開閉できる構造か
・そのダンパーに自動閉鎖装置が付いていないか(温度条件の有無を問わず不可)
・排煙用の風道(同告示第三 二(二)のただし書)の基準と混同していないか
・給気口側(同告示第三 六)の基準とあわせて図面全体を確認したか
①まず風道が給気機に接続され基本要件を満たしているかを確認し、②耐火構造の壁を貫通する箇所のダンパーが外部から開閉できる構造かを見ます。
③そのうえで、自動閉鎖装置そのものが付いていないかを単独でチェックします。加圧式消火活動拠点に接続する排煙用の風道(第三 二(二))にはただし書による例外がありますが、給気用の風道にはこの例外がありません。
判断に迷う点があれば、所轄消防署に事前相談することをおすすめします。
給気用と排煙用、風道ごとに図面を見分けないといけないんですね。
はい、風道の種類ごとに基準が違います。
次はよくある質問もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
給気用の風道のダンパーのこと、よくわかりました。
設計者への確認もこれでできそうです。
風道のダンパーの扱いで判断に迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成21年9月15日消防庁告示第16号、最終改正:令和6年3月29日消防庁告示第6号)第三 七
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第30条第3号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





