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火災気象通報の基準はなぜ乾燥注意報と強風注意報にそろえられたのか|糸魚川市大規模火災を踏まえた通報区域の細分化も解説

強風の中の気象観測機器と住宅街を背景にした火災気象通報の見直しに関する記事のアイキャッチ画像

平成28年12月、新潟県糸魚川市で発生した火災は、強い風にあおられて燃え広がり大規模火災になりました。
この教訓を受けて消防庁と気象庁は、火災の危険を知らせる「火災気象通報」の基準を見直しました。
地域ごとにばらばらだった湿度と風速の組み合わせをやめ、誰もが聞き慣れた注意報にそろえたのです。
天気予報で見る「乾燥注意報」や「強風注意報」が、そのまま火災の危険を知らせる合図になっています

火災気象通報という言葉を初めて聞きました。
天気予報とは何が違うのですか。

気象台が都道府県知事に送る内部の通報のことです。
これを受けて市町村長が、火災に関する警報を出せる仕組みになっています。

以前はもっと複雑な基準だったと聞いたことがあります。

平成31年の見直しで、誰もが聞き慣れた注意報の基準に統一されました
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成28年12月の糸魚川市大規模火災を教訓に、火災気象通報の運用が見直されました。
  • 通報基準は、湿度と風速の組み合わせから乾燥注意報・強風注意報の発表基準と同一にそろえられました。
  • 通報の対象範囲も、都府県単位から二次細分区域(概ね市町村単位)まで細分化されました。
  • 見直しの根拠となる消防法第22条の火災警報そのものの仕組みは変わっていません
  • 乾燥注意報が出ても、火災警報を発令するかどうかは市町村長の判断にゆだねられています。

火災気象通報が気象台の通報から都道府県が伝達し市町村長が判断し火の使用制限に至る4ステップを示す図解

火災気象通報の基準はなぜ乾燥注意報や強風注意報にそろえられたのか

強風にあおられた木造密集地の街並みと気象観測機器を示すイメージ
平成28年12月、新潟県糸魚川市で発生した火災は、強風によって延焼が拡大し147棟を焼く大規模火災になりました。
この教訓が、火災気象通報の基準そのものを変えるきっかけになりました。
平成28年12月に発生した糸魚川市大規模火災を踏まえた検討会では、強風により延焼拡大し、被害が甚大となったことから、気象状況に伴う火災の危険性を住民へ広報することや消防体制の確保、気象現象の広がりを踏まえた通報区分の細分化について意見や提言が示されました。(消防消第34号・気業第197号 平成31年2月8日 消防庁消防・救急課長/気象庁予報部業務課長「火災気象通報の運用の見直しについて」)
教訓は、住民への伝わりやすさに集約されました
それまでの通報基準は、実効湿度と風速を組み合わせた数値で示されており、地域ごとに数値も異なっていました。
これでは住民はもちろん、消防機関自身も危険度を直感的につかみにくいという課題がありました。
そこで消防庁は気象庁、全国消防長会、県、消防本部でワーキンググループを設け、通報の仕組みを検討し直しました。
たどり着いた答えが、誰もが日常の天気予報で目にする「乾燥注意報」「強風注意報」への統一だったのです。

数値の基準より、注意報のほうがわかりやすいですね。

気象台がすでに発表している注意報をそのまま基準に使うことで、誰もが同じ危険度を共有できるようになりました。
次は、その通報がどの範囲まで届くのかを見ていきましょう。

通報はどこまで細かい単位で市町村に届くのか

都道府県単位の大きな区画が市町村単位の細かい区画に分かれる地図のイメージ
以前の通報は、都府県やそれを数分割した程度の大まかな単位で発表されていました。
見直し後は、もっと身近な単位まで区切られるようになりました。
これまで、都府県単位である「府県予報区」や都府県を2~4に分割した単位である「一次細分区域」を対象としていた通報を、概ね市町村を単位とした「二次細分区域」を明記して通報する。(消防消第34号・気業第197号 平成31年2月8日「火災気象通報の運用の見直しについて」)
区域が細かくなったのは、危険を自分ごととして捉えてもらうためです
一次細分区域は都府県を数個に分けた程度の広さで、実際の風の強さや乾き具合は地域ごとに差があります。
二次細分区域はおおむね市町村を単位とするため、自分の住む市町村が対象かどうかがひと目でわかるようになりました。
気象台が発表する天気予報でも、この単位で「乾燥注意報」「強風注意報」の発表・解除が確認できます。
市町村や消防本部が住民に呼びかける際も、対象範囲をあいまいにせずに済むようになったわけです。

自分の市町村が対象かどうかは、どこで確認すればいいですか。

気象庁が発表する乾燥注意報・強風注意報と同じ単位なので、天気予報のアプリやニュースでそのまま確認できます。
次は、実際の通報がどんな仕組みで届くのかを見ていきましょう。

