BLOG

火災調査書類は誰でも開示請求できるのか|消防庁通知が示す部分開示とプライバシー保護の基準を解説

火災調査書類の開示は誰でも求められるのか受付で書類を確認する所有者を写したアイキャッチ画像

工場や店舗で火災が起きたあと、消防の調査書類を見たいと考える所有者は少なくありません。
平成7年、製造物責任法(PL法)の施行を控え、消防庁は開示請求への対応方針を初めて示しました。
指針が示すのは、事実は開示し、プライバシーと企業秘密は守るという線引きです。
この記事では、なにが開示され、なにが開示されないのかを解説します。

うちの工場で火が出たら、原因の書類って見せてもらえるんですか。

消防が作った調査書類は、条件付きで開示してもらえますよ。

条件ってどんなものですか。

出火日時や原因といった事実と、プライバシーに関わる部分とで扱いが変わるんです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は平成7年、火災原因等調査書類の開示請求への対応指針を初めて示しました(「火災原因等調査書類の開示に際しての取扱いについて」平成7年6月27日消防予第144号)。
  • 出火日時、出火場所、火災種別、火災原因など当該火災に係る事実は、原則として開示できるとされています。
  • 添付の写真や図面は、被災者のプライバシーや企業秘密を害するおそれがあれば部分開示にとどめられます。
  • 放火や失火の疑いがあり警察の犯罪調査に影響するおそれがある場合は、開示の時期や内容に特に慎重な配慮が必要です。
  • 開示の可否は各消防本部・自治体の情報公開条例も踏まえて最終的に判断されます。

火災調査書類の開示のうち事実は開示・写真は配慮・疑いは慎重・条例も確認の4つのポイントを示した図解

火災調査書類の開示はなぜ消防庁の指針になったのか

消防の受付窓口で書類を持つ職員と、家電製品を差し出す来訪者のイラスト
「なぜ今、開示のルールが必要になったのか」という背景から見ていきます。
きっかけは、ある法律の施行でした。
「火災原因等調査書類の開示に際しての取扱いについて」(通知)(平成7年6月27日 消防予第144号 消防庁予防課長) 本年7月1日をもって、製造物責任法(平成6年法律第85号)が施行されることとされているが、火災発生の原因が製造物であると考えられる場合には、同法に基づく製造業者等に対する損害賠償の請求に関し、所有者等から消防機関が火災原因調査等に際して入手した情報の開示を求められることが増加することが予想される
製造物責任法(PL法)の施行が、開示請求が増えるきっかけになりました。
製品の欠陥が火災の原因と考えられる場合、所有者はメーカーへ損害賠償を求めるために調査書類が必要になります。
そこで消防庁は、各消防機関がばらばらに対応するのではなく、統一的な指針で開示の可否を判断できるようにしました。
つまりこの指針は、消防の調査記録を開示するかどうかの線引きを最初に整理したものです。

製品が原因だと思ったら、まず何をすればいいんですか。

火災原因等調査書類の開示を、消防に請求することができますよ。

開示の対象になる火災原因等調査書類とはなにか

ファイルの束と、屋根が焦げた家の模型に虫眼鏡を向けているイラスト
開示の話をする前に、対象になる書類そのものを確認しておきます。
根拠になっているのは消防法の2つの条文です。
火災原因等調査書類の開示に際しての取扱指針 1 趣旨 消防法(昭和23年法律第186号)第31条及び第33条の規定に基づき、消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長が行う火災の原因及び損害の調査に関して作成された書類(以下「火災原因等調査書類」という。)について、その開示が請求された場合の取扱いに関して必要な指針を定めるものである。
消防法第31条 消防長又は消防署長は、消火活動をなすとともに火災の原因並びに火災及び消火のために受けた損害の調査に着手しなければならない。 第33条 消防長又は消防署長及び関係保険会社の認めた代理者は、火災の原因及び損害の程度を決定するために火災により破損され又は破壊された財産を調査することができる。
対象になるのは、消防が行う火災原因と損害の調査で作成された書類そのものです。
第31条が調査に着手する義務を、第33条が財産を調査する権限を、それぞれ消防長や消防署長に与えています。
つまり火災調査書類は消防が独自に作る内部資料ではなく、この2つの条文を根拠にした公的な記録です。
指針はこの書類の開示請求に、初めて統一した扱いを与えたといえます。

調査書類って、消防が独自に作ってるものだと思ってました。

いいえ、消防法第31条と第33条が根拠になっている記録なんです。

出火日時や火災原因はどこまで開示してもらえるのか

開かれた書類ファイルと、ページの一部がプライバシー保護のシールドで覆われたファイルのイラスト
指針がいちばん詳しく定めているのは、開示してよい範囲です。
事実の部分と、それ以外の部分とで扱いが分かれています。
火災原因等調査書類の開示に際しての取扱指針 2 取扱いの指針 (2) 開示に際しては、請求者及び請求目的に応じ、記載内容について検討の上、部分開示も含めて開示の可否を判断すること。 ア 出火日時、出火場所、火災種別、火災原因(発火源、経過、着火物等を含む。)等当該火災に係る事実については、原則として開示できることとするが、開示、非開示の判断に当たっては、被災者等のプライバシー及び企業秘密等の保護に十分配慮すること。
出火日時や場所、火災原因といった事実は、原則として開示してもらえます。
一方で、添付される写真や図面は、個人のプライバシーや企業秘密を侵害するおそれがあれば開示されません。
つまり同じ調査書類の中でも、事実の記述と写真・図面とで開示の判断が分かれるということです。
請求するときは、全部か非開示かではなく、部分開示も含めて交渉できると考えておくとよいでしょう。

