危険物を貯蔵し、または取り扱う製造所等には、警報設備や通報設備の設置が義務付けられています。
固定電話を前提にした条文の時代から携帯電話が広く普及し、現場では「携帯電話で代用してよいか」という疑問が繰り返されてきました。
令和7年7月30日、消防庁危険物保安室はこの疑問に答える執務資料を発出しました。
この記事では、通知が示す2つの要件を条文とあわせて整理します。
うちの施設、固定電話の配線が古くて困っているんです。
携帯電話で済ませられないんでしょうか。
実は消防庁が、携帯電話を警報設備として扱ってよい場合を示しています。
どんな施設でも認められるわけではないんですよね。
はい、2つの条件を満たす場合に限られます。
順番に見ていきましょう。
- 製造所等の警報設備や移送取扱所の通報設備は、一定の要件を満たせば携帯電話で扱ってよいとされました。
- 根拠は危険物の規制に関する規則第三十七条第二号と第二十八条の三十六第一項第二号です。
- 要件は、サービスエリア内であることと、完成検査で通報可能と確認できることの2つです。
- 係員が携帯電話を保有していることも前提になります。
- 契約変更や電波状況の変化への対応は通知に書かれていないため、施設側で確認を続ける必要があります。
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目次
なぜ携帯電話の扱いが通知で示されたのか

製造所等の警報設備は、古くから固定電話や有線設備を前提に定められてきました。
携帯電話が広く普及した今も、条文の文言自体は変わっていません。
条文の文言が変わらないまま、現場の実態に合わせて解釈が示された形です。
固定電話の新設や維持には相応のコストがかかり、小規模な施設ほど負担が重くなります。
一方で携帯電話なら、係員が常に携帯でき、設置場所にも縛られません。
今回の執務資料は、こうした実務上の疑問に消防組織法第三十七条に基づく助言として答えたものです。
固定電話の配線、うちも古くて心配していました。
携帯電話の普及を踏まえて、消防庁が考え方を整理したんです。
どの施設のどの設備が対象になるのか

携帯電話の扱いが関わるのは、大きく分けて2つの設備です。
製造所等の警報設備と、移送取扱所の配管経路に設ける通報設備です。
製造所等では「消防機関に報知ができる電話」、移送取扱所では「消防機関に通報する設備」が、それぞれ携帯電話に置き換えられるかが問われています。
自動火災報知設備や非常ベル装置など、電話以外の警報設備は今回の整理の対象ではありません。
移送取扱所の緊急通報設備(配管内の異常を知らせる発信部・受信部)も対象外です。
うちは製造所なので、二号の電話が関係するんですね。
はい、移送取扱所の通報設備も考え方は同じです。
通知が示す2つの要件とは何か

通知は、携帯電話を警報設備や通報設備として扱ってよい条件を、具体的に2つ示しました。
どちらも満たして初めて、設置しているものとして扱われます。
1つ目は、施設の所在地が携帯電話事業者(MNO)のサービスエリア内であることです。
2つ目は、消防法第十一条第五項の完成検査の際に、実際に携帯電話で通報できると確認できることです。
この2つを満たせば、製造所等の警報設備(規則第三十七条第二号)だけでなく、移送取扱所の通報設備(規則第二十八条の三十六第一項第二号)としても扱えます。
サービスエリアの確認って、具体的にどうすればいいんでしょう。
契約しているMNOが公開するエリアマップで確認できます。
実務で見落としやすいのはどこか

通知の条件は、携帯電話を持ってさえいれば足りる、という意味ではありません。
いくつか見落としやすい点があります。
まず、要件は「携帯電話を保有している係員」がいることが前提で、単に電話機が設置先にあるだけでは足りません。
また、サービスエリアの範囲や契約内容が将来変わる可能性には、通知自体は触れていません。
通知に書かれていない以上、契約変更や山間部での圏外への対応は、施設側が自分で考えて備える必要があります。
完成検査の時点で通報できたことと、その後ずっと通報できることは、別の話として扱うのが安全です。
完成検査のときだけ確認すればいいわけじゃないんですね。
そうです、電波状況は変わりうるので、定期的な確認をおすすめします。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、施設の担当者が実際に確認しておきたいことを整理します。
通知の2つの要件を、順番にチェックしていきましょう。
- 契約しているMNOのサービスエリアマップで、施設の所在地が範囲内かを確認する。
- 完成検査の際に、実際に携帯電話から消防機関へ通報できるかを試す。
- 警報設備・通報設備として使う携帯電話を保有する係員を明確にしておく。
- 契約変更や機種変更があったときは、同じ確認をやり直す。
これらを運用規程や点検記録に残しておけば、立入検査でも説明しやすくなります。
迷ったときは、所轄消防署に事前相談しておくと安心です。
チェックリストにしておけば、毎年の確認も楽になりますね。
記録を残すことも、いざというときの説明につながりますよ。
よくある質問
まとめ
この記事で、携帯電話が使える条件がよく分かりました!
サービスエリアと完成検査の確認を忘れずに進めてくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(消防危第181号、令和7年7月30日、消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第三十七条・第二十八条の三十六
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十一条第五項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





