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高圧ガスの貯蔵所ではなぜ複数の立場が火気を制限できるのか|液化石油ガス販売所も対象になる第37条を解説

高圧ガスの貯蔵所ではなぜ複数の立場が火気を制限できるのか|液化石油ガス販売所も対象になる第37条を解説

高圧ガスを貯蔵する施設のそばで、うっかりライターに火をつけてしまったらどうなるでしょうか。
高圧ガス保安法は、指定された場所以外での火気の取り扱いを何人にも禁じています。
おもしろいのは、その「指定する場所」を決める立場が、条文上ひとつに絞られていないことです。
本記事では高圧ガス保安法第三十七条が定める火気制限の仕組みと、指定できる立場の範囲を解説します。

高圧ガスのタンクの近くって、火気はどこでも禁止なんですか。
うちの敷地にも容器置き場があるので気になります。

いいえ、指定する場所以外が禁止という形です。
誰が指定できるかは条文で決まっています。

その指定は誰がするんですか。
うちみたいな小さい会社でもできるんですか。

はい、貯蔵所の所有者や占有者も指定できます。
条文を見ながら順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 高圧ガス保安法第三十七条は、指定する場所以外での火気の取り扱いを何人にも禁じています
  • 指定できる立場は6つあり、製造者や貯蔵所の所有者・占有者、販売業者も含まれます。
  • 液化石油ガス法の販売所も対象に含まれるため、街のLPガス販売店の店先にも規定が及びます
  • 発火しやすい物の持ち込みは、承諾があれば禁止されません。
  • 違反すると、行為者に50万円以下の罰金が科されます。

高圧ガスの火気を制限できる立場を製造者と貯蔵所の所有者、販売業者と特定の消費者、液化石油ガスの販売事業者の3つに分けて示す図解

高圧ガス保安法第三十七条はなぜ「指定する場所」で規制するのか

フェンスで囲まれた高圧ガスの容器置き場と隅の指定喫煙所を示すイラスト
高圧ガスを扱う施設では、なぜ一律の喫煙所ではなく「指定する場所」という言い方をするのでしょうか。
条文を見ると、その理由が見えてきます。
高圧ガス保安法第三十七条第一項(火気等の制限) 何人も、第一種貯蔵所若しくは第二種貯蔵所(略)においては、第一種製造者、第二種製造者、貯蔵所の所有者若しくは占有者、販売業者若しくは特定高圧ガス消費者又は液化石油ガス販売事業者が指定する場所で火気を取り扱つてはならない
画一的な喫煙所ではなく、現場の実情に合わせて選べる仕組みです。
消防法第二十三条のように行政が一律に火気を制限する規定とは違い、高圧ガス保安法第三十七条は現場を知る事業者自身に指定を委ねています。
容器の配置やガスの種類は施設ごとに違うため、危険性の低い場所を現場が選んだほうが実効性が高いという発想です。
指定されていない場所はすべて火気厳禁になるため、「どこが指定されているか」を確認することが読者にとっての出発点になります。
次は、実際に誰がこの指定を行えるのかを見ていきましょう。

なるほど、施設ごとに決めていいんですね。
うちみたいな小さい貯蔵所でも指定できるんでしょうか。

はい、貯蔵所の所有者自身が指定できます。
次は指定できる立場を確認しましょう。

高圧ガスの指定は誰が行えるのか

製造工場と貯蔵所と小さな販売店の3つの施設を並べたイラスト
「指定する場所」を決められるのは、実は一つの立場だけではありません。
条文には複数の主体が列挙されています。
高圧ガス保安法第三十七条第一項(抜粋) 第一種製造者、第二種製造者、第一種貯蔵所若しくは第二種貯蔵所の所有者若しくは占有者販売業者若しくは特定高圧ガス消費者又は液化石油ガス法第六条の液化石油ガス販売事業者が指定する場所(略)
指定できる立場は、施設の種類に応じて6つに分かれています。
ガスを作る製造者、容器を保管する貯蔵所の所有者・占有者、ガスを売る販売業者、そして大量に消費する特定高圧ガス消費者まで、関わり方に応じて指定権者が変わります。
これは一つの行政機関がまとめて指定する制度ではなく、現場の管理者それぞれが自分の施設で指定する分散型の仕組みです。
自分の施設がどの立場に当たるかを把握していないと、指定そのものを忘れてしまう恐れがあります。
次は、身近なLPガス販売店も対象に含まれる理由を見てみましょう。