見直し後の通報はどんな仕組みで届くのか

気象台から都道府県庁を経て市役所へ通報が伝わる流れのイメージ
通報は毎日決まった時刻に届くものと、状況が変わるたびに届くものの2種類があります。
どちらも消防法第22条が定める伝達の流れに沿って届きます。
気象台等は、5時に発表する天気予報に基づき、向こう24時間先までの気象状況の概要を気象概況として毎日朝(5時頃を想定)に都道府県に通報する。都道府県は、通報を受けた内容を市町村等へ通報する。この通報において、火災気象通報の通報基準に該当または該当するおそれがある場合は、見出しの冒頭に通報区分として「火災気象通報」と明示し、注意すべき事項を付加する。(消防消第34号・気業第197号 平成31年2月8日「火災気象通報の運用の見直しについて」)
気象庁長官、管区気象台長、沖縄気象台長、地方気象台長又は測候所長は、気象の状況が火災の予防上危険であると認めるときは、その状況を直ちにその地を管轄する都道府県知事に通報しなければならない。都道府県知事は、前項の通報を受けたときは、直ちにこれを市町村長に通報しなければならない。(消防法第22条第1項・第2項)
通報は「定時」と「随時」の2段構えです
定時の通報は毎朝5時頃、翌日までの気象概況とあわせて都道府県から市町村へ届きます。
このとき基準に該当していれば、見出しに「火災気象通報【乾燥】」「【強風】」「【乾燥・強風】」と明示されます。
随時の通報は、日中に新しく注意報が発表されたときなど、状況が変わるたびに届く仕組みです。
なお降水や降雪が見込まれる場合は、乾燥・強風の基準に該当していても通報の明示自体が省かれます。

雨が降りそうな日でも注意報が出ることはあるんですか。

該当する全ての地域・時間帯で降水が見込まれる場合だけ、通報の明示が省かれます
一部の時間帯だけ雨の予報でも、火災気象通報は出ることがあります。

実務で見落としやすいのはどこか

注意報を確認するだけの状態と火災警報発令中にたき火をしてしまう状態を対比するイメージ
見直しでわかりやすくなった一方、注意報と警報を混同してしまう落とし穴があります。
順を追って整理しておきましょう。
市町村長は、前項の通報を受けたとき又は気象の状況が火災の予防上危険であると認めるときは、火災に関する警報を発することができる。前項の規定による警報が発せられたときは、警報が解除されるまでの間、その市町村の区域内に在る者は、市町村条例で定める火の使用の制限に従わなければならない。(消防法第22条第3項・第4項)
乾燥注意報が出ても、それだけでは火の使用制限はかかりません
火災気象通報はあくまで気象台から市町村長への内部の通報であり、住民への義務を生じさせるものではないからです。
実際に火の使用制限がかかるのは、市町村長が火災に関する警報を発令したときだけです。
発令するかどうかは市町村長の裁量であり、注意報が出ても必ず警報が出るとは限りません。
そのため防火管理者としては、注意報の段階から警戒を始めつつ、実際の警報発令は市町村や消防本部の発表で確認することが欠かせません。

注意報が出た時点で、たき火はやめておいたほうがいいですよね。

法律上の制限は警報発令後ですが、注意報の段階で控えるのが安全です。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

スマートフォンで天気予報を確認しながら掲示物の注意事項をチェックする建物管理者のイメージ
制度を知っているだけでは意味がありません。
日々の確認に落とし込んでおきましょう。
今般、住民に対する広報や消防体制、火災警報発令の判断準備を行うことができるように、通報基準を見直し、通報区域を細分化し、また、気象台等から気象概況の通報を受けることとしたので、都道府県及び市町村におかれては本通知をふまえ、通報を十分に活用されたい。(消防消第34号・気業第197号 平成31年2月8日「火災気象通報の運用の見直しについて」)
確認する習慣を、天気予報のチェックに一本化してしまいましょう
天気予報やニュースで「乾燥注意報」「強風注意報」が出ていないかを毎朝確認する習慣をつけてください。
注意報が出ている日は、屋外での喫煙・たき火・溶接など火気を使う作業を自主的に控えるよう社内や施設内に周知します。
あわせて、お住まいの市町村や消防本部のホームページ・防災アプリで火災に関する警報が発令されていないかを確認してください。
警報が発令された場合は、市町村条例で定める火の使用制限の内容を確認し、テナントや利用者にも周知することが大切です。

天気予報をチェックするだけなら、今日からすぐにできますね。

特別な設備を持たなくても、今日から始められる備えです。
最後によくある質問で細かい点を確認しておきましょう。

よくある質問

Q乾燥注意報が出ただけで、たき火や喫煙は禁止されますか?
Aいいえ。乾燥注意報の発表そのものは気象台から市町村長への通報であり、住民への火の使用制限は市町村長が火災に関する警報を発令して初めて効力を持ちます。
Q「二次細分区域」とはどれくらいの広さですか?
A気象庁が天気予報で使う区域区分の一つで、おおむね市町村を単位とした細かい区域です。都府県を大きく分けた「一次細分区域」よりも狭い範囲を指します。
Q火災気象通報が出ているかどうかは、どこで確認できますか?
A気象台が発表する天気予報の見出しに「火災気象通報【乾燥】」などの表示が付きます。あわせて、お住まいの市町村や消防本部の発表も確認してください。
Q雨が降る予報の日でも火災気象通報は出ますか?
A該当する全ての地域・時間帯で降水(降雪を含む)が見込まれる場合は、通報の明示が省かれます。一部の時間帯だけの雨予報では出ることがあります。

まとめ

平成28年12月の糸魚川市大規模火災を教訓に、火災気象通報の運用が見直されました
通報基準は湿度と風速から乾燥注意報・強風注意報の基準に統一されました
通報の対象範囲は都府県単位から二次細分区域(概ね市町村単位)まで細分化されました
通報は毎日決まった定時通報と、状況変化時の随時通報の2段構えです
見出しには「火災気象通報【乾燥】」等の表示が明示されます
乾燥注意報が出ても火の使用制限は自動的にはかかりません
実際の制限は市町村長が火災に関する警報を発令したときだけ効力を持ちます

天気予報の見出しに注意しておけばいいと分かりました!

注意報と警報の違いさえ押さえておけば、迷わず動けます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火災気象通報の運用の見直しについて(通知)(平成31年2月8日 消防消第34号・気業第197号 消防庁消防・救急課長/気象庁予報部業務課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第22条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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