工事中の建物にはまだ検査済証が出ていません。
それでも一部だけ先に使いたいという相談は、新築でも増改築でも珍しくありません。
建築基準法は仮使用という例外を用意していますが、認められる条件は新築の建物と、営業しながら改修する既存の建物とで違います。
本記事では新築と既存それぞれで問われる承認基準の中身と、承認後も気をつけたい期限を条文にもとづいて解説します。
増築工事の間も、店舗の一部は営業を続けたいんですが、検査が終わるまでは無理なんでしょうか。
仮使用の認定を受ければ可能です。
ただし満たすべき基準が新築と既存で変わります。
うちは既存の建物の増築なので、その基準がどう変わるのか気になります。
順番に見ていきましょう。
新築の基準・既存の基準・承認の期限の3つがポイントです。
- 建築基準法第7条の6により、工事中の建物は原則として検査済証の交付前は使用できませんが、特定行政庁が安全上・防火上・避難上支障がないと認めたときは仮使用が認められます
- 新築の建築物または増築部分を仮使用するときは、防火区画・廊下や避難階段・排煙設備・非常用照明・非常用進入口・内装・非常用の昇降機・消防用設備等の規定に適合していることが求められます
- 増築・改築等を行う既存の建築物では、仮設屋外階段やおおむね1ルクス程度の非常用照明などの代替措置がある場合に限り一部の規定への適合が緩和されます
- 仮使用を承認する期間は、工事計画等を勘案し原則として3年以内で定めることとされています
- 建築部局における手続の改正であっても消防法令や火災予防条例に基づく手続そのものは変わらないため、消防機関との連絡体制もあわせて確認しておくことが実務の備えになります
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目次
工事中の建物は検査済証が出る前でも使えるのか

ただし例外として、仮に使用できる場合が条文に定められています。
検査済証が交付されるまでの間、避難施設等に関わる工事を含む建物は本来使用できません。
その例外の一つが、特定行政庁が安全上・防火上・避難上支障がないと認めたときです。
この認定は、仮使用承認準則という技術的な目安を踏まえて判断されます。
新築の建物と既存の建物とでは、この目安の中身が変わります。
うちは新築なんですが、それでも基準を満たせば大丈夫ということですね。
そうです。
次の章で、新築のときに問われる項目を見ていきましょう。
新築中の建物を仮使用するにはどの基準に適合させるのか

確認される項目は、大きく分けて3つあります。
防火区画や廊下・避難階段・出入口、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の進入口、内装、非常用の昇降機という建築基準法施行令の規定に加え、消防法第17条の消防用設備等の基準まで対象になります。
さらに、仮使用する部分とそれ以外の工事中の部分は、耐火構造の壁や不燃材料の間仕切りなどで防火上有効に区画されていることが求められます。
そのうえで、工事に使う火気や資材の管理方法、防火管理の体制まで計画されていることが確認されます。
避難施設と消防用設備の両方がそろって初めて、仮使用の対象として認められるということです。
避難施設だけでなく、消防用の設備までチェックされるんですね。
はい。
どちらか一方が欠けても仮使用の対象にはなりません。
増築中の建物ではどこが緩和されるのか

そこで、代わりの措置があれば規定への適合を求めない扱いが用意されています。
直通階段や避難階段、出口の規定は、仮設の屋外階段や梯子が建物の形態に応じて適切に設けてあれば、その部分では求められません。
非常用の照明も、小規模な居室やバッテリー内蔵型の照明でおおむね1ルクス程度の明るさが確保されていれば代わりになります。
非常用の進入口についても、消防機関が消防活動上支障がないと認める措置があれば、規定どおりの構造でなくても差し支えないとされています。
どの代替措置も、事前に消防機関へ「これで支障がないか」を確認しておくことが前提になります。
うちの現場は屋外に仮設の階段を置いているので、その分は当てはまりそうです。
はい。
その仮設階段の写真と配置図を、申請の書類に添えておくと話が早くなります。
承認されたらいつまで仮使用を続けられるのか

承認の期間そのものにも目安が定められています。
仮使用の期間が長くなるほど、その間に工事の状況が変わり、当初確認した安全対策と実態がずれるおそれがあります。
そのため、承認する期間は工事計画を踏まえて原則3年以内で定めることとされました。
この期間の考え方は消防庁からの通知でもあらためて示されており、消防機関の側でもこの承認期間を前提に運用が図られています。
工事が計画どおりに進んでいないときは、期間内であっても早めに建築部局へ相談しておくと安心です。
工期が延びそうなときは、どうすればいいんでしょうか。
承認の期限が来る前に、特定行政庁へ工事計画の見直しを相談してください。
仮使用を申請する前に消防とはどう連携すればよいのか

消防庁からの通知でも、この点があらためて示されています。
仮使用の承認は建築基準法にもとづく建築部局の手続で、消防法令や火災予防条例にもとづく手続そのものを変えるものではありません。
それでも消防庁は、この制度が改正されるたびに、建築部局と消防機関の協力・連絡体制を確認するよう求めています。
申請の際に提出する安全計画書には、工事に使う火気や資材の管理方法、防火管理の体制まで書き込む必要があります。
仮使用の申請を検討し始めた段階で、所轄の消防署にも一度相談しておくと、建築部局とのやり取りもスムーズになります。
建築の手続だけで完結する話じゃないんですね。
消防署にも早めに相談してみます。
早めの相談が、承認までの一番の近道です。
申請の準備を始める前に、一度連絡してみてください。
よくある質問
まとめ
新築か既存かで見る条文が変わることが分かりました。
まずは特定行政庁と消防署、両方に早めに相談してみます。
新築の基準・既存の基準・3年以内の期限、この3つを押さえておけば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第7条の6
- 建築基準法施行令第112条、第120条、第121条、第125条、第126条の4、第126条の5、第126条の6、第126条の7、第129条の13の3
- 消防法第17条
- 仮使用承認準則(昭和53年11月7日 建設省住指発第805号、平成9年3月31日 建設省住指発第169号による改正を含む)
- 仮使用承認制度の的確な運用について(平成9年5月14日 消防予第93号 消防庁予防課長通知)
※本記事は公表されている法令および国土交通省・消防庁の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





