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屋内貯蔵所の架台はなぜ移動式でも基礎への固定が不要になったのか|ガイドレールと車輪固定で決まる3つの要件を解説

屋内貯蔵所の架台に移動式の例外が新設された

危険物を保管する屋内貯蔵所では、棚を組んで容器を段積みする「架台」を設けることがあります。
架台は消防法令上、堅固な基礎への固定が原則とされてきました。
ところが令和7年5月、危険物の規制に関する政令等の改正で、条件を満たせば固定が不要になる例外が新設されました。
この記事では、移動式架台として認められる3つの要件と、運用で見落としやすい注意点を解説します。

うちの屋内貯蔵所、架台に車輪を付けて動かせるようにしたら、床への固定はいらなくなるって聞いたんですけど本当ですか。

はい、令和7年の改正で、条件を満たす移動式架台なら基礎への固定が不要になりました。

どんな条件を満たせばいいんでしょうか。

ガイドレール・連結・車輪固定という3つの要件のいずれかです。

この記事の結論
  • 屋内貯蔵所の架台は、危険物の規制に関する規則第十六条の二の二により堅固な基礎への固定が原則です
  • 令和7年5月の政令等改正で、特定の構造を持つ移動式架台は固定が不要になる例外が新設されました(消防危第96号・第116号)
  • 認められるのは、ガイドレールの設置・複数架台の結合・車輪の固定という3つの要件のいずれかを満たすものです
  • 結合型・車輪固定型は、使用時以外も転倒防止措置を随時行うことが求められます
  • 3つの要件に当たらない架台には、従来どおり基礎への固定が必須です

屋内貯蔵所の架台に移動式の例外が新設されたことを示す図解

屋内貯蔵所の架台はなぜ移動式でも認められるようになったのか

通知が屋内貯蔵所の架台の基準を変える様子
危険物の規制に関する規則第十六条の二の二は、屋内貯蔵所の架台について「堅固な基礎に固定すること」を原則としてきました。
この原則に、令和7年の改正で初めて具体的な例外が加わりました。
消防危第96号(令和7年5月14日) 屋内貯蔵所の架台の基準に係る見直しについて 屋内貯蔵所の架台が特定の構造等を有する場合は、架台を堅固な基礎に固定しなくてもよいこととしたこと。(新規則第十六条の二の二及び新告示第四条の二の二関係)
令和7年5月14日、危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等が公布されました。
政令第191号・総務省令第49号・総務省告示第161号の三点セットで、リチウムイオン蓄電池の取扱いに関する規制見直しと合わせて改正されたものです。
架台の基準見直しは蓄電池専用の規定ではなく、屋内貯蔵所の架台全般に関わる改正です。
5月27日付けの消防危第116号で、具体的な運用が示されました。
この記事では、この通知が示す3つの要件を中心に見ていきます。

令和7年に改正されたばかりなんですね。

はい、まだ改正から間もない制度です。

どの屋内貯蔵所のどんな架台が対象になるのか

固定された架台と車輪を付けた架台を並べて示す様子
規則第十六条の二の二は、蓄電池を保管する屋内貯蔵所に限らず、危険物を保管する屋内貯蔵所の架台全般に適用される規定です。
今回の例外も、この一般的な規定に対するものです。
危険物の規制に関する規則第十六条の二の二第一項一の二 架台は堅固な基礎に固定すること。ただし、告示で定める架台にあつては、この限りでない
対象は蓄電池以外を保管する屋内貯蔵所の架台にも及びます。
条文が「架台」とだけ書いており、貯蔵する危険物の種類を限定していないためです。
一方で原則は今でも固定です。
例外に当たるのは、次に見る3つの要件のいずれかを満たす特別な設計をした架台に限られます。
車輪を付けただけ、レールに沿わせただけといった見た目の工夫だけでは足りません。

うちは蓄電池じゃなくて塗料を保管してるんですけど、それでも対象になりますか。

はい、対象になります。
架台の構造そのものに対する一般規定ですので、貯蔵する危険物の種類は問いません。

移動式架台として認められる3つの要件とは何か

架台上部のガイドレールに沿う構造
告示第四条の二の二は「容易に転倒しない構造を有するもの」と定めるだけで、具体的な中身は通知が示しています。
消防危第116号が挙げる要件は次の3つです。
消防危第116号(令和7年5月27日) 告示第四条の二の二に規定する「容易に転倒しない構造を有するもの」とは、次のいずれかの要件を満たすもの又はこれと同等以上の安全性を有するものが考えられること。 ⑴架台の上部等にガイドレールを設けたもの。 ⑵同一レール上にある2以上の架台を結合することができるもの。 ⑶架台を移動させるための車輪を固定することができるもの。
要件は上部のレール・複数台の連結・車輪の固定の3通りです。
⑴はレールに架台の上端をはめ込み、レールに沿った方向にしか動かせなくする方法です。
⑵は同じレール上にある架台同士を結合し、単独では転倒しにくい塊にする方法です。
⑶は架台を支える車輪そのものに固定機構を持たせる方法です。
文言には「これと同等以上の安全性を有するもの」という受け皿もあり、最終的な当てはめは所轄消防署の判断になります。

