危険物施設では、扱う危険物の量や種類を増やしたり減らしたりする場面がたびたびあります。
そのたびに建物を改造しなくても、届出だけで済む変更と、あらためて許可を取り直さなければならない変更があります。
この線引きを誤ると、届出のつもりが無許可の変更工事として扱われてしまうことにもなりかねません。
今回は消防法第十一条の四が定める品名・数量・指定数量の倍数変更の届出について解説します。
うちの工場で今月から新しい溶剤を扱うことになったんですが、量も増えるので不安です。
位置や設備を変えないのであれば、変更許可までは不要です。
ただし届出は必要になります。
許可じゃなくて届出でいいんですね。
何を出せばいいんでしょうか。
危険物の品名や数量、指定数量の倍数を変えるときの専用の届出書があります。
今日はその内容を確認しましょう。
- 位置・構造・設備を変えない品名・数量・指定数量の倍数の変更は、変更許可ではなく届出だけで足ります
- 届出の期限は変更しようとする日の十日前までです
- 届出書は規則第七条の三が定める別記様式第十六を使います
- 同じ品名でも含有する物品が変われば別の品名として扱われることがあります
- 施設の規模によっては、届出があった場合も警察等への通報の対象になります
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目次
量や品名だけを変えるときも許可がいるのか

まず確認すべきは、建物や設備そのものに手を入れるかどうかです。
変更許可(同条第一項後段)が要るのは、建物の位置や構造、タンクや配管などの設備そのものを変えるときだけです。
一方で、同じ建物のまま扱う危険物の品名を増やしたり、数量を増減させたりする場合は、この届出の対象になります。
指定数量の倍数とは、扱う危険物の数量を指定数量で割った値のことで、複数の危険物を扱う施設ではそれぞれの倍数を合計した値で判断します。
まずは自分の施設の変更が中身だけなのか、建物や設備そのものに及ぶのかを切り分けることが出発点です。
うちは建物はそのままで、扱う塗料の種類を増やしたいだけです。
それなら届出で対応できます。
次は対象になる範囲を確認しましょう。
届出で済む変更と許可が必要な変更はどこで分かれるのか

結論は条文の言い回しにそのまま出ています。
たとえばタンクの増設や配管の延長は設備の変更にあたるため、変更許可と完成検査が必要です。
一方で、既存の設備の範囲内で扱う危険物の種類を切り替えたり、在庫量の上限を引き上げたりする変更は届出で足ります。
判断に迷うときは自己判断で進めず、先に所轄の消防署へ相談したほうが安全です。
無許可のまま設備を変更してしまうと、あとで許可の取消しや使用停止命令の対象になることもあります。
設備は変えないんですが、量だけ倍くらいに増やしたいんです。
それなら届出の対象です。
次はその届出書に何を書くかを見ていきましょう。
届出書には何を書き含有物質が変わればどうなるのか

あわせて、品名の考え方にも注意が必要です。
別記様式第十六には、変更の内容と変更しようとする日、変更後の品名・数量・指定数量の倍数を記入します。
注意したいのは、別表第一の一部の類は、同じ品名の欄に載っていても含有する物品が変われば別の品名として扱われる点です。
たとえば酸化性固体や自己反応性物質のように、複数の物質がひとつの品名でまとめられている類型でこの扱いが問題になります。
自分の施設で扱う危険物がこの取扱いにあたるかどうかは、事前に確認しておく必要があります。
うちで扱ってる物が、そのどれかに当たるかもしれません。
該当するかどうかは消防署に確認するのが確実です。
次は見落としやすい点を整理します。
届出のつもりで進めて見落としやすいのはどこか

ここでは特に見落としやすい点を取り上げます。
政令で定める規模の施設は、設置許可のときと同じように、警察等への通報の対象になります。
また、量や品名を変えるだけのつもりで配管や設備の一部にまで手を入れてしまうと、それは届出でなく変更許可の対象に切り替わります。
届出書を出したこと自体が、設備を変えていないことの証明にはなりません。
提出前に、工事の範囲が本当に設備に及んでいないかをもう一度確認しておくべきです。
警察にまで連絡が行くとは思っていませんでした。
施設の規模によります。
心配なら提出前に消防署へ確認しておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。
- 変更する内容が位置・構造・設備に及んでいないか、もう一度図面と現場を突き合わせる
- 複数の危険物を扱う場合は、変更後の指定数量の倍数を合計し直す
- 変更する危険物が別表第一の対象の類にあたらないか確認する
- 規則第七条の三の別記様式第十六で届出書を作成する
- 変更しようとする日の十日前までに市町村長等へ提出する
この手順なら分かりやすいです。
うちも早速図面を確認してみます。
十日前という期限だけは忘れないようにしてください。
迷ったら提出前に消防署へ相談するのが一番です。
よくある質問
まとめ
許可と届出の違いがはっきりしました。
安心して手続きを進められます。
それは何よりです。
今後も安全な運用のために、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条・第十一条の四(e-Gov法令検索)
- 危険物の規制に関する規則第七条の三(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





