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危険物施設の消火栓設備はなぜ一般の建物と基準が違うのか|屋内と屋外で変わる水量と放水量を解説

危険物施設の消火栓設備を点検する作業員

危険物を大量に貯蔵・取扱う施設では、火災が起きたときの燃え広がり方も熱量も、一般の建物とはまったく違います。
だから消防用設備等の基準も、消防法施行令とは別に、危険物の規制に関する政令と規則が専用の数値を定めています。
その代表が消火栓設備で、屋内消火栓と屋外消火栓のどちらも、水平距離・水源の量・放水の勢いまで細かく決まっています。
この記事では、危険物施設専用の消火栓設備の基準を、屋内と屋外の違いを軸に整理します。

うちの施設の消火栓、普通の建物と基準が違うって言われたんです。

はい。
危険物を扱う施設は、危険物の規制に関する政令と規則で専用の基準が決まっています。

屋内と屋外で数字が違うと聞いたんですが、どこがどう違うんでしょうか。

水平距離も水源の量も放水の勢いも、それぞれ別に決まっています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物施設で著しく消火が困難と判定されると、第一種消火設備(屋内消火栓・屋外消火栓など)の設置が義務になります
  • 屋内消火栓は水平距離25メートル以下、屋外消火栓は水平距離40メートル以下という配置基準があります
  • 水源の水量は屋内が7.8立方メートル×設置個数(上限5)、屋外が13.5立方メートル×設置個数(上限4)以上です
  • 放水圧力は0.35メガパスカル以上で、放水量は屋内260リットル毎分・屋外450リットル毎分以上です
  • 一般建築物向け(消防法施行令)の屋外消火栓とは水源・放水量の数値が異なるので混同してはいけません

危険物施設の消火栓設備は屋内が水平距離二十五メートル屋外が水平距離四十メートルで水源は立方メートルで算定し放水量と圧力にも基準があることを示す図解

危険物施設の消火栓設備はなぜ一般の建物と別の基準になるのか

大きな貯蔵建物とタンクの周囲に赤い消火栓が並ぶイメージ
危険物施設の消火設備は、一般建築物とは別の法令で数字が決まっています。
まずはその位置づけから確認します。
危険物の規制に関する政令第二十条第一項第一号 製造所、屋内貯蔵所、屋外タンク貯蔵所、屋内タンク貯蔵所、屋外貯蔵所、給油取扱所及び一般取扱所のうち、その規模、貯蔵し、又は取り扱う危険物の品名及び最大数量等により、火災が発生したとき著しく消火が困難と認められるもので総務省令で定めるもの並びに移送取扱所は、総務省令で定めるところにより、別表第五に掲げる対象物について同表においてその消火に適応するものとされる消火設備のうち、第一種、第二種又は第三種の消火設備並びに第四種及び第五種の消火設備を設置すること。
危険物施設の消火設備は、一般建築物とは別の法令で決まります。
政令第20条第1項は、規模や危険物の量から著しく消火が困難と判定された施設に、第一種・第二種・第三種のいずれかと、第四種・第五種の消火設備をあわせて設置するよう求めています。
屋内消火栓設備と屋外消火栓設備は、この第一種消火設備の代表的な種類です。
どちらを選ぶか、両方必要かは、危険物の種類や施設の構造によって別表第五で決まります。
まずは、この二つの設備そのものの技術基準を押さえましょう。

うちは指定数量の倍数がかなり多いので、著しく消火が困難な施設に当たるかもしれません。

その場合は第一種消火設備の設置が必要になります。
詳しく見ていきましょう。

屋内消火栓と屋外消火栓は配置基準がどう違うのか

壁面の屋内消火栓箱と屋外に立つ消火栓を並べたイメージ
屋内消火栓と屋外消火栓では、設置の目安になる距離がまったく違います。
数字だけ見ると混同しやすいので整理します。
危険物の規制に関する規則第三十二条第一号 屋内消火栓は、製造所等の建築物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離が二十五メートル以下となるように設けること。この場合において、屋内消火栓は、各階の出入口付近に一個以上設けなければならない。第三十二条の二第一号 屋外消火栓は、防護対象物(略)の各部分(略)から一のホース接続口までの水平距離が四十メートル以下となるように設けること。この場合において、その設置個数が一であるときは二としなければならない。
屋内消火栓と屋外消火栓では、設置の目安になる距離がまったく違います。
屋内消火栓は建物の階ごとに、その階の各部分からホース接続口までの水平距離が25メートル以下になるように配置し、各階の出入口付近に1個以上を設けます。
屋外消火栓は建物や工作物、危険物そのものを含めた「防護対象物」の各部分から水平距離40メートル以下となるように設け、設置個数が1個なら2個に増やさなければなりません。
屋内は建物の中を守る設備、屋外は敷地全体を守る設備という位置づけの違いが、この数字の差に表れています。
どちらも、まず配置の距離を満たしてから水源や放水性能の基準に進みます。