じゃあ現場の写真は絶対に見せてもらえないんですか。

絶対ではありませんが、プライバシーへの配慮次第で判断が変わります。

放火の疑いがあるときはなにに配慮が必要なのか

警察官と調査員が焦げた壁の建物の前で書類を確認しているイラスト(禁止マーク付き)
放火や失火が疑われる火災には、追加の配慮が必要です。
警察の捜査に影響しないようにするためです。
火災原因等調査書類の開示に際しての取扱指針 2 取扱いの指針 (3) 放火又は失火による火災の疑いがあり、警察機関による犯罪調査に影響を与えるおそれがある場合には、消防法第35条及び第35条の2の規定の趣旨にかんがみ、情報の開示の時期、開示の内容等について配慮するなど特に慎重を期する必要があること。
消防法第35条 放火又は失火の疑いのあるときは、その火災の原因の調査の主たる責任及び権限は、消防長又は消防署長にあるものとする。 消防長又は消防署長は、放火又は失火の犯罪があると認めるときは、直ちにこれを所轄警察署に通報するとともに必要な証拠を集めてその保全につとめ、消防庁において放火又は失火の犯罪捜査の協力の勧告を行うときは、これに従わなければならない。 第35条の2 消防長又は消防署長は、警察官が放火又は失火の犯罪の被疑者を逮捕し又は証拠物を押収したときは、事件が検察官に送致されるまでは、前条第1項の調査をするため、その被疑者に対し質問をし又はその証拠物につき調査をすることができる。
放火の疑いがある事案は、警察の捜査を優先して開示のタイミングを調整します。
第35条は火災原因調査の主たる責任が消防にあることを、第35条の2は逮捕後の質問や証拠調査の権限を定めています。
つまり消防が持つ調査書類でも、犯罪捜査中は開示の時期や内容が制限されることがあります。
所有者側は、放火の疑いがある場合は開示までに時間がかかる可能性を理解しておく必要があります。

疑いがあるだけで、開示してもらえなくなるんですか。

開示できないわけではなく、時期や内容への配慮が増えるということです。

建物の所有者は開示請求のときになにを確認すればよいのか

受付窓口で書類を受け取る来訪者と、チェックリストを持つ手元のイラスト
最後に、実際に請求するときの心構えを確認しておきます。
指針が示す判断材料を踏まえて動くことが大切です。
火災原因等調査書類の開示に際しての取扱指針 2 取扱いの指針 (1) 火災原因等調査書類の開示請求に対する取扱いについては、本指針を基本に行うこと。 イ 上記以外の開示請求に対しては、各団体の情報公開条例及び個人情報保護条例等並びに本指針の趣旨を踏まえつつ、開示の可否を判断するものとすること。
請求先は、火災があった場所を管轄する消防本部になります。
請求目的(損害賠償請求や保険手続きなど)を伝えると、記載内容の検討がしやすくなります。
写真や図面まで含めた全部の開示を前提にせず、部分開示になる可能性を織り込んでおきましょう。
指針そのものに加えて、請求先の自治体の情報公開条例も判断に影響することを覚えておいてください。

請求するときは目的も伝えたほうがいいんですね。

はい、請求目的を伝えると判断がスムーズになりますよ。

よくある質問

Q火災原因等調査書類の開示は誰でも請求できるのか?
A指針は請求者を限定していませんが、請求者及び請求目的に応じて開示の可否が判断されます。
Q開示されないケースはあるのか?
Aあります。被災者等のプライバシーや企業秘密を害するおそれがある部分は、開示されないことがあります。
Q放火の疑いがあるときは開示してもらえないのか?
A開示自体ができなくなるわけではありませんが、警察の犯罪調査に影響しないよう、開示の時期や内容に配慮されます。
Q開示のルールは全国どこでも同じなのか?
A基本はこの指針に基づきますが、対象外の開示請求は各自治体の情報公開条例等も踏まえて判断されます。

まとめ

平成7年、製造物責任法(PL法)の施行を控えて、消防庁は火災原因等調査書類の開示に関する指針を初めて示しました
指針の根拠は消防法第31条及び第33条で、消防が行う火災原因・損害調査の記録を対象にしています。
出火日時、出火場所、火災種別、火災原因といった事実は、原則として開示できるとされています
添付の写真や図面は、プライバシーや企業秘密を害するおそれがあれば部分開示にとどめられます。
放火又は失火の疑いがある場合は、警察の犯罪調査への影響を避けるため開示の時期や内容に配慮されます。
根拠となる消防法第31条・第33条・第35条・第35条の2は、通知発出時から現行まで条文の内容が変わっていません
開示の判断は指針に加え、請求先の自治体の情報公開条例も踏まえて行われます。

情報公開条例も確認しておきます!

㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火災原因等調査書類の開示に際しての取扱いについて(通知)(平成7年6月27日 消防予第144号 消防庁予防課長)
  • 消防法第31条・第33条・第35条・第35条の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
火災調査書類の開示は誰でも求められるのか受付で書類を確認する所有者を写したアイキャッチ画像
工場や店舗で火災が起きたあと、消防の調査書類を見たいと考える所有者は少なくありません。 平成7年、製造物責任法(PL法)の施行を控え、消防庁は開示請求への対応方針を初めて示しました。 指針が示すのは、事実は開示し、プライ...