建物で火災が起きると、消防から聴取や資料提出を求められることがあります。
これまでは対面での立会いと書類への押印が当たり前とされてきました。
令和4年、消防庁は火災調査書類の様式を見直し、押印を原則廃止して電話やメールでの聴取も認めました。
この記事では、改訂の中身と、任意の質問と資料提出命令の違いという実務の落とし穴を解説します。
先日ボヤがあったのですが、消防から電話で聴取したいと言われました。
書類に判子を押さなくても大丈夫なのでしょうか。
はい、大丈夫です。
令和4年の通知で、押印は原則不要になったんですよ。
電話だけで聴取が終わるなら、資料を出せと言われても断っていいんでしょうか。
いいえ、それは別の話です。
資料提出命令には応じる義務があり、拒むと罰則もあるんです。
- 令和4年8月19日、消防庁は消防予第398号「火災調査書類様式例の見直し及び標準火災調査書類作成マニュアルの策定等について」を発出しました
- 従来の標準様式にあった押印欄は原則廃止され、質問の聴取も対面によらずメールや電話で行えるようになりました
- 火災による死者・負傷者に関する様式や、消防法第32条・第34条に基づく資料提出命令・報告徴収の様式も新たに標準様式として定められました
- 押印が無くなっても質問や資料提出命令に応じる義務は変わらず、拒否すれば罰則の対象になり得ます
- 標準的な火災調査書類作成マニュアルも新たに策定され、消防本部ごとの実務のばらつきを減らす取り組みが進んでいます
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目次
火災調査の書式はなぜ全国でばらばらだったのか

そこには、現場が抱える構造的な事情がありました。
火災の件数そのものは年々減っていますが、原因は多様化・複雑化しており、調査の難しさはむしろ増しています。
これまでは平成7年に示された古い様式例を土台に、消防本部ごとに独自の書式を追加する運用が続いていました。
令和3年度に発足した「火災調査の業務効率化の実現に向けたプロジェクトチーム」が、様式とマニュアルの両方を全国共通の形に整理し直しました。
つまり今回の改訂は、現場の負担を減らすと同時に、調査の質を維持するための取り組みです。
うちの近くの消防本部、前に見た書式と少し違う気がしていたんですが、気のせいじゃなかったんですね。
はい、そのとおりです。
令和4年の改訂で、全国共通の書式に整理されつつあるんですよ。
改訂後の様式とマニュアルはどんな火災の調査に使われるのか

建物で火災が起きれば、皆さんの建物もこの調査の対象になります。
ボヤのような小さな火災でも、消防法第31条に基づいて必ず調査が行われます。
今回の通知はこの調査そのものの根拠を変えるものではなく、調査で使う書類の様式とマニュアルを全国共通にするものです。
都道府県から市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む)へ周知され、各消防本部が改訂後の様式を参考に自分たちの書式を見直す仕組みになっています。
つまり皆さんの建物で火災が起きれば、規模の大小にかかわらずこの改訂の対象になるということです。
小さなボヤでも、ちゃんとした調査書類が作られるんですか。
はい、作られます。
消防法第31条で、消防はすべての火災を調査する義務があるんです。
押印廃止と非対面の聴取で何が変わったのか

まず押さえたいのは、押印と聴取の方法が変わったことです。
従来の標準様式には押印欄があり、質問調査書への回答は対面で立ち会って行うのが基本でした。
改訂後は押印欄が原則廃止され、質問調査書にはメールや電話など、立ち会わずに聴取する方法を選べる項目が新設されました。
このほか様式の統合(防火管理等調書を火災調査書へ一本化)や、専門用語の言い換え(「調書」を「調査書」、「供述」を「申述」に変更)も行われています。
書式の見た目は変わりましたが、聴取そのものの目的や重みが軽くなったわけではありません。
押印がいらなくなったなら、後日メールで済ませてしまってもいいんですか。
内容によっては可能です。
ただし対面かメールかは、消防本部の判断で決まりますよ。
任意の質問と資料提出命令はどこが違うのか

見落としやすいのは、質問と資料提出命令の重さの違いです。
今回の改訂で新設された様式は、死者・負傷者に関する様式と、消防法第32条・第34条に基づく資料提出命令・報告徴収の様式の2種類です。
第32条の質問は任意ですが、資料提出命令・報告徴収は正当な理由なく拒めば罰則の対象になり得ます。
押印が不要になり、聴取もメールや電話でよくなったことで手続き全体が軽いものに見えるかもしれませんが、命令に基づく資料提出である場合はそうではありません。
届いた書面や連絡が、どちらの手続きに基づくものかを確認する姿勢が欠かせません。
電話で聞かれただけなので、資料の提出も適当でいいのかと思っていました。
そこが落とし穴です。
資料提出命令なら、応じないと罰則もあり得るので注意してくださいね。
調査の連絡が来たら明日から何を確認すればよいか

確認する順番を決めておくと、慌てずに対応できます。
半数以上の消防本部が独自マニュアルを持たなかったこれまでの状況を踏まえ、今回は全国共通のマニュアルも作られました。
連絡が来たら、①対面かメールか電話かという聴取の方法、②任意の質問(第32条)か資料提出命令・報告徴収(第32条・第34条)かという手続きの種類、③押印欄の有無にかかわらず回答内容が調査書に残ることの3点を確認してください。
特異な火災で原因の調査が難しい場合は、消防本部が総務省消防庁消防大学校消防研究センターの技術支援を受けることもあります。
書式が変わっても、調査に協力する基本姿勢は以前と変わりません。
電話で聴取すると言われたら、まずどこを確認すればいいですか。
聴取の方法と、任意か命令かをまず確認しましょう。
それだけで対応がぐっと楽になりますよ。
よくある質問
まとめ
書式が変わっても、聴取にはちゃんと協力しないといけないんですね。
今度火災の連絡が来たら、まず方法と種類を確認します!
それが一番大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 火災調査書類様式例の見直し及び標準火災調査書類作成マニュアルの策定等について(通知)(令和4年8月19日 消防予第398号 消防庁予防課長通知)
- 消防法第31条(火災原因調査の義務)
- 消防法第32条(質問及び資料提出命令)
- 消防法第34条(資料提出命令及び立入検査)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





