危険物を保管する屋内貯蔵所では、火花を発する機械器具の使用が厳しく制限されてきました。
ところがIoT機器やタブレット端末で在庫や温度を見守りたいという現場のニーズが高まっています。
令和6年3月、消防庁は屋内貯蔵所で電気機械器具等を使う場合の運用をとりまとめた通知を出しました。
どんな条件を満たせばIoT機器等を使えるようになるのかを解説します。
うちの倉庫でも在庫確認にタブレットを持ち込みたいのですが
火花が出る機器は使えないと聞いたことがあります。
IoT機器等の運用について令和6年の通知が要件を示しています。
まずは背景から確認しましょう。
詰め替え作業をしていない倉庫でも同じ扱いになるのでしょうか。
詰め替えの有無と換気設備の稼働がポイントです。
順番に見ていきましょう。
- 消防庁は令和6年3月29日の消防危第80号で、屋内貯蔵所において電気機械器具等を使用する場合の運用について通知しました。
- 詰め替え等の作業がなく換気設備が正常稼働していれば、屋内貯蔵所の内部は可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所に該当しないものとして扱えます。
- 非固定式の非防爆構造の電気機械器具等を使う場合は、防爆構造の可燃性ガス検知機を常時稼働させて安全を確認する必要があります。
- 固定式の電気機械器具等は、照明・消火設備・警報設備等を除き、原則として防爆構造のものを設置することが変わらず求められます。
- 漏えい事故等が発生した場合は、電気機械器具等の使用を直ちに停止し電源を遮断して屋内貯蔵所の外へ退避することとされています。
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目次
屋内貯蔵所でIoT機器がこれまで使いにくかったのはなぜか

危険物を保管する屋内貯蔵所は、火花を発する機器の使用が原則として制限されてきました。
その根拠になっているのが、危険物の規制に関する政令の条文です。
危険物を貯蔵する倉庫の内部は、可燃性の蒸気等がもれ、または滞留するおそれのある場所とみなされてきました。
そのため、在庫管理や温度監視にIoT機器やタブレット端末を持ち込みたくても、火花を発する機器として使用できないという扱いが続いていました。
一方で「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」の検討を踏まえ、消防庁は一定の要件を満たす屋内貯蔵所については扱いを見直すことにしました。
その要件がどんな場所を指すのかを、次に確認します。
うちの倉庫は詰め替え作業はしていませんが
それでも対象外になるのでしょうか。
詰め替えの有無が一つの条件になります。
次は具体的な要件を見ていきましょう。
IoT機器が使える屋内貯蔵所はどんな条件を満たす場所か

扱いが変わるのは、すべての屋内貯蔵所ではありません。
通知は具体的に2つの条件を示しています。
一つ目は、貯蔵に伴う少量の危険物の詰替え・小分け・混合等の取扱いが行われていないことです。
二つ目は、政令第10条第1項第12号が定める換気設備が正常に稼働していることで、引火点が70度未満の危険物を扱う倉庫では屋根上への排出設備も稼働している必要があります。
この2つの要件を満たす屋内貯蔵所の内部は、火花を発する機器の使用を禁じる場所には当たらないものとして扱ってよいとされました。
条件を満たしたうえで、実際にIoT機器等を使うにはどんな手順が必要になるのかを次に見ていきます。
換気扇が回っていれば大丈夫ということですね。
稼働の記録も残しておくと安心です。
次は実際の使用手順を確認しましょう。
要件を満たした屋内貯蔵所でIoT機器を使うにはどうすればよいか

2つの条件を満たしていても、使いっぱなしにしてよいわけではありません。
通知は使用中の確認事項も定めています。
持ち出しできるタブレット等の非固定式で非防爆構造の機器を使う場合は、防爆構造の可燃性ガス検知機を常時稼働させて周囲の安全を確認しながら使うことになります。
万一、危険物の漏えい事故等が発生したときは、その場で機器の使用を止めるだけでなく、電源を遮断して屋内貯蔵所の外へ退避することが求められます。
安全が確認できるまでは、再び機器を屋内に持ち込んで使用してはいけません。
消防機関も、こうした運用が実際に確保されているかを資料等で確認することとされています。
検知器が鳴ったらすぐに機器を止めればよいのでしょうか。
電源を切って退避することまでが手順です。
次は見落としやすい落とし穴を確認しましょう。
固定式の電気機械器具まで防爆構造を外せるわけではないのはなぜか

ここまでの話を、固定式の設備にもそのまま当てはめてしまう誤解が起きがちです。
通知は固定式について別に項目を立てています。
壁や天井に据え付けて容易に持ち出せない固定式の電気機械器具等は、引き続き防爆構造のものを設置することが原則のままです。
特に、事故時に機能の確保が求められる照明・消火設備・警報設備等の固定式機器は、この原則から外れません。
それ以外の固定式機器に限っては、通電を遮断する装置やインターロック機能を設けることを条件に、非防爆構造のものを設置できる余地があるとされています。
IoT機器等の運用見直しは、あくまで持ち出しできる非固定式の機器が対象だという線引きを取り違えないことが大切です。
据え付けの照明も交換できると思っていました。
固定式の照明・消火設備・警報設備は対象外です。
最後に確認の手順をまとめます。
明日から屋内貯蔵所のIoT導入に向けて何を確認すればよいか

最後に、実際に確認すべき手順を整理します。
これも通知の内容がもとになっています。
詰め替え・小分け・混合等の作業を行っていないか、換気設備が正常に稼働しているかをあらためて点検します。
条件を満たしていれば、使う予定の機器が固定式か非固定式かを整理し、非固定式であれば可燃性ガス検知機を用意します。
漏えい事故等が起きたときの使用停止・電源遮断・退避の手順をあらかじめ決めておき、資料としてまとめておくと、消防機関の確認にもそのまま対応できます。
不明な点があれば、届出や検査を待たずに所轄消防署へ事前に相談しておくことをおすすめします。
まずは換気設備が正常に動いているか確認してみます。
稼働の記録も残しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
換気設備の稼働記録から確認してみます!
ガス検知機の準備もあわせてご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「屋内貯蔵所において電気機械器具等を使用する場合の運用について」(令和6年3月29日消防危第80号)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第24条第13号・第10条第1項第12号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





