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大規模な建物は工事中も使用を続けられるのか|避難施設等の工事と安全計画の届出義務を解説

避難階段の改修工事中も通常営業を続けるホテルの外観

病院やホテル、百貨店といった大規模な施設では、避難階段や廊下の改修工事をしながら営業を続けたいという場面が少なくありません。
しかし建物を使い続けながら避難施設に手を入れる工事には、消防法令とは別に建築基準法が独自の手続きを定めています。
工事の影響で避難や防火の機能が一時的に低下する以上、届出や計画なしに済ませてよいものではありません。
本記事では安全計画の届出が必要になる建物の規模と、計画に盛り込むべき内容、行政による使用禁止命令の要件まで条文にもとづいて解説します

うちのホテルも避難階段の改修を考えているんですが、営業を続けながら工事してもいいものでしょうか。

はい、一定規模の建物では避難施設等に関する工事中も使用を続けるなら、事前に安全計画の届出が必要です。

届出が必要な規模まで決まっているんですね。

この記事で対象になる建物の規模から、計画の中身、命令が出る場合まで順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 百貨店やマーケットは、3階以上の階又は地階の部分の床面積の合計が1,500平方メートルを超えると安全計画の届出対象になります。
  • 病院や患者の収容施設がある診療所、児童福祉施設等は、5階以上の階の床面積の合計が1,500平方メートルを超えると対象になります。
  • 劇場やホテル、飲食店等の用途は、5階以上の階又は地階の部分が2,000平方メートルを超えると対象になります。
  • 地下街のような地下の工作物内の建築物も、居室の床面積の合計が1,500平方メートルを超えると対象です。
  • 計画に不備があり安全上・防火上・避難上著しく支障があると認められた場合、特定行政庁は使用禁止や使用制限を命じることができます

安全計画届出の対象になる百貨店病院劇場地下街の4類型と一定規模なら工事中の使用に届出が必要なことを示した図解

大規模な建物は工事中も使用を続けてよいのか

避難階段の改修工事中も営業を続けるホテルの建物外観
避難階段や廊下といった避難施設等に手を入れる工事は、建物の防火や避難の機能そのものに影響します。
それでも使用を続けたい場合、建築基準法は消防法令とは別の入口を用意しています。
建築基準法第九十条の三 別表第一(い)欄の(1)項、(2)項及び(4)項に掲げる用途に供する建築物並びに地下の工作物内に設ける建築物で政令で定めるものの新築の工事又はこれらの建築物に係る避難施設等に関する工事の施工中において当該建築物を使用し、又は使用させる場合においては、当該建築主は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、当該工事の施工中における当該建築物の安全上、防火上又は避難上の措置に関する計画を作成して特定行政庁に届け出なければならない
避難施設等の工事中も使用を続けることは認められていますが、事前の届出が条件になります
対象は新築工事だけでなく、すでに使われている建物の避難施設等に関する工事にも及びます。
届出の相手は消防機関ではなく、特定行政庁という建築確認を所管する行政庁です。
まずは自分の建物がこの届出の対象になるかどうかを、次の規模要件で確認しましょう。

消防計画とは別に、建築基準法の届出まで要るんですね。

安全計画書という別の書類です。
次に対象になる建物の規模を見ていきましょう。

どんな規模の建物が安全計画届の対象になるのか

百貨店と病院とホテルが並ぶ大規模施設の街並み
届出が必要になるかどうかは、用途と規模の組み合わせで細かく線引きされています。
建築基準法施行令は対象となる建築物を4つの類型に分けて定めています。
建築基準法施行令第百四十七条の二(抜粋) 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場の用途に供する建築物で3階以上の階又は地階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が1,500平方メートルを超えるもの。病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)又は児童福祉施設等の用途に供する建築物で5階以上の階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が1,500平方メートルを超えるもの。劇場、ホテル、旅館、飲食店等の用途又は前二号に掲げる用途に供する建築物で5階以上の階又は地階におけるその用途に供する部分の床面積の合計が2,000平方メートルを超えるもの。地下の工作物内に設ける建築物で居室の床面積の合計が1,500平方メートルを超えるもの
対象になるのは百貨店・病院・劇場やホテルなど4つの用途類型と、床面積の基準を満たす建物です
百貨店やマーケットは3階以上の階又は地階、病院や児童福祉施設は5階以上の階が基準になり、いずれも床面積の合計1,500平方メートル超が条件です。
劇場やホテル、飲食店等は基準がやや広く、床面積の合計2,000平方メートルを超えると対象になります。
地下街のような地下の工作物内の建築物は、居室の床面積の合計1,500平方メートル超で対象です。
自分の建物がどの類型に当てはまるか、延べ床面積だけでなく階数もあわせて確認しておきましょう。

うちは5階建てのホテルなので、2,000平方メートルの基準に当てはまるか確認しないといけませんね。

各階の床面積を合計した数字で見る点に注意してください。

計画にはどんな内容を記載しなければならないのか

工事計画書と安全計画書の書類を確認する担当者
安全計画の届出は書面を提出すれば終わりではなく、決められた図書をそろえる必要があります。
なかでも実務の中心になるのが工事計画書と安全計画書の2つです。
建築基準法施行規則第十一条の二(抜粋) 工事計画書には工事により機能の確保に支障を生ずる避難施設等の種類、箇所及び工事期間、工事に伴う火気の種類、使用場所及び使用期間、工事に使用する資材及び機械器具の種類、量並びに集積、設置等の場所、方法及び期間を明示する。安全計画書には工事の施工中における使用部分及びその用途並びに工事により機能の確保に支障を生ずる避難施設等に係る代替措置の概要、使用する火気、資材及び機械器具の管理の方法その他安全上、防火上又は避難上講ずる措置の内容を明示する。
どの避難施設が使えなくなるのかと、その代わりに何をするのかを両方書く必要があります
工事計画書では機能が止まる避難施設等の種類と期間、火気や資材の取り扱いまで具体的に明示します。
安全計画書では代替措置の概要、つまり階段が使えない間はどの経路に誘導するかといった代わりの手当てが問われます。
付近見取図や配置図、工事着手前の各階平面図もあわせて提出図書に含まれます。
避難経路が一時的に変わるなら、代替措置を利用者にどう周知するかもあわせて詰めておきましょう。

