技術上の基準に適合していれば、市町村長等は許可を与えなければなりません。
では基準に書かれていないことを理由に、許可を拒んだり制限したりできるのでしょうか。
高さ34メートルのタンクと、壁いっぱいの出入口。この二つの照会が同じ問いを投げかけています。
この記事では基準に書かれていないことをどう扱うかを消防庁の質疑応答に沿って整理します。
そこまで大きなタンクは消しきれないのではないでしょうか。
断ることはできないのでしょうか。
断れません。
回答は好ましいものでないとしながらも許可せざるを得ないと述べています。
倉庫の出入口を壁いっぱいにするのも、止められないのでしょうか。
止められません。
回答は甲種防火戸を設ける限り、さしつかえないとしています。
この記事でまとめて解説します!
- 高層の危険物貯蔵タンクは防災的見地からすれば好ましいものでないが基準に適合する場合は許可せざるを得ない
- ただし新潟地震の事故例等にかんがみその高さを20メートル程度に収めるべく計画するよう指導されたいとされた
- 屋内貯蔵所の出入口については壁面積に対する出入口の大きさ割合の規定がない
- 出入口に甲種防火戸を設ける限り、さしつかえないとされている
- 一方で保安距離が足りない計画にただし書の規定を適用することは適当でないとされた例がある
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目次
高さ34メートルのタンクでも基準に適合すれば許可せざるを得ない

昭和39年10月1日付け自消丙予発第109号は、神奈川県からの照会に答えたものです。
川崎市内の製油所に、超高層の屋外貯蔵タンクを設置する計画が出されました。
照会は、この計画が消防法第10条第4項の技術上の基準に適合していると認められるので、同法第11条第2項の規定により法規上は許可を与えなければならないと考えられるとしています。
しかし現場としては受け入れがたい事情がありました。
照会はこの種の超高層タンクを許可した場合においては、消防組織法第6条の消防責任とも関連があり、同市の現有消防力をもつてしては、その災害を十分に防除することは困難な状況であると訴えています。
好ましくないという評価と、許可しなければならないという結論が、同じ文の中に並んでいます。
基準が判断のすべてです。
基準に適合していれば、許可されるのですね。
拒むことはできません。
計画は基準への適合から確かめてください。
ただし高さを20メートル程度に収めるよう指導することは求められた

回答はそこで終わっていません。
許可は拒めないとしたうえで、別の道が示されました。
昭和39年6月の新潟地震では、製油所の原油タンク群が大規模な火災を起こしました。
その事故が起きた直後の照会であり、回答にもその事故名が明記されています。
示された数値は20メートル程度です。
ただしこれは基準ではなく指導であり、従わないことを理由に許可を拒めるものではありません。
指導と基準は別です。
とはいえ、指導が行われることもあるのですね。
事故を受けた助言です。
基準どおりでも、余裕を持った計画にしておきましょう。
屋内貯蔵所の出入口の大きさには割合の規定がない

同じ構図の照会が、その6年後にも出ています。
昭和45年4月21日付け消防予第72号は、栃木県からの照会に答えたものです。
塗料販売会社から、塗料類を貯蔵する屋内貯蔵所の設置許可申請が提出されました。
指定数量の倍数は149.6倍、床面積は140平方メートルという規模です。
そのうえで、制度上の問題を指摘しています。
条文が防火戸のことしか定めていないため、大きさを制限する根拠がないという指摘です。
超高層タンクの照会と、問いの構造がまったく同じです。
根拠がない指摘です。
出入口の大きさには、割合の規定がないのですね。
制限する根拠がありません。
設計の自由度は、防火戸の仕様で担保してください。
甲種防火戸を設ける限り出入口の大きさはさしつかえない

回答は簡潔でした。
懸念そのものには触れず、条文の要求だけを答えています。
条件は甲種防火戸を設けることだけです。
壁面積に対する割合の規定がない以上、それを理由に制限することはできないという整理になります。
二つの照会を並べると、共通する考え方が見えてきます。
基準に書かれていないことを理由に許可を拒んだり制限したりはできないということです。
書いてなければ通ります。
条件は防火戸を設けることだけなのですね。
それで差しつかえないとされました。
戸の種類を、図面で明記しておきましょう。
逆に基準に足りない場合はただし書でも救えない

裏返しの事例も見ておきます。
昭和39年9月30日付け自消丙予発第107号は、宇和島市消防長からの照会に答えたものです。
準防火地域内に灯油等5,000リットルを貯蔵する屋内貯蔵所と、隣接して簡易タンク1基を置く一般取扱所を建設する計画についてのものでした。
基準に書かれていないことは制限できない一方で、基準に足りない場合はただし書でも救われないということです。
どちらも基準という物差しがそのまま結論になっています。
物差しは一つです。
逆に足りない場合は、救われないのですね。
基準がすべての物差しです。
不足がある計画は、早めに見直してください。
よくある質問
まとめ
- 高層の危険物貯蔵タンクの設置は防災的見地からすれば決して好ましいものでない
- しかし政令で定める技術上の基準に適合するものである場合は許可せざるを得ない
- 新潟地震による原油タンク群の事故例等にかんがみ高さを20メートル程度に収めるよう指導することが求められた
- 照会されたタンクは原油33,000キロリットル2基で高さ34.5メートルというものであった
- 政令第10条第1項第8号は出入口の防火戸のみを規定し壁面積に対する大きさ割合の規定を置いていない
- 屋内貯蔵所の出入口に甲種防火戸を設ける限り出入口の大きさはさしつかえない
- 一方で住宅までの距離が足りない計画に政令第9条第1号ただし書を適用することは適当でないとされた
- 基準に書かれていないことは制限できず基準に足りない場合はただし書でも救われない
基準がすべてなので、基準さえ押さえれば通るのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
計画が基準を満たすかどうかの確認も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第11条 e-Gov法令検索
- 消防組織法(昭和22年法律第226号) e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第10条 e-Gov法令検索
- 屋内貯蔵所の保安距離について(昭和39年9月30日付け自消丙予発第107号 予防課長から宇和島市消防長あて回答)
- 超高層屋外貯蔵タンクの高さについて(昭和39年10月1日付け自消丙予発第109号 予防課長から神奈川県企画調査部長あて回答)
- 屋内貯蔵所に設ける出入口の大きさについて(昭和45年4月21日付け消防予第72号 予防課長から栃木県あて回答)
- 屋内貯蔵所と学校との保安距離について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から山形県民生部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




