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危険物を貯蔵する建物はなぜ耐火建築物にしなくてよい場合があるのか|建築基準法施行令が定める数量の限度と二種類以上を扱うときの計算式を解説

危険物を貯蔵する建物はなぜ耐火建築物でなくてよいのかを解説する記事のアイキャッチ画像

消防法には、危険物を一定量以上扱うと許可や届出が必要になる指定数量という基準があります。
一方で建築基準法にも、危険物を貯蔵したり処理したりする建物を耐火建築物や準耐火建築物にしなければならないという別の規制があります。
このふたつの数量基準は法律も仕組みも違うため、消防法側の届出だけで安心していると建築基準法側の義務を見落とすことがあります。
この記事では、建築基準法が定める危険物の数量限度と、二種類以上の危険物を扱うときの計算のしかたを解説します。

危険物を保管している倉庫は、指定数量を超えなければ建築基準法上も問題ないということでしょうか。

指定数量は消防法上の基準です。
建築基準法にも別の数量限度があり、超えると耐火建築物にしなければなりません。

消防法とは別に、建築基準法にも数量の基準があるとは知りませんでした。

はい、しかも消防法の指定数量とは違う数え方をするので、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の貯蔵場や処理場となる建物は、原則として耐火建築物又は準耐火建築物にしなければなりません
  • ただし貯蔵・処理する危険物の数量が建築基準法施行令が定める限度を超えなければ、この義務は除外されます
  • 消防法上の危険物については、この限度は指定数量の十倍という数え方をします
  • 火薬類やマッチ、可燃性ガスなど、危険物の種類ごとに限度の数量は別に定められています
  • 二種類以上の危険物を同じ建物で扱うときは、それぞれの数量を限度で割った商を合計して判定します

危険物を貯蔵する建物は数量が政令の限度以下であれば耐火建築物でなくてよく二種類以上を扱うときは限度に対する割合を合算して判定することを示した図解

危険物を貯蔵する建物にはなぜ耐火建築物が求められるのか

厚い壁を持つ耐火構造の低い倉庫を示した図
危険物を扱う建物には、火災が起きたときに倒壊や延焼を防ぐための強い構造が求められます。
その根拠は建築基準法の中にあります。
建築基準法第27条第3項第2号(抜粋)
次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。
二 別表第二(と)項第四号に規定する危険物の貯蔵場又は処理場の用途に供するもの(貯蔵又は処理に係る危険物の数量が政令で定める限度を超えないものを除く。)
危険物の貯蔵場や処理場は、原則として耐火建築物か準耐火建築物にしなければなりません。
建築基準法第27条第3項第2号は、危険物を貯蔵したり処理したりする用途の建物を、耐火建築物または準耐火建築物とするよう定めています。
ただし条文のかっこ書きには例外があり、貯蔵・処理する危険物の数量が政令で定める限度を超えない場合は、この義務そのものが除外されます。
その限度を具体的に定めているのが、建築基準法施行令第116条です。
次の項目から、対象になる危険物の種類と限度の中身を見ていきます。

危険物を置くなら消防法の許可さえ取ればよいと思っていました。

消防法とは別に、建物の構造そのものにも規制がかかる点に注意が必要です。

対象になる危険物にはどんな種類があるのか

ガスボンベとドラム缶が並ぶ保管場所を示した図
建築基準法施行令第116条が対象にする危険物は、消防法上の危険物だけではありません。
火薬類やマッチ、ガス類なども表に含まれています。
建築基準法施行令第116条第1項(抜粋)
法第二十七条第三項第二号の規定により政令で定める危険物の数量の限度は、次の表に定めるところによるものとする。
(火薬類、消防法第二条第七項に規定する危険物、マッチ、可燃性ガス、圧縮ガス、液化ガス等について、常時貯蔵する場合と製造所又は他の事業を営む工場において処理する場合のそれぞれの数量を規定)
限度が定められている危険物は、消防法上の危険物に限りません。
施行令第116条の表には、火薬や爆薬などの火薬類、マッチ、可燃性ガス、圧縮ガス、液化ガスなどが並んでいます。
そのうえで、消防法第2条第7項に規定する消防法上の危険物も、別の枠としてこの表に含まれています。
さらに数量の限度は、常時貯蔵する場合製造所や工場で処理する場合とで、別々の数値が定められています。
次の項目では、実務でとくに関わりの深い消防法上の危険物について詳しく見ていきます。

うちで扱っているのは消防法上の危険物だけですが、この表とは無関係でしょうか。

いいえ、消防法上の危険物もこの表の対象に含まれています。

消防法の危険物はなぜ指定数量の十倍まで置けるのか

天秤の片方に小さなドラム缶一つもう片方に十個のドラム缶を乗せて釣り合わせた図
消防法上の危険物については、限度の数量が指定数量を基準に定められています。
ただし、その倍率は消防法の許可基準とは別物です。
建築基準法施行令第116条第1項 表(抜粋)
消防法第二条第七項に規定する危険物 危険物の規制に関する政令別表第三の類別欄に掲げる類、同表の品名欄に掲げる品名及び同表の性質欄に掲げる性状に応じ、それぞれ同表の指定数量欄に定める数量の十倍の数量
建築基準法上の限度は、指定数量そのものではなく指定数量の十倍です。
施行令第116条は、消防法上の危険物について、危険物の規制に関する政令別表第三が定める指定数量の十倍を限度としています。
つまり指定数量を超えていても、その十倍に達しなければ、建築基準法上は耐火建築物にしなくてよい場合があるということです。
とはいえ指定数量を超えた時点で、消防法上は貯蔵所や取扱所としての許可や技術基準など、別の規制がかかる点は変わりません。
建築基準法の限度と消防法の指定数量は、それぞれ別の目的で置かれた別々の線引きだと理解しておく必要があります。

