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危険物施設の維持命令に違反するとどうなるのか|消防法第12条が定める修理改造移転命令と罰則の有無を解説

危険物施設が基準に合わなくなったらどうなるのか消防法第12条が定める修理改造移転命令と罰則の有無を解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を扱う製造所・貯蔵所・取扱所は、許可を受けて設置したあとも、それで終わりではありません。
配管のさびや外壁の劣化が進み、位置・構造・設備が技術上の基準に合わなくなることがあります。
そうなったとき消防法第12条は、市町村長等が修理・改造・移転を命じられると定めています。
ところがこの命令に違反した場合の罰則は、消防法の罰則条文のどこにも定められていません

うちのタンク、もうだいぶ古いんですけど、このまま使っていて大丈夫なんでしょうか。
特に何も言われたことはないんです。

基準に合わなくなったと認められれば、修理や改造の命令が出ることがあります。
まずはその仕組みから確認しましょう。

命令が出たら、罰則もあるから絶対に従わないといけないんですよね。

実はこの命令、罰則の条文には出てこないんです。
今日はその中身と、だからといって軽視できない理由を見ていきますね。

この記事の結論
  • 危険物施設は許可後も位置・構造・設備を技術上の基準に適合させ続ける義務があります(第12条第1項)。
  • 基準に合わなくなれば、市町村長等は修理・改造・移転を命じることができます(第12条第2項)。
  • 命令が出されたときは標識の設置によって公示されます
  • この命令への違反そのものに対する罰則は、消防法の罰則条文に定められていません
  • 罰則が無いことは、放置してよいことを意味しません。保安検査や定期点検で問題が重なれば、別の措置につながります。

維持命令に罰則はあるのかを示す図解。基準に適合維持・修理改造移転命令・標識で公示・罰則の定めなしの4段階を整理

危険物施設は許可を取ったあとも基準に適合させ続けなければならないのか

経年劣化したタンクと新しいタンクが並ぶ危険物施設のイメージ
危険物施設の許可は、設置したときに一度取れば終わりというものではありません。
消防法は、許可後も基準に適合し続けることそのものを所有者側の義務として定めています。
第12条第1項 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造及び設備が第10条第4項の技術上の基準に適合するように維持しなければならない
ここでいう基準は「設備の維持」の基準です
第10条第4項は位置・構造・設備の技術上の基準を指し、施設内での危険物の扱い方を定める第10条第3項とは別の基準です。
配管や外壁のような施設そのものの状態が対象になるため、日々の取扱いに問題がなくても、経年劣化だけでこの義務に抵触することがあります。
設置時に完成検査へ合格していても、その後の維持は所有者・管理者・占有者が自分で担う責任です。
次の項目では、この基準に合わなくなったときに何が起きるのかを見ていきます。

設置したときに検査に通っていれば、それで安心だと思っていました。
その後もずっと維持する義務があるんですね。

そのとおりです、維持は設置後も続く義務なんです。
次は基準に合わなくなったときの命令を見てみましょう。

基準に合わなくなったらどんな命令が来るのか

消防職員が危険物施設の管理者に命令書類を手渡すイメージ
維持の義務があっても、実際に基準からはずれてしまうことはあります。
そのときに市町村長等が使えるのが、第12条第2項の命令です。
第12条第2項 市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造及び設備が第10条第4項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者で権原を有する者に対し、同項の技術上の基準に適合するように、これらを修理し、改造し、又は移転すべきことを命ずることができる
命令の内容は修理・改造・移転の3つです
命令の名宛人は権原を有する所有者・管理者・占有者に限られ、単に管理を任されているだけの立場では対象になりません。
どの手段を選ぶかは市町村長等が判断するもので、施設側が任意に選べるわけではありません。
軽微なさびの補修から、施設の位置そのものを変える移転まで、命令の重さは基準からのずれ方に応じて変わります。

修理か改造か移転かは、こちらでは選べないんですね。
命令が出たらそのとおりにするしかないんですか。

命令の内容は市町村長等が決めます。
出る前に自主的に手を打てれば、それが一番です。

命令が出されたことはどうやって示されるのか

危険物施設の前に標識を立てる消防職員のイメージ
命令が出たとき、それが施設の中だけの話で終わらないという点も押さえておく必要があります。
第12条第3項は、命令の公示について第11条の5の規定を準用しています。
第11条の5第4項(第12条第3項で準用) 市町村長等又は市町村長は、それぞれ第1項又は第2項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない
命令が出たことは標識の設置で公に示されます
公示の義務を負うのは市町村長等の側であり、施設の所有者側が標識の設置を拒んだり妨げたりすることはできません
標識は施設に設置されるため、命令が出ている事実は外から見て分かる状態になります。
是正を終えれば標識を掲げ続ける理由はなくなりますが、逆に言えば是正するまでその状態が続くということでもあります。