うちの棚はキャスターが付いてるだけなんですけど、これだけじゃ駄目なんですね。

はい、車輪が固定できる構造になっているかまでが条件です。

移動式架台の運用で見落としやすいのはどこか

車輪の固定を怠った架台
移動式架台は「固定しなくてよい」とだけ読むと、運用面の条件を見落とします。
通知は要件の直後に、次の一文を添えています。
消防危第116号(令和7年5月27日) なお、⑵及び⑶の要件にあっては、使用時以外は転倒防止措置を随時行うよう指導されたいこと。
結合型・車輪固定型は、日常の運用そのものが基準の一部です。
⑵の結合型は、荷物の出し入れのために連結を外したまま戻し忘れると、単独の架台と同じ転倒リスクに戻ります。
⑶の車輪固定型も、作業のためにロックを外した後、そのまま放置すればレールも結合も無い状態と同じです。
構造上の要件を満たしていても、使わない時間帯の措置を怠れば実質的に転倒防止になりません。
「固定不要」を「何もしなくてよい」と読み違えないことが最大の注意点です。

作業のたびにロックを外したり掛けたりするのが正直ちょっと不安です。

だからこそ、作業手順そのものに組み込むことが大切です。

明日からなにを確認すればよいのか

車輪の固定を確認する作業員
移動式架台の基準は、導入して終わりではなく使い続ける中で保つものです。
最後に、明日からできる確認をまとめます。
  • 既存の架台が、ガイドレール・結合・車輪固定の3つの要件のいずれかに当たるかを確認する
  • 当てはまらなければ、従来どおり基礎への固定が必要であることを前提にする
  • 結合型・車輪固定型は、使用時以外の転倒防止措置を作業手順に明記する
  • 許可申請や変更許可の書類に、採用した構造の根拠を残しておく
基準に適合しない架台は、消防法上の是正の対象になり得ます。
消防法第十一条第五項は、貯蔵又は取扱いが技術上の基準に違反すると認めるときは、市町村長等が使用の一時停止や制限を命じることができると定めています。
架台を移動式に変更する場合は、屋内貯蔵所の設備の一部として変更許可の対象になるのが原則です。
判断に迷う場合は、変更に着手する前に所轄消防署へ相談してください。

まずは今ある架台がどのタイプか、点検表に加えてみます。

それが一番確実な第一歩です。

よくある質問

Q移動式架台の例外は、リチウムイオン蓄電池を保管する屋内貯蔵所だけに適用されますか?
Aいいえ、蓄電池専用の規定ではありません。危険物の規制に関する規則第十六条の二の二は屋内貯蔵所の架台全般に適用される一般規定なので、蓄電池以外の危険物を保管する架台にも当てはまります。
Qキャスターを付けただけの棚は、移動式架台として認められますか?
A単に車輪が付いているだけでは足りません。ガイドレール・結合・車輪固定という3つの要件のいずれかを満たすか、これと同等以上の安全性が求められます。
Qこの例外はいつから使えますか?
A改正政令等は令和7年5月14日に公布され、公布の翌日から施行されています。
Q既存の架台を移動式に変更する場合、変更許可は必要ですか?
A原則として必要です。架台は屋内貯蔵所の設備の一部として扱われるため、構造を変更する場合は変更許可の対象になります。着手前に所轄消防署へ相談してください。

まとめ

屋内貯蔵所の架台は、危険物の規制に関する規則第十六条の二の二により堅固な基礎への固定が原則です
令和7年5月14日、危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等(政令第191号・総務省令第49号・総務省告示第161号)が公布されました
この改正で、特定の構造を持つ移動式架台は堅固な基礎への固定が不要になる例外が新設されました
対象は蓄電池専用ではなく、屋内貯蔵所の架台全般に及びます
消防危第116号は、認められる要件としてガイドレール・結合・車輪固定の3つを示しています
結合型・車輪固定型は、使用時以外も転倒防止措置を随時行うことが求められます
架台を移動式に変更する場合は、屋内貯蔵所の変更許可の対象になるのが原則です

固定できない棚は全部駄目だと思ってましたが、条件付きで移動式も認められるんですね。

はい、3つの要件と運用面の注意点を押さえておけば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防危第96号(令和7年5月14日) 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について
  • 消防危第116号(令和7年5月27日) 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の運用について(通知)
  • 危険物の規制に関する規則第十六条の二の二
  • 消防法第十一条第五項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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