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危険物取扱者免状の返納命令はなぜ交付元の知事しか出せないのか|規則第五十一条の二と第五十一条の三が定める都道府県間の通知を解説

免状の返納命令はなぜ交付元の知事しか出せないのか アイキャッチ

危険物取扱者免状は全国どこでも有効なので、就職や転勤で今の都道府県と免状を出した都道府県が違う方は珍しくありません。
そんなとき、今の勤務先で法令違反が見つかったら、今の都道府県知事がその場で免状の返納を命じてくれるのでしょうか。
実は消防法と関連する省令は、命令を出せる知事と、違反を見つけた知事の役割を細かく分けています。
この記事では免状を交付した都道府県知事だけが返納を命じられる仕組みと、都道府県をまたぐ通知のルールを、条文に沿って解説します。

危険物取扱者免状の返納命令って、聞いたことはあるんですが、誰が出すのかよく分かっていません。

実は消防法の条文を読むと、命令を出せる知事はかなり限定されているんですよ。

え、都道府県知事なら誰でも出せるわけじゃないんですか。

はい。
今日はその仕組みを条文から一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物取扱者免状の返納命令を出せるのは、その免状を交付した都道府県知事だけです。
  • 今の勤務地や居住地の都道府県知事が違反を見つけても、自分では返納を命じられず交付元の知事に通知しなければなりません
  • 通知には違反事実の概要免状の写しを添えることが規則で定められています。
  • 交付元の知事が実際に返納を命じる前には、あらかじめ現在の都道府県知事に通知するものとされています
  • 返納を命じられると、その日から1年間は新しい免状の交付を受けられません。

違反の発覚から交付元の知事への通知写しの添付返納命令までの流れを示す図解

免状の返納命令はどの都道府県知事が出せるのか

免状を交付した都道府県知事だけが返納命令を出せる仕組みを表すイラスト
危険物取扱者免状は、試験に合格した都道府県知事が交付します。
その免状を返納させる命令も、実は交付した知事の専権事項として条文に定められています。
危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反しているときは、危険物取扱者免状を交付した都道府県知事は、当該危険物取扱者免状の返納を命ずることができる。(消防法第十三条の二第五項)
返納命令を出せるのは免状を交付した知事だけです。
今の勤務先や住所地がどこであっても、交付元という一点だけで権限が決まります。
これは免状が全国共通の資格でありながら、行政処分としての性格を持つためです。
交付した知事でなければ、その免状の交付経緯や講習履歴を正確に把握できません。
だからこそ、次に説明する通知の仕組みが必要になります。

つまり免状を交付した知事にしか、返納命令を出す権限が無いということですね。

そのとおりです。
条文にも交付した都道府県知事とはっきり書かれています。

今の勤務地で違反が見つかったらどうなるのか

他県の知事が交付した免状の違反を見つけた場合の通知の流れを表すイラスト
転勤先の都道府県で法令違反が発覚しても、その都道府県知事がその場で処分できるわけではありません。
まず免状を交付した知事へ知らせることが、条文上の義務になっています。
都道府県知事は、その管轄する区域において、他の都道府県知事から危険物取扱者免状の交付を受けている危険物取扱者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、その旨を当該他の都道府県知事に通知しなければならない。(消防法第十三条の二第六項)
違反を見つけた知事には通知の義務が課されています。
「できる」ではなく「しなければならない」という強い書き方である点に注意してください。
通知の相手は必ず免状を交付した都道府県知事です。
この通知があって初めて、交付元の知事が返納命令の検討に入れます。
違反を発見した現場の対応が、そのまま制度の入口になっています。

じゃあ今の勤務先で違反が見つかっても、その場の知事は何もできないんですか。

命令こそ出せませんが、通知する義務はちゃんと課されていますよ。

通知にはなにを書き添えるのか

違反通知の文書に免状の写しを添える手続きを表すイラスト
通知は口頭やメールで済ませてよいものではなく、様式が省令で決められています。
何を書き、何を添えるかまで具体的に定められている点が実務上のポイントです。
法第十三条の二第六項の通知は、法又は法に基づく命令の規定に違反していると認められる危険物取扱者の氏名及び当該違反事実の概要を記載した文書に、当該危険物取扱者の既得免状の写しを添えて行うものとする。(危険物の規制に関する規則第五十一条の三)
通知は氏名と違反概要を書いた文書に写しを添える形で行います。
記載するのは氏名違反事実の概要の二点です。
そこに、その人が現在持っている免状の写しを添付します。
写しがあることで、交付元の知事は種類や交付番号をその場で確認できます。
口頭の申し送りだけでは、この規則の要件を満たしません。