避難階段が使えない間、代わりの経路まで書類に書くんですね。

利用者の避難経路が実際に確保できるかが問われるので、図面だけでなく運用まで具体的に詰めておきましょう。

計画が不十分だとどうなるのか

使用禁止の掲示が貼られた工事中の建物の入口
安全計画を届け出ても、それだけで工事中の安全が保証されるわけではありません。
実際の工事が計画どおりに行われていない場合、行政庁には強い権限が用意されています。
建築基準法第九十条の二 特定行政庁は、第九条又は第十条の規定による場合のほか、建築、修繕若しくは模様替又は除却の工事の施工中に使用されている(略)建築物が、安全上、防火上又は避難上著しく支障があると認める場合においては、当該建築物の建築主又は所有者、管理者若しくは占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の使用禁止、使用制限その他安全上、防火上又は避難上必要な措置を採ることを命ずることができる
著しく支障があると認められれば、特定行政庁は使用禁止や使用制限を命じることができます
命令の対象は建築主だけでなく所有者・管理者・占有者にも及ぶため、テナントとして建物を借りている立場でも無関係ではありません。
命令には相当の猶予期限を付けることが定められており、いきなり即時使用禁止になるわけではありません。
安全計画書どおりに代替措置が機能していないと判断されれば、この命令の対象になり得ます。
届出した計画は出しっぱなしにせず、工事の進行にあわせて実際の運用と一致しているか見直しましょう。

届出さえ出せば安心、というわけではないんですね。

計画と実際の工事内容が一致しているかが肝心なので、進捗にあわせて確認してください。

明日からなにを確認すればよいか

建物の図面を前に打ち合わせる担当者と工事業者
避難施設等の工事を計画している段階で、早めに確認しておきたいポイントを整理します。
建築側の手続きと消防側の手続きは別物なので、両方を並行して進める必要があります。
建築基準法施行規則第十一条の二第2項 法第七条の六第1項第1号若しくは第2号又は法第十八条第38項第1号若しくは第2号の規定による仮使用の認定を受けた者が前項の届出をする場合においては、同項の規定にかかわらず、同項の表に掲げる図書を添えることを要しない
すでに仮使用の認定を受けている場合は、添付図書の一部を省略できます
まずは自分の建物が施行令第百四十七条の二の対象規模に当てはまるかを確認しましょう。
対象なら、特定行政庁の窓口へ工事計画書・安全計画書を含む届出書を工事着手前に相談します。
安全計画書は消防法令上の消防計画とは別の書類なので、防火管理者を通じて所轄消防署への届出もあわせて確認してください。
建築と消防、両方の窓口に早めに相談しておくことが、工事中のトラブルを避ける一番の近道です。

建築と消防、両方に相談しないといけないのは手間ですね。

着手前の早い段階で両方に相談しておくと、工事中の手戻りを防げます。

よくある質問

Q安全計画の届出は消防法令上の消防計画の代わりになりますか?
Aいいえ、なりません。安全計画書は建築基準法第九十条の三にもとづく建築側の届出で、消防法令上の工事中の消防計画とは別の手続きです。両方を別々に届け出る必要があります。
Q届出の対象規模に満たない建物なら、工事中の使用制限は一切かかりませんか?
A対象規模に満たなくても、著しく安全上、防火上又は避難上支障があると特定行政庁が認めれば、第九十条の二にもとづき使用禁止等を命じられる可能性は規模を問わず残ります。
Q安全計画を届け出た後、内容を変更したい場合はどうすればよいですか?
A建築基準法施行規則第十一条の二は計画を変更した場合も同様に届け出ると定めています。工事内容が変わったら、その都度特定行政庁への届出をやり直す必要があります。
Q仮使用の認定を受けていれば、安全計画の届出そのものが不要になりますか?
A不要にはなりません。仮使用の認定を受けている場合でも届出そのものは必要で、省略できるのは添付する図書の一部だけです。

まとめ

大規模な施設は、避難施設等に関する工事中も使用を続けるなら事前の安全計画届出が必要です。
対象になるのは百貨店・病院・劇場やホテルなど4つの用途類型と、床面積等の規模要件を満たす建物です。
百貨店やマーケットは3階以上の階又は地階、病院等は5階以上の階で床面積合計1,500平方メートル超が基準です。
劇場やホテル、飲食店等は床面積合計2,000平方メートル超で対象になります。
提出する図書には工事計画書と安全計画書が含まれ、代替措置の概要まで明示が必要です。
著しく支障があると認められれば、特定行政庁は使用禁止や使用制限を命じることができます。
安全計画書は消防法令上の消防計画とは別物で、両方の届出を並行して進める必要があります。

対象規模の確認から届出書類まで、早めに建築部局と消防署の両方に相談してみます!

安全計画の届出や工事中の防火管理に不安があれば、いつでもお声がけください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第九十条の二(工事中の特殊建築物等に対する措置)
  • 建築基準法第九十条の三(工事中における安全上の措置等に関する計画の届出)
  • 建築基準法施行令第百四十七条の二(工事中における安全上の措置等に関する計画の届出を要する建築物)
  • 建築基準法施行規則第十一条の二(安全上の措置等に関する計画届の様式)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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