製造所や一般取扱所では、可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所での電気機器の使用が長く原則禁止とされてきました。
在庫確認や点検記録にスマートフォンやタブレット端末を使いたいという現場の声が高まる一方で、どこまでなら持ち込めるのかがはっきりしませんでした。
令和7年6月、消防庁はスマート保安の検討を踏まえて具体的な条件を通知で示し、同年12月にはその条件をさらに明確にする改正を行いました。
屋外のどんな場所でどんな検知器を携帯すれば、電気機器を使えるようになるのかを解説します。
うちの製造所でも、点検のときにタブレットを持ち込みたいという相談が増えてきました。
屋外の非危険場所であれば、令和7年の通知で持ち込みが認められる場合があります。
まずは対象になる条件を確認しましょう。
うちは屋根のない屋外のタンクエリアなんですが、それだけで持ち込んでよいのでしょうか。
屋外であることに加えて、可燃性蒸気の濃度が低い場所であることも必要です。
順番に見ていきますね。
- 製造所や一般取扱所で可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所は電気機器の使用が原則禁止されてきたが、令和7年6月の消防危第140号でスマート保安を踏まえた運用が示された。
- 対象になるのは屋外の場所であり、かつ可燃性蒸気等の濃度が25パーセントLEL未満の非危険場所であること。
- 携帯する検知器は防爆構造・落下防止措置に加え、指示精度や警報設定値の要件を満たす必要がある。
- 令和7年12月の消防危第253号により、退避の引き金は数値ではなく検知器の警報に統一された。
- 固定式のWi-Fiルーター等は、通電を遮断する措置等を条件に防爆構造でなくても設置できる場合がある。
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目次
製造所や一般取扱所で電気機器はなぜ使用が禁止されてきたのか

消防庁は令和7年6月30日、消防危第140号でその例外となる条件を初めて示しました。
危険物の規制に関する政令第24条第13号は、こうした場所で火花を発する機械器具の使用を明確に禁じており、スマートフォンやタブレット端末もこの規定に当たれば対象になります。
一方で近年は在庫確認や点検記録にIoT機器を使いたいという現場のニーズが高まり、消防庁は「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」の検討を踏まえて運用を見直しました。
消防危第140号が、その具体的な条件を初めて示した通知です。
まずはどんな場所が例外に当たるのかを、次に確認していきます。
電気機器がなぜそこまで厳しく制限されてきたのか、正直よく分かっていませんでした。
火花が可燃性蒸気に引火する危険を防ぐためです。
次は対象になる場所の条件を見ていきましょう。
どんな場所ならスマートフォンやタブレットを持ち込めるのか

条文の中身を確認していきます。
一つ目の条件は、建築物の外壁やこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分が存在しない屋外の場所であることです。
二つ目の条件は、可燃性蒸気等の濃度が25パーセントLEL未満と認められる非危険場所であることで、評価の方法もスマート保安検討会の報告書に基づいて定められています。
三つ目の条件として、予防規程や自主行動計画等に必要事項を定めておくことも求められます。
三つの条件がそろって初めて、対象の場所として扱うことができます。
屋外だから安全というわけではないんですね。
濃度が低い非危険場所であることも合わせて必要です。
次はその中身を見ていきます。
携帯する検知器にはどんな要件が求められるのか

令和7年12月の改正でその中身が明確になりました。
令和7年12月17日の消防危第253号による改正で、指示精度はプラスマイナス10パーセントLEL以内、測定値は1パーセントLEL以下の数値で表示できることが明確にされました。
警報設定値は25パーセントLEL以下とし、検知器自体にも防爆構造と落下防止措置が必要です。
これらの要件を十分に理解する教育訓練を受けた者以外は、非危険場所への立入り自体が禁止されています。
検知器を選ぶ段階で、こうした性能を満たしているかをまず確認してください。
検知器ならなんでもいいわけじゃなさそうですね。
精度と警報の設定値まで細かく決まっています。
落とし穴もあわせて見ておきましょう。
警報が鳴ったときの退避で見落としやすいのはどこか

どこが変わったのかを確認します。
改正前の消防危第140号は濃度の数値そのものが検知された場合に退避するという表現でしたが、令和7年12月の消防危第253号による改正後は検知器の警報を確認した場合に退避するという表現へ統一されています。
退避先になる場所は施設外か、事故等が起きた際の評価で25パーセントLEL未満と認められる場所に限られ、退避先が複数あるときは非危険場所ごとにあらかじめ決めておく必要があります。
退避経路もあらかじめ確認しておき、退避後は安全が確認できるまで電気機械器具等を退避場所以外へ持ち込まないことが求められます。
警報が鳴ったらすぐ逃げるだけでなく、逃げる先と道順を先に決めておくことが実務での見落としやすい点です。
警報が鳴った瞬間、どこに逃げればいいか迷いそうです。
退避先は事前に決めておくのが安心です。
最後に明日からの確認事項をまとめます。
明日から製造所や一般取扱所で何を確認すればよいのか

固定式の機器への考え方もあわせて見ておきます。
消防危第140号による運用は、危険物の規制に関する政令第19条第1項で第9条第1項が準用されるため、一般取扱所にもそのまま適用されます。
壁や天井に据え付けて容易に持ち出せない固定式の機器は、照明・消火設備・警報設備等を除き、原則として引き続き防爆構造のものを設置することが必要です。
それ以外の固定式機器は、通電を遮断する措置等を講じることで防爆構造でないものを設置できる場合もあります。
まずは自社の作業場所が屋外の非危険場所に当たるかを整理し、予防規程等への記載内容を所轄消防署に相談することから始めてください。
まずは自社の作業場所が対象になるか、確認してみます。
それが一番の近道です。
判断に迷ったら所轄消防署にも相談してみてください。
よくある質問
まとめ
電気機器の持ち込みルールが、これでだいぶ整理できました!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 製造所又は一般取扱所において電気機械器具等を使用する場合の運用について(令和7年6月30日 消防危第140号 消防庁危険物保安室長)
- 「製造所又は一般取扱所において電気機械器具等を使用する場合の運用について」の一部改正について(令和7年12月17日 消防危第253号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第17号・第19条第1項・第24条第13号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





