古いビルや共同住宅の中には、検査済証が見当たらない建物が少なくありません。
そのままでは増築や大規模な修繕に踏み出せないと思われがちです。
けれど国土交通省と消防庁は、書類が無くても活用を進める考え方を示しています。
今回は令和元年の通知が示す確認済証交付の道すじを解説します。
うちのビル、古くて検査済証が見当たらないんです。
このままでは増築なんてできませんよね。
実は検査済証が無くても、増築や大規模修繕に進む道はあります。
国は既存建築ストックの活用を後押ししています。
どういう考え方で確認済証をもらえるんですか。
令和元年の通知が示す2つの場合分けを、順番に見ていきましょう。
- 検査済証が無い既存建築物でも、増築や大規模な修繕・模様替に進む道が用意されている
- 計画全体が最新の建築基準関係規定に適合するなら、通常どおり確認済証が交付される
- 一部に不適合がある場合は、指定確認検査機関等を活用したガイドラインで実体調査を行う
- 不適合の年代が特定できないときは、全体計画認定制度の活用を含め現行基準への適合を検討する
- 根拠は令和元年6月の消防消第81号・消防予第56号による通知
▼

目次
なぜ検査済証のない建物の活用が課題になったのか

それでも建物を使い続けたいというニーズは変わりません。
背景にあるのは平成30年の建築基準法改正です。
既存建築ストックを取り壊さずに活用する方針が明確に打ち出されました。
検査済証が無いというだけで増築等を諦める必要は無いという考え方です。
消防庁もこの通知を令和元年6月に各消防機関へ周知しています。
検査済証が無いだけで、増築を諦めなくていいんですね。
そのとおりです。
次はどんな工事が対象になるのか見てみましょう。
どんな建物のどんな工事が対象になるのか

どんな工事でも対象になるわけではありません。
新築とは違い、既存の建物に手を入れる増築等の場面が想定されています。
工事の計画段階で、まず建物全体を最新の建築基準関係規定と照らし合わせます。
検査済証が無いままでは、この照合作業そのものが難しいという事情があります。
だからこそ次章の考え方が必要になります。
うちも増築を考えているんですが、対象になりますか。
増築や大規模修繕であれば対象になり得ます。
まずは建物全体の現況を確認するところから始めましょう。
確認済証の交付までにどんな考え方が使われるのか

どちらに当たるかで、その後の手続きが変わります。
検査済証が無いという事実だけでは、手続きを止める理由になりません。
一方で、計画の一部に不適合箇所が見つかることもあります。
その場合は「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月 国住指第1137号)等を参考に、既存部分を実体に即して調査します。
調査によって既存不適格かどうかが明らかになれば、計画は前に進みます。
図面が古くて、今の基準に合っているか自分では分かりません。
指定確認検査機関がガイドラインに沿って調査してくれます。
まずは相談することから始めましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを甘く見ると計画が止まってしまいます。
不適合箇所が見つかっても、いつからその状態だったかが分かれば既存不適格として扱えます。
ところが古い建物では、増築や修繕の履歴を示す書類そのものが残っていないことが珍しくありません。
実体違反の可能性を示す資料が無くても、白黒つけられなければ現行基準に合わせる方向で計画を組むことになります。
検査済証だけでなく、増改築の履歴を示す資料もできる限り保管しておくことが実務上の備えになります。
うちの建物、いつ増築したのか記録が残っていないかもしれません。
記録が無いと既存不適格と認めてもらいにくくなります。
今のうちに残っている図面や写真を探しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に手を動かす必要があります。
手元に無ければ、建築確認台帳の記載事項証明などで交付の記録を確かめます。
増築等を計画しているなら、早い段階で指定確認検査機関や特定行政庁に相談してください。
不適合箇所が見つかったときに備えて、増改築の履歴を示す図面や写真も探しておきます。
消防用設備等の側も影響を受けることがあるため、所轄消防署への確認もあわせて進めましょう。
今度の改修の前に、まず検査済証があるか確認してみます。
それが第一歩です。
指定確認検査機関への相談もあわせて進めてください。
よくある質問
まとめ
検査済証が無くても、まず相談してみます!
それがいちばんの近道です。
建築側と消防側のどちらの手続きも、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(情報提供)(令和元年6月24日 消防消第81号・消防予第56号 消防庁予防課長)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第7条第5項・第86条の8
- 検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン(平成26年7月 国土交通省住宅局建築指導課)
※本記事は公表されている法令および国土交通省・消防庁の資料に基づく一般的な解説です。個別の建物の判断は特定行政庁や指定確認検査機関、所轄消防署にご確認ください。運用は自治体や機関ごとに異なる場合があります。