標識を立てられるのを拒否することはできないんですね。
外から見える状態になるのは正直気が重いです。

そうですね、だからこそ早めの是正が施設の印象にも関わります。
次は従わなかった場合の話に進みましょう。

命令に従わなかったらどうなるのか

修理された施設とそのまま放置された施設が並ぶイメージ
ここが、この命令のいちばん意外なところです。
消防法の罰則条文を確認しても、この命令への違反そのものを罰する規定は見当たりません。
第42条第1項 次のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。(略)四 第12条の2第1項又は第2項の規定による命令に違反した者 五 第12条の3第1項の規定による命令又は処分に違反した者
第43条第1項 次のいずれかに該当する者は、三月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。一 第10条第3項の規定に違反した者 二 第16条の規定に違反した者 三 第16条の2第1項の規定に違反した者
第42条・第43条のどちらの列挙にも「第12条」の命令違反は入っていません
許可の取消しや使用停止を定める第12条の2の要件(第11条の5、第12条の7、第13条などの違反)にも、第12条の命令違反そのものは含まれていません
つまり修理・改造・移転の命令を無視しても、消防法の条文上は直接の刑事罰も使用停止も規定されていないことになります。
とはいえ、これは「従わなくてよい」という意味ではありません。
標識が立ったままの施設は保安検査や定期点検のたびに目を付けられやすく、別の基準違反が重なれば第12条の2の取消し・使用停止に発展することもあります。

罰則が無いなら、後回しにしても平気ってことですか。

いいえ、標識が立った状態が続くこと自体が実務上の負担になります。
次は日頃の確認のしかたをお伝えしますね。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を手に危険物施設のパイプを確認する作業員のイメージ
命令が出てから動くのではなく、日頃の点検で先に気づくことが最も現実的な対策です。
消防法も、そのための定期点検の制度を別に用意しています。
第14条の3の2 政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない
定期点検は、維持義務違反を自分で見つける仕組みでもあります
配管の腐食やタンク外壁の傷み、地盤の沈下といった経年劣化は、定期点検の記録を積み重ねることで早い段階から把握できます。
命令が出てからの是正より、記録に基づいて計画的に修理するほうが、施設の停止期間もコストも抑えられます。
点検記録は保存が義務付けられているため、日頃の確認をそのまま証拠として残しておく意識も欠かせません。

命令が来る前に、点検の記録で気づいておけばいいんですね。
うちも記録の付け方を見直してみます。

それが一番です、命令を待たずに動けるのが理想ですね。
気になる箇所があれば早めに相談してください。

よくある質問

Q設備が古くなったら必ず命令が来るのですか?
Aいいえ、命令が出るのは市町村長等が基準に適合していないと認めたときです。老朽化に気づいた時点で自主的に手を打てば、命令自体を避けられます。
Q修理・改造・移転のどれを選ぶかは施設側で決められますか?
Aいいえ、命令の内容は市町村長等が定めます。所有者側が任意に選べるものではありません。
Q命令に従わなかった場合、罰則はありますか?
A消防法の罰則条文(第42条・第43条)に、この命令への違反を定めた規定はありません
Q罰則が無いなら従わなくてもよいのですか?
Aいいえ、標識の設置で公示された状態が続くほか、保安検査や定期点検で問題が重なれば許可の取消しなど別の措置につながることがあります。

まとめ

危険物施設は許可後も位置・構造・設備を技術上の基準に適合させ続ける義務があります(第12条第1項)。
基準に合わなくなれば市町村長等は修理・改造・移転を命じることができます(第12条第2項)。
命令の名宛人は権原を有する所有者・管理者・占有者に限られます。
命令が出されたときは標識の設置によって公示されます
この命令違反そのものへの罰則規定は第42条にも第43条にも定められていません
第12条の2の使用停止事由の列挙にもこの命令違反は含まれていません
とはいえ放置は禁物で、定期点検や保安検査を通じた自主的な確認が実務上の対策になります。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第10条第4項・第11条の5・第12条・第12条の2・第42条・第43条
  • 消防法第14条の3の2

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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