危険物を大量に貯蔵する施設では、公設の消防が到着するまでの初動を自社の人員だけでまかなう場面があります。
実は消防法には、一定規模を超えた事業所に自社の消防組織を置くことを義務づける条文があります。
人員と化学消防自動車の台数まで、事業所の規模に応じて政令で細かく決められています。
この記事では消防法第14条の4と危険物の規制に関する政令第38条・第38条の2が定める自衛消防組織の設置基準を確認します。
うちは危険物保安統括管理者を選任しているので、それで十分ですよね。
実は統括管理者の選任とは別に、自衛消防組織を置く義務があるんです。
条文を確認しましょう。
統括管理者を決めるだけでは足りないということですか。
はい、組織そのものを設置する義務が別にあります。
基準を見ていきましょう。
- 同一事業所で第4類の危険物を指定数量の3000倍以上貯蔵・取扱う場合、消防法第14条の4により自衛消防組織を置かなければなりません
- 対象になる施設は、危険物保安統括管理者の選任義務(消防法第12条の7)と同じ基準(指定施設・3000倍)で判定します
- 人員と化学消防自動車の台数は、取り扱う第4類の危険物の最大数量に応じて4段階で決まります(政令第38条の2第1項)
- 火災その他の災害のための相互応援に関する協定を締結すれば、複数事業所を1の事業所とみなして編成を組むことができます(規則第64条の2)
- 自衛消防組織を置かないこと自体には、消防法第44条・第45条・第12条の2のいずれにも直接の罰則や使用停止命令の規定がありません
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目次
自衛消防組織とはどんな組織を指すのか

まず条文が何を義務づけているのかを確認します。
同一事業所において政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所を所有し、管理し、又は占有する者で政令で定める数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものは、政令で定めるところにより、当該事業所に自衛消防組織を置かなければならない。
条文が指す「政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所」を、危険物の規制に関する政令第38条第1項は指定施設と呼んでいます。
指定施設は、第4類の危険物を取り扱う製造所・移送取扱所・一般取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外の施設です。
公設の消防機関を代替するものではなく、消防隊が到着するまでの初動を担う組織として位置づけられています。
次はどの規模からこの義務が生じるのかを確認します。
自社で消防組織を持つなんて、大規模な工場だけの話に聞こえます。
対象になる規模は政令で決まっています。
次はその基準を見てみましょう。
どの規模の危険物施設から自衛消防組織が必要になるのか

基準になる数量を条文で確認します。
法第十四条の四の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、指定施設とする。
2 法第十四条の四の政令で定める数量は、第三十条の三第二項に規定する数量とする。
政令第30条の3第2項が定めるこの数量は、消防法第12条の7が定める危険物保安統括管理者の選任義務と同じ基準です。
つまり、統括管理者の選任が必要になる事業所は、原則として自衛消防組織も併せて必要になります。
移送取扱所については、この数量に代えて総務省令で定める数量が用いられます。
統括管理者を選任済みの事業所は、自衛消防組織の設置まで済んでいるかをあわせて確認してください。
うちは統括管理者を選任済みなので、それで対象外にはならないんですね。
同じ基準で自衛消防組織も対象になります。
次は具体的な編成基準を見ましょう。
自衛消防組織は何人と何台の化学消防自動車で編成するのか

政令が定める表を確認します。
自衛消防組織は、指定施設において取り扱う第四類の危険物の最大数量に応じ、次の表の人員及び化学消防自動車をもつて編成しなければならない。
| 取り扱う第4類の危険物の最大数量 | 人員数 | 化学消防自動車 |
|---|---|---|
| 指定数量の12万倍未満 | 5人 | 1台 |
| 12万倍以上24万倍未満 | 10人 | 2台 |
| 24万倍以上48万倍未満 | 15人 | 3台 |
| 48万倍以上 | 20人 | 4台 |
表の数量は指定施設全体の合計で見るため、複数の指定施設を持つ事業所は敷地内の最大数量を合算して当てはめます。
移送取扱所を有する事業所は、危険物の規制に関する規則第64条で別の計算方法が定められています。
ただし書きにより、相互応援に関する協定を締結している事業所は、総務省令で定める編成で足りるとされています。
規則第64条の2は、協定を結ぶすべての事業所を1の事業所とみなして数量を合算し、編成を組めると定めています。
近くの事業所と協定を結べば、自社だけで人員を抱えなくてもいいんですね。
ただし最低限備えるべき下限も規則にあります。
次は罰則の有無を確認しましょう。
設置義務に罰則が無ければ後回しにしてよいのか

罰則の条文を実際に確かめます。
第44条は23の号を、第12条の2は使用停止命令等の対象となる規定を列挙しているが、第14条の4はいずれにも含まれていない。
同じ3000倍という基準で生じる危険物保安統括管理者の選任義務は、選任を怠ると消防法第44条第8号の罰則の対象になり、統括管理者を定めないこと自体が第12条の2第2項第2号で使用停止命令の対象にもなります。
これに対して自衛消防組織は、置かないこと自体を直接罰する条文も命令の根拠条文も見当たりません。
ただし、消防法第4条は消防長又は消防署長に立入検査や資料提出命令の権限を与えており、この検査や報告を拒み、妨げ、又は虚偽の報告をすると第44条第2号の罰則がかかります。
直接の罰則が無いことは、確認や是正の対象にならないことを意味しないので、規模の判定は他の義務と同じ優先度で扱ってください。
罰則が無いなら、統括管理者の選任だけ済ませておけば十分だと思っていました。
立入検査では設置状況も確認されます。
最後に確認の手順を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認する順番を条文の構造に沿って並べます。
第一項の化学消防自動車には、消火活動を実施するために必要な消火薬剤及び器具を備えておかなければならない。
危険物保安統括管理者を選任済みの事業所は、同じ数量で自衛消防組織も対象になっている可能性が高いので、設置の有無をあわせて点検します。
対象になる場合は、取扱量に応じた表の人員数と化学消防自動車の台数を確認し、車両には消火薬剤と器具を備えておきます。
近隣に同じ危険物を扱う事業所があるなら、相互応援に関する協定を締結できないか検討すると、単独で人員を抱える負担を減らせます。
罰則が無いからと後回しにせず、次回の立入検査までに設置状況を書類で示せる状態にしておきましょう。
まずは自社の取扱量が3000倍を超えていないか、確認します。
統括管理者の選任状況とあわせて見るのが近道です。
これで確認の流れが一通り整いました。
よくある質問
まとめ
自社の取扱量の確認から、今日中に着手します。
統括管理者の選任状況との突き合わせもあわせて行いましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第14条の4
- 消防法第12条の7・第44条・第45条・第12条の2・第4条
- 危険物の規制に関する政令第38条・第38条の2・第30条の3
- 危険物の規制に関する規則第64条・第64条の2
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





