危険物の安全データシートを開くと、引火点という数値のほかにタグ密閉式やクリーブランド開放式といった聞き慣れない試験器の名前が書かれていることがあります。
多くの現場ではこの名前を読み飛ばし、引火点の数値だけを見て判断してしまいます。
実はこの試験器の選び方そのものが消防法施行令で決められており、同じ引火点でも動粘度という別の数値次第で使う装置が変わります。
今回はこの3つの試験器の使い分けを、政令と省令の条文からたどっておきます。
引火性液体の引火点は安全データシートに書いてあるので、それだけ見ておけば十分だと思っていました。
引火点の数値だけでは決まりません。
測定に使った試験器の種類まで確認する必要があります。
試験器の種類まで法令で決まっているのですか。
危険物の規制に関する政令が3種類の試験器を使い分ける手順を定めています。
順番に見ていきましょう。
- 消防法別表第一備考第10号は、引火性液体を「政令で定める試験において引火性を示すもの」と定義しています
- その試験は危険物の規制に関する政令第1条の6が指定しており、原則はタグ密閉式引火点測定器です
- 引火点が80度以下の温度で測定されない場合はクリーブランド開放式に切り替わります
- 引火点が零度以上80度以下で測定され、かつ動粘度が10センチストークス以上の場合はセタ密閉式に切り替わります
- 試験の細目は危険物の試験及び性状に関する省令の別表第九から別表第十一までが装置と手順を定めています
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目次
引火性液体はどのように定義されているのか

まずは引火性液体という言葉が、消防法のどこでどう定義されているのかを確認します。
別表第一備考第10号は引火性液体という言葉の意味を、性質そのものではなく試験の結果で決める書き方にしています。
かっこ書きにも注意が必要で、第三石油類・第四石油類・動植物油類は引火性を示すだけでなく、一気圧・温度20度で液状であることも同時に求められます。
つまり同じ引火点を持つ物品でも、常温で固まっていれば引火性液体には該当しません。
この引火性を判断する試験そのものがどこで定められているかを、次に見ていきます。
「液状であること」という条件が別に付いているとは知りませんでした。
石油類の区分にだけ掛かる条件です。
まずは引火性そのものを判定する試験を見ていきましょう。
どの試験器を使うかはどうやって決まるのか

条文はその切り替えの条件まで一文の中に書き込んでいます。
まずタグ密閉式で測り、80度以下の温度で引火点が出なければクリーブランド開放式に切り替えます。
逆にタグ密閉式で零度以上80度以下の引火点が出ても、動粘度が10センチストークス以上あればセタ密閉式に切り替わります。
つまり同じタグ密閉式の測定結果を見ても、動粘度という別の数値次第で最終的な試験方法が変わります。
3つの試験器のどれを使うことになるかは、測ってみないと分からない部分があります。
試験のやり直しになることもあるということですか。
そのとおりです。
だからこそ試験機関に依頼する段階で条件をそろえておくことが大切です。
それぞれの試験器はどんな手順で測るのか

省令の別表がそれぞれの装置・試験場所・手順を定めています。
違うのは試料の量と温度の上げ方で、タグ密閉式は密閉した試料カップに50立方センチメートルを入れて緩やかに温度を上げ、クリーブランド開放式は開放したカップを標線まで満たしてより速く温度を上げます。
セタ密閉式はさらに違い、少量の2ミリリットルを設定温度で1分間保持してから試験炎を近づける手順です。
密閉か開放か、温度の上げ方がどれだけ違うかまで押さえておくと、同じ引火点でも数値が変わりうる理由が見えてきます。
装置ごとにここまで手順が細かく決まっているとは思いませんでした。
装置の名前だけを覚えるより、密閉と開放の違いを覚えるほうが理解の近道です。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきます。
実務で見落としやすいのはどこか

セタ密閉式への切り替えは、引火点とは別の数値がきっかけになります。
安全データシートには引火点が載っていても、動粘度まで載っていないことがあります。
動粘度が10センチストークスという境目を越えるかどうかで、タグ密閉式のままでよいのかセタ密閉式に切り替えるべきなのかが変わります。
数値がそろっていない状態で試験機関に依頼すると、後から追加の測定を求められることがあります。
引火点と動粘度は、必ずセットで確認してください。
動粘度という項目は今まで気にしたことがありませんでした。
粘り気のある液体ほど見落とされやすい項目です。
製造元に確認するときに引火点と一緒に聞いておくとよいでしょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認する項目を絞れば、判断の手順そのものは難しくありません。
- 対象物品の安全データシートから引火点と動粘度の両方を確認する
- 引火点が80度を超えていないか、動粘度が10センチストークス以上でないかを確認する
- 数値がそろわない場合は試験機関に測定を依頼する
- どの試験器で測定したかを試験成績書に明記してもらう
引火点と動粘度がそろっていれば、どの試験器で測定すべきかは政令の条文からすぐに判定できます。
数値が欠けている場合は、試験機関に相談して測定からやり直す必要があります。
測定結果には使用した試験器の名称を必ず明記してもらい、記録として保管してください。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。
まずは手元の安全データシートを引火点と動粘度の両方でそろえてみます。
それがそのまま試験機関への依頼書の下書きになります。
迷う物品だけ先に印を付けておいてください。
よくある質問
まとめ
まずは引火点と動粘度を安全データシートから拾い出します!
数値がそろえば試験機関への依頼もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一備考第10号
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の6
- 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)第4条・別表第九・別表第十・別表第十一
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