うちは小さいLPガス屋なんですが、大手のガス工場と同じ扱いになるんですか。

はい、販売業者として同じ条文の対象です。
次はLPガス販売所が対象になる理由を見てみましょう。

街のLPガス販売店の店先はなぜ対象に含まれるのか

LPガス販売店の店先で喫煙する来客を止める店員のイラスト
高圧ガス保安法は工場や大きな貯蔵所だけの話に思えますが、身近なLPガス販売店の店先も対象です。
条文の中に、その根拠が明記されています。
高圧ガス保安法第三十七条第一項(抜粋) (略)又は液化石油ガス法第三条第二項第二号の販売所においては、(略)液化石油ガス法第六条の液化石油ガス販売事業者が指定する場所で火気を取り扱つてはならない。
液化石油ガス法の登録を受けた販売所も、この条文の対象に含まれます。
液化石油ガス法第六条の液化石油ガス販売事業者とは、同法第三条第一項の登録を受けた事業者のことで、街のLPガス販売店もここに含まれます。
容器が積まれた店先で来客がライターを使う、といった身近な場面も、実はこの条文の対象になり得ます。
大きな工場だけでなく、生活に身近な販売店にも同じ制限がかかっている点は見落とされがちです。
次は、発火しやすい物の持ち込みがどこまで制限されるのかを見ていきましょう。

店先に容器が積んであるのを見たことがあります。
あれも規制の対象なんですね。

はい、火気の取り扱いはもちろん規制の対象です。
次は持ち込み自体の制限を見てみましょう。

発火しやすい物の持ち込みはどこまで制限されるのか

ゲートでかばんの中のライターを確認する担当者と来訪者のイラスト
火気を扱う行為だけでなく、発火しやすい物を持ち込むこと自体も制限の対象になります。
ただし、一律の禁止ではありません。
高圧ガス保安法第三十七条第二項 何人も、(略)承諾を得ないで、発火しやすい物を携帯して、前項に規定する場所に立ち入つてはならない
承諾があれば持ち込める、という仕組みになっています。
条文が禁じているのは「承諾を得ないで」持ち込む行為であり、指定権者の承諾があれば発火しやすい物を持って立ち入ること自体は許されます。
ゲートでの手荷物確認は、この承諾の有無を確かめる実務上の手段の一つです。
違反すると、高圧ガス保安法第八十二条第一号により行為者に50万円以下の罰金が科されます。
知らずに立ち寄った来訪者がライターを持ったまま歩いてしまう、というケースにも注意が必要です。

知らずにライターを持ったまま入ってしまったら、来客も罰金になるんですか。

条文上は「何人も」が対象です。
だからこそ、来訪者への周知が欠かせません。

明日からなにを確認すればよいのか

掲示板を指さす担当者と容器を確認するもう一人の担当者のイラスト
高圧ガス保安法第三十七条の仕組みが分かったところで、実務に落とし込みましょう。
確認すべきポイントを整理します。
高圧ガス保安法第八十二条第一号(抜粋) 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処する。一 (略)第三十七条(略)の規定に違反したとき。
まず、指定した場所が誰の目にも分かるように掲示されているかを確認してください。
指定は事業者が決められる分、周知が不十分だと「知らなかった」という違反者を生みかねません。
次に、ゲートや店頭での手荷物確認など、発火しやすい物の持ち込みを把握する体制になっているかを見直してください。
消防法第二十三条による市町村長の一時的な火気制限や、危険物施設の「火気厳禁」表示とは根拠となる法律が別である点も押さえておきましょう。
自分の施設がどの立場で指定権を持つのかを、今日のうちに確認してみてください。

指定場所の掲示、うちでも確認してみます。

周知の徹底が一番の対策になります。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q指定する場所は誰でも決められますか?
Aいいえ、決められるのは第一種製造者・第二種製造者・貯蔵所の所有者や占有者・販売業者・特定高圧ガス消費者・液化石油ガス販売事業者に限られます。それ以外の者が勝手に指定することはできません。
Q指定された場所以外で少しだけ喫煙してもよいですか?
Aいいえ、高圧ガス保安法第三十七条は「何人も」を対象とした規定で、指定された場所以外での火気の取り扱いを一切認めていません。
Q承諾を得れば発火しやすい物を持ち込めますか?
A条文上は指定権者の承諾があれば持ち込むこと自体は禁止されません。ただし承諾の有無や範囲は施設の管理体制によって異なります。
Q消防法の火気使用制限とはどう違いますか?
A消防法第二十三条は市町村長が期間を限って行う一時的な制限です。一方、高圧ガス保安法第三十七条は事業者が指定する場所を基準にした恒常的な制限で、根拠となる法律も仕組みも異なります。

まとめ

高圧ガス保安法第三十七条は、指定する場所以外での火気の取り扱いを何人にも禁じています
指定できる立場は6つあり、製造者・貯蔵所の所有者や占有者・販売業者・特定高圧ガス消費者が含まれます。
液化石油ガス法の販売所も対象に含まれるため、街のLPガス販売店の店先にも規定が及びます
発火しやすい物の持ち込みは、承諾があれば禁止されません。
違反すると、行為者に50万円以下の罰金が科されます。
消防法第二十三条の一時的な火気制限とは、根拠となる法律も仕組みも異なります
指定した場所の掲示と、来訪者への周知が実務上の要になります。

高圧ガス保安法の火気制限がよく分かりました。
うちの指定場所の掲示も見直してみます。

日頃の周知が一番の備えになります。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第37条・第82条第1号
  • 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42年法律第149号)第3条・第6条
  • 消防法第23条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の指定や運用の判断は、施設を管轄する経済産業局や都道府県にご確認ください

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