老人ホームや旅館は、建物をどう作っても消防法令の対象になります。
けれど建築基準法の側には、建物を燃えにくい構造にしなくても済む場合があります。
そのカギを握るのが警報設備です。
今回は施行令が定める対象用途と技術基準を解説します。
うちは高齢者の入所施設なんですが、鉄筋コンクリートじゃないと消防や建築の検査で引っかかりますよね。
実は必ずしもそうとは限りません。
建築基準法には、警報設備を付ければ主要構造部を耐火構造等にしなくてよい建物があります。
うちの施設が対象になるのかどうか、条文で確認したいです。
建築基準法施行令第110条の4と第110条の5に書かれています。
対象用途と警報設備の技術基準を順番に見ていきましょう。
- 建築基準法施行令第110条の4が定める用途(病院・診療所・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎・児童福祉施設等)は、警報設備を設ければ主要構造部を耐火構造等にしなくてよい
- 児童福祉施設等は入所する者の寝室があるものに限られ、通所のみの施設は対象外
- 警報設備は、いずれの室で火災が発生しても有効かつ速やかに感知し各階に報知できるものでなければならない
- 対象は建築基準法第27条第1項第1号の階に限られ、可燃物密度が極めて高い用途などは合理化の対象外
- 令和元年6月の消防予第56号は、この合理化の運用留意事項を消防機関に周知したもの
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目次
なぜ建築基準法は警報設備での代替を認めるようになったのか

きっかけは平成30年の建築基準法改正です。
これまでは病院や旅館などの特殊建築物は、一定の規模を超えると主要構造部を耐火構造にすることが原則でした。
改正後は、建物の用途や規模によって警報設備の設置という別の選択肢が用意されました。
消防庁はこの改正内容を令和元年6月に各消防機関へ通知し、消防同意や立入検査の場面で齟齬が出ないよう周知しています。
つまり建築側の緩和が、そのまま消防側の実務にも直結する話です。
既存の建物を建て替えずに使い続けたい、という発想なんですね。
そのとおりです。
次はどんな用途が対象になるのか見てみましょう。
どんな建物のどんな部分が対象になるのか

思いつきで選べる制度ではありません。
病院・診療所・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎、そして児童福祉施設等の一部です。
逆にいえば、この一覧に無い用途は今回の合理化の対象になりません。
また建築基準法第27条第1項第2号・第3号に当たる規模の大きい建築物は、この用途による適用除外とは別の規制が別途かかります。
自分の建物がこの一覧のどれに当たるかを、まず確認してください。
うちは高齢者の入所施設なので、児童福祉施設等ではないですよね。
老人ホームは施行令の一覧では老人福祉施設に当たり、児童福祉施設等とは別の区分です。
ただ同じ考え方で警報設備の技術基準を確認します。
警報設備には何が求められるのか

警報設備そのものにも基準があります。
一部屋にしか感知器が無い設備では、この基準を満たしません。
具体的な設備としては自動火災報知設備や特定小規模施設用自動火災報知設備が想定されています。
つまり消防法令上すでに位置づけのある設備を、そのまま流用できる仕組みです。
設置位置や感知区域が施行令の基準どおりかは、消防用設備等の点検結果とあわせて確認するとよいでしょう。
うちには自動火災報知設備が付いています。
それで基準を満たすことになりますか。
基本的にはその設備が想定されています。
設置範囲が施行令の要求どおりかは、点検結果とあわせて建築主事にも確認してください。
入所と通所でなぜ扱いが分かれるのか

この違いが対象かどうかを分けます。
夜間に人が泊まる施設は、火災時に避難が遅れやすいため主要構造部の規制が重い意味を持ちます。
一方、日中だけ利用する通所型のデイサービス等は、この一覧の対象から外れます。
同じ「児童福祉施設等」という言葉でも、実態が入所型か通所型かで扱いが変わる点に注意してください。
建物の一部だけを入所用に使っている場合は、その部分の実態で判断されることになります。
デイサービスだけの施設だと、この特例は使えないということですね。
そのとおりです。
入所する者の寝室が無ければ、この一覧の児童福祉施設等には当たりません。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に照らし合わせる作業が必要です。
病院・診療所・ホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎・児童福祉施設等のいずれかに当たるか確認します。
児童福祉施設等であれば、入所する者の寝室があるかどうかも忘れずに見てください。
対象に当たりそうなら、設置済みの警報設備が施行令第110条の5の技術基準を満たすか、点検結果や設計図書で確かめます。
判断に迷う場合は、増改築や用途変更の前に建築主事や所轄消防署へ事前相談しておくと手戻りを防げます。
今度の増築の相談で、建築士にもこの条文を伝えておきます。
それがいちばん確実です。
建築側と消防側の両方から確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
つまり寝室があるかどうかと、警報設備の中身の両方を確認すればいいんですね。
次の増築の打ち合わせで確認します!
それが確実です。
建築側と消防側のどちらの基準も満たしているか迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(情報提供)(令和元年6月24日 消防消第81号・消防予第56号 消防庁予防課長)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第27条第1項第1号
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第110条の4・第110条の5
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または建築主事にご確認ください。