通知って、電話や口頭でも大丈夫なものなんでしょうか。

いいえ。
氏名と違反の概要を書いた文書に、免状の写しを添えることが決まっています。

返納命令を出す前に交付元の知事はなにをするのか

返納命令を出す前に相手の都道府県知事へあらかじめ通知する手順を表すイラスト
通知を受け取った交付元の知事は、そのまま一方的に命令を出すわけではありません。
命令の前にもう一度、相手の都道府県知事へ知らせる手順が用意されています。
都道府県知事は、法第十三条の二第五項の規定により、他の都道府県知事から免状の交付を受けている者に対し免状の返納を命じようとするときは、あらかじめ、当該他の都道府県知事にその旨を通知するものとする。(危険物の規制に関する規則第五十一条の二)
命令を出す前にも交付元から現地の知事への通知が必要です。
「命じようとするとき」という文言のとおり、これは命令の前段階の手続きです。
見落としやすいのは、通知が往復で二回発生する点です。
現地の知事から交付元へ、そして交付元から現地へという流れになります。
どちらか一方だけで完結する仕組みではありません。

交付元の知事は、通知を受け取ったらすぐ命令を出してしまうんですか。

いえ、その前にもう一度、あらかじめ相手の知事へ知らせる手順があるんです。

危険物取扱者や事業者はなにを確認すればよいか

免状の返納命令を受けたときに一年間交付を受けられないことを確認する技術者のイラスト
制度の仕組みが分かったところで、当事者として何を確認すべきかを整理します。
特に返納命令のあとに待っている不利益を知っておくことが大切です。
都道府県知事は、左の各号の一に該当する者に対しては、危険物取扱者免状の交付を行わないことができる。一 次項の規定により危険物取扱者免状の返納を命ぜられ、その日から起算して一年を経過しない者(消防法第十三条の二第四項第一号)
返納命令を受けると一年間は新しい免状を受け取れません。
まず自分の免状がどの都道府県知事の交付かを確認しておきましょう。
転勤や引っ越しで勤務地が変わったときは、その旨を事業所にも伝えておくと安心です。
違反の指摘を受けたら、通知の相手が交付元になる仕組みを理解したうえで対応してください。
制度を知っておくだけで、いざというときの対応の速さが変わります。

万が一返納を命じられたら、すぐにまた免状を取り直せるものなんですか。

それが、一年間は新しい免状を受け取れない決まりになっています。

よくある質問

Q免状を交付した都道府県知事がわからないときはどうすればよいか?
A免状本体に交付した都道府県知事の名称が記載されていますので、まずは手元の免状を確認してください。氏名や生年月日とあわせて、交付年月日と交付者名の欄を見れば分かります。
Q違反をした都道府県以外でも免状の返納命令の対象になるのか?
Aなります。命令を出すのは交付元の都道府県知事であり、違反があった場所とは関係なく、免状を交付した知事の判断で命令が出されます。
Q通知を受け取った交付元の知事は必ず返納命令を出すのか?
A必ずではありません。通知はあくまで返納命令を検討するための情報提供であり、実際に命令を出すかどうかは交付元の知事が法令の要件に照らして判断します。
Q免状の書換えや再交付のときも同じように交付元へ通知されるのか?
A書換えや再交付の場合にも、交付元の知事への通知や照会が規則で定められています。返納命令とは条文が異なりますが、免状に関する事務が交付元と現在の都道府県の間でやり取りされる点は共通しています。

まとめ

危険物取扱者免状の返納命令を出せるのは、免状を交付した都道府県知事だけです。
今の勤務地や住所地の知事は、違反を見つけても自分では命令を出せません。
その代わり、免状を交付した知事へ通知する義務が課されています(消防法第十三条の二第六項)。
通知には氏名違反事実の概要を記載し、免状の写しを添えます。
交付元の知事が命令を出す前にも、あらかじめ現在の知事へ通知する手順が定められています。
返納命令を受けると、その日から1年間は新しい免状の交付を受けられません。
転勤や引っ越しで勤務地が変わったときこそ、自分の免状がどの知事の交付かを確認しておくことが大切です。

交付元と今の知事、両方が関わる仕組みだったんですね。
よく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十三条の二第四項・第五項・第六項
  • 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年自治省令第一号)第五十一条の二・第五十一条の三

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の事案での命令の要否や手続きの詳細は、免状を交付した都道府県知事にご確認ください

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