屋内も屋外も同じ距離だと思っていました。

屋内は25メートル、屋外は40メートルと、はっきり分かれています。

水源の水量と放水性能はどう決まるのか

地下の水源タンクとポンプから放水するノズルのイメージ
水源の水量と放水の勢いは、設置個数から計算式で求めます。
条文の数字をそのまま当てはめれば算出できます。
危険物の規制に関する規則第三十二条第二号・第三号 水源は、その水量が屋内消火栓の設置個数が最も多い階における当該設置個数(当該設置個数が五を超えるときは、五)に七・八立方メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。(略)放水圧力が〇・三五メガパスカル以上で、かつ、放水量が二百六十リットル毎分以上の性能のものとすること。第三十二条の二第二号・第三号 水源は、その水量が屋外消火栓の設置個数(当該設置個数が四を超えるときは、四)に十三・五立方メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。(略)放水圧力が〇・三五メガパスカル以上で、かつ、放水量が四百五十リットル毎分以上の性能のものとすること。
水源の水量と放水の勢いは、設置個数から計算式で求めます。
屋内消火栓の水源は、設置個数が最も多い階の個数(上限5)に7.8立方メートルを掛けた量以上、屋外消火栓の水源は設置個数(上限4)に13.5立方メートルを掛けた量以上を確保します。
放水性能は、すべての消火栓を同時に使用した状態で、ノズルの先端の放水圧力が0.35メガパスカル以上、放水量は屋内が260リットル毎分以上、屋外が450リットル毎分以上と定められています。
屋外消火栓のほうが水源も放水量も多いのは、建物の外から広い範囲を守る必要があるためです。
どちらの設備にも、停電時に備えた予備動力源の設置もあわせて求められます。

水源の量まで、細かく決まっているんですね。

設置個数に応じた計算式があるので、そのまま当てはめれば求められます。

一般建築物の屋外消火栓と数値を混同していないか

一般建築物脇の小さな屋外消火栓と危険物タンク脇の大きな屋外消火栓を比較したイメージ
一般建築物向けの屋外消火栓設備と、この基準を混同しないよう注意が必要です。
距離は同じでも中身は別物です。
消防法施行令第十九条第三項第一号・第三号・第四号・第六号 屋外消火栓は、建築物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が四十メートル以下となるように設けること。(略)水源は、その水量が屋外消火栓の設置個数(当該設置個数が二を超えるときは、二とする。)に七立方メートルを乗じて得た量以上の量となるように設けること。(略)放水圧力が〇・二五メガパスカル以上で、かつ、放水量が三百五十リットル毎分以上の性能のものとすること。(略)屋外消火栓設備には、非常電源を附置すること。
一般建築物向けの屋外消火栓設備と、この基準を混同しないよう注意が必要です。
消防法施行令第19条が定める一般建築物の屋外消火栓は、水平距離こそ同じ40メートル以下ですが、水源は設置個数(上限2)に7立方メートルを掛けた量以上、放水圧力は0.25メガパスカル以上、放水量は350リットル毎分以上と、危険物施設より小さい数字になっています。
危険物施設は貯蔵・取扱う量そのものが多く、火災の規模も大きくなりやすいため、水源も放水量もひとまわり大きく設定されています。
電源の呼び方も違い、一般建築物は「非常電源」、危険物施設は「予備動力源」と条文上の用語自体が分かれています。
新設や更新のときは、必ず危険物の規制に関する規則の条文で数値を確認してください。

一般の建物の基準を、そのまま参考にしてしまうところでした。

危険物施設は別の基準なので、必ず専用の数値で確認してください。

明日から消火栓設備の何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ作業員が消火栓を点検するイメージ
明日からは、自分の施設がどちらの基準に当てはまるか確認しましょう。
点検の流れに沿って見ていきます。
危険物の規制に関する規則第三十二条第四号・第三十二条の二第四号 屋内消火栓設備には、予備動力源を附置すること。屋外消火栓設備には、予備動力源を附置すること。
明日からは、自分の施設がどちらの基準に当てはまるか確認しましょう。
まず施設が著しく消火が困難な区分に当たるか、既存の点検記録や設置届で確認します。
次に屋内消火栓・屋外消火栓それぞれの水平距離、水源の量、放水性能が現行の基準を満たしているかを点検表と照らし合わせます。
予備動力源が正常に作動するかも、定期点検の対象として忘れずに確認してください。
基準を満たしているか判断に迷う場合は、所轄消防署や専門業者に相談するのが確実です。

うちの施設も、一度確認してみます。

点検記録とあわせて確認しておくと安心です。

よくある質問

Q屋内消火栓と屋外消火栓は両方とも設置しなければならないのですか?
A別表第五が定める組み合わせに従い、施設の区分や危険物の種類に応じて必要な種別が決まります。屋内消火栓と屋外消火栓は同じ第一種消火設備の中の選択肢で、必ず両方が必要になるわけではありません。
Q屋外消火栓の設置個数はなぜ4個までしか数えないのですか?
A水源の水量と放水性能は、実際に同時使用する数を基準に計算します。設置個数が4を超えても4個ぶんの量があれば足りるとされているためです。
Q放水圧力0.35メガパスカルはどうやって確認するのですか?
Aすべての屋内消火栓(屋外消火栓)を同時に使用した状態で、それぞれのノズルの先端で放水圧力と放水量を測定して確認します。定期点検の対象にもなります。
Q消防法施行令の屋外消火栓設備の基準をそのまま使ってもよいですか?
A使えません。危険物施設の屋外消火栓は水源13.5立方メートル・放水量450リットル毎分以上という別の数値が定められているため、一般建築物向けの基準を流用すると不足するおそれがあります。

まとめ

第一種消火設備は著しく消火が困難な製造所等に義務付けられます
屋内消火栓は各階の出入口付近に1個以上、水平距離25メートル以下で配置します
屋外消火栓は水平距離40メートル以下とし、設置個数が1個なら2個にします
屋内消火栓の水源は7.8立方メートル×設置個数(上限5)以上です
屋外消火栓の水源は13.5立方メートル×設置個数(上限4)以上です
放水性能は圧力0.35メガパスカル以上で、屋内260リットル毎分・屋外450リットル毎分以上です
どちらの設備にも予備動力源の設置が義務付けられています

消火栓の基準がこんなに細かいとは思いませんでした!

水平距離と水源の数字は、定期点検のときにもあわせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第20条第1項第1号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条・第32条の2
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第19条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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