指定数量の十倍までなら消防法上も自由に置けるということですか。

いいえ、これは建築基準法上の話です。
消防法の許可基準は指定数量の段階で別にかかります。

二種類以上の危険物を扱うときはどう計算するのか

限度を超えたメーターに禁止マークが付いた図と限度内のメーターの図
一種類だけなら限度と比べるだけで済みますが、複数の危険物を同じ建物で扱う場合は計算が必要です。
条文は、限度に対する割合を合計する方法を定めています。
建築基準法施行令第116条第3項
第一項の表に掲げる危険物の二種類以上を同一の建築物に貯蔵しようとする場合においては、第一項に規定する危険物の数量の限度は、それぞれ当該各欄の危険物の数量の限度の数値で貯蔵しようとする危険物の数値を除し、それらの商を加えた数値が一である場合とする。
二種類以上を扱うときは、それぞれの割合を足し合わせて判定します。
たとえば液化ガスの常時貯蔵の限度は七十トンです。
ここに液化ガスを三十五トン、さらに限度七千立方メートルの圧縮ガスを三千五百立方メートル貯蔵しているとします。
それぞれの数量を限度で割ると、液化ガスは〇・五、圧縮ガスも〇・五となり、合計は一に達します。
この合計が一を超えると、限度をオーバーしたことになり、耐火建築物又は準耐火建築物にする義務が発生します。

それぞれ限度の半分ずつだから大丈夫だと思っていました。

半分ずつでも合計すると限度に達することがあるので、必ず合算して確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

作業着姿の点検員がドラム缶とガスボンベの並ぶ倉庫を確認している様子を示した図
ここまでの条件を踏まえて、実際の点検では何を確認すればよいのかをまとめます。
数量の変化を見落とさないことが基本になります。
建築基準法施行令第116条第2項
土木工事又はその他の事業に一時的に使用するためにその事業中臨時に貯蔵する危険物の数量の限度及び支燃性又は不燃性の圧縮ガス又は液化ガスの数量の限度は、無制限とする。
まず確認すべきは、貯蔵している危険物の量が増えていないかどうかです。
取り扱う量が増えて限度を超えると、建物を耐火建築物や準耐火建築物にする義務が新たに発生する可能性があります。
二種類以上を扱っている場合は、それぞれの割合の合計が一を超えていないかも定期的に見ておく必要があります。
なお、土木工事などで一時的に貯蔵する危険物や、支燃性・不燃性の圧縮ガス・液化ガスについては、この限度は無制限とされています。
自分の建物がどの区分に当てはまるかを、日頃から把握しておくことをおすすめします。

扱う量が増えたときに気づけるようにしておきます。

数量の変化に気づくことが、建物の義務を見落とさない一番の近道です。

よくある質問

Q消防法の指定数量を超えなければ、建築基準法上も問題ないのでしょうか?
Aいいえ。消防法の指定数量と建築基準法施行令第116条の限度は別の基準です。指定数量を超えていなくても、建築基準法側の対象になる用途であれば別途この限度との照合が必要です。
Q指定数量の十倍とは、消防法上も十倍まで自由に貯蔵できるという意味でしょうか?
Aいいえ。十倍という数字は建築基準法上の限度にすぎません。消防法上は指定数量を超えた時点で、貯蔵所や取扱所としての許可など別の規制がかかります。
Q危険物を一種類しか扱っていない建物は、限度をどう確認すればよいのでしょうか?
A施行令第116条の表から該当する危険物の限度を確認し、常時貯蔵する場合か製造所等で処理する場合かで数値が異なる点に注意して、実際の貯蔵・処理数量と比較してください。
Q二種類以上の危険物を扱う建物で、限度を超えた場合はどうなるのでしょうか?
A限度を超えると建築基準法第27条第3項第2号の除外規定が使えなくなり、建物を耐火建築物又は準耐火建築物にする義務が生じます。増築や取扱量の変更時は早めの確認が必要です。

まとめ

危険物の貯蔵場・処理場となる建物は、原則として耐火建築物又は準耐火建築物にしなければなりません
ただし貯蔵・処理する数量が建築基準法施行令第116条の限度を超えなければ、この義務は除外されます
限度の対象は火薬類・マッチ・可燃性ガスなど複数あり、消防法上の危険物もそのひとつです
消防法上の危険物の限度は、指定数量の十倍という別の数え方をします
常時貯蔵する場合と製造所・工場で処理する場合とで、限度の数値は異なります
二種類以上を扱うときは、それぞれの数量を限度で割った商を合計して一を超えないか判定します
取扱量の増加や増築のときは、限度との照合を忘れずに行うことが欠かせません

建築基準法にも数量の基準があることがよくわかりました。

取扱量が変わったときの確認を忘れないでください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第27条(耐火建築物等としなければならない特殊建築物)
  • 建築基準法施行令第116条(危険物の数量)
  • 消防法第2条第7項(危険物の定義)